iPhone価格統制のかどで、今度はAppleに公正取引委員会が介入の噂
公正取引委員会が、アップル(Apple)製品の価格統制も含むスマートフォン販売の実情について関心をもっているという観測が流れ、業界一同興味津々の状態です。
山本一郎です。iPhoneユーザーです。
ところで、アマゾンジャパン(Amazon.co.jp)がやられたと話題になったばかりですが、日経報道によると、公正取引委員会の次なる攻撃目標はアップル(Apple)のようです。
標的はアップル公取委・経産省が異例のタッグ(日本経済新聞 16/8/10)
これもまあ、いつかはやる必要のある話でしたからねえ…。
公正取引委員会のアマゾン突撃に関しては、きのうこんな記事を出しましたけれども、公取委におかれましては何かのキャンペーン期間中なのでしょうか。もちろん、われらが日経新聞のことですので、たまにやらかす凄い飛距離の飛ばしの可能性も否定できませんが、日経に限らず関係筋からも似たような話が聞こえてくるので、Appleに関心を持っているのは事実なのでしょう。
アマゾン(amazon)が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会に突入される(ヤフーニュース個人山本一郎16/8/9)
スマホにまつわる商売のあれこれは各キャリアの施策において腑に落ちない部分も多々あるわけですが、その根本を突き詰めていくと、どうやら国内スマホ端末売上で不動の一位を長年維持しているiPhoneが怪しいということになり、当然ながらiPhoneの不当な価格統制をしているのはAppleであるという結論になるわけでして、遂に公取委も動きだしたという流れみたいですね。あるべくしてある話であります。
まさに黒船の脅威におびえてされるがままに不利な条約を締結してしまった政府が、遂に条約改定を目指して立ち上がったという感じでしょうか。面白いのは日経報道の以下の部分です。
犬猿の仲といわれる経済産業省とも手を組んだ。なんかプロジェクトX風の劇的な雰囲気でもって煽る気満々の書き方をしていますが、こうなると公取委と経産省によるさらなる活躍をwktkして待ちたいところです。
(中略)
日本の製造業をグーグルやアップルの下請けにしたくないという点で一致した。公取委は、所管官庁という立場を使って経産省が知りうる情報に期待を寄せる。日本経済新聞
そういえば、しばらく前にAppleが何やらこれまでにはなかったような形で日本市場に媚びているのが見え見えな広報活動をやっていたので訝しく思っていたのですが、裏にはこういう事情があったのかと今さらに納得です。
「日本で71万5000人の雇用を創出した」、アップルWebサイトでアピール(ケータイWatch 16/8/2)
普通に産業政策を見る側としては、アップルほどの会社が日本でたったの71万人ののべ雇用しか生み出していなかったことを考えると、大いに逆効果ではないかとも思うのですが、まあ主張したいことは分かります。
そんなこんなのAppleにとってiPhoneを売るための最大の市場である中国での業績がこのところ芳しくなく、次に期待のインドでも思惑通りにはいかない一方で、日本市場は相変わらずiPhoneにやさしいようです。
アップル、大中華圏の売上高が激減(CNET Japan 16/7/29)
アップル、インド市場で苦戦--「iPhone」販売台数が35%減(CNET Japan 16/8/9)
アップル減収減益も日本市場だけは快進撃、日本人のiPhone好き怪現象はナゼ(THE PAGE 16/8/5)
そりゃ市場から恣意的に締め出されていれば売り上げ減るのは仕方ないんですけどね。
このような状況ですから、Appleとしては何としても最後の牙城である日本市場において評判を落とすわけにはいかないということで、最後の手段としてああいうPRに出たのかもしれません。
なお、Appleが強調していた日本での「雇用創出」という点については、以下の2つの記事がなかなか面白いです。
iPhone支える日本企業アップルと日本経済の関係(朝日新聞 16/8/3)
国内電子部品、アップル離れ加速か第1四半期の業績不振脱スマホ、IoT強化急ぐ(SankeiBiz 16/8/5)
それにしても先に挙げた日経の記事で興味深いのは、公取委や経産省が気にしているのはなにもAppleに限らず、Googleなどの海外大手プラットフォーマー全体がその照準に入っているようなニュアンスがあるところです。非常に穿った見方としては、今後数年で大きな流れとなることが間違いないAI関連や自動運転技術、フィンテックなどについても同様な国内産業保護の含みがあるということなのでしょうか。
ただ、プラットフォーム事業者全体で見渡すならば、残念なことではありますが公正取引からは程遠い実態は日本のみならずEU、ASEANその他で横行しているのも事実です。ソーシャルゲームのようなコンテンツ流通の世界でも最終的にはプラットフォーム事業者の排他的な取引が引き金となってトラブルになるケースもあるため、おそらく次はこのあたりが標的になりつつ、若干保護政策的なプロセスを経ていくのではないだろうかと思ったりします。
おおっとここで国税庁が登場だ!とかなるとオールジャパン感が出て良いのではないかと感じます。返り討ちに遭わない程度にぜひご検討ください。