ケータイ電話料金の謎は相変わらずですねという話
携帯電話のビジネスは料金体系がなかなかユーザーにとって分かりにくくて、その割にシェア争いのための乗り換えばかりが優遇されて…みたいな話からどれだけ是正できるのかが焦点になってきました。
山本一郎です。先日、家内のスマートフォンをリニューアルするべくヨドバシカメラのauショップに家族で行ったんですけど、手続きだけで一時間近くかかりました。これはこれで難作業なんですが、担当の女性店員の方が子連れで難儀している山本家を見て育児話で盛り上がり、契約そっちのけで雑談してました。買い物ってそういうイベントフラグがあると待ち時間も楽しく過ごせるものなのだなと思います。
正直な話、いまだにケータイ電話料金のシステムはよく分かりません。もちろん、仕事であれこれ統計的な数字を見ろといわれれば総枠は分かるのですけど、いざ自分ごとになると「家族割入ってないんですか?」とか言われて、そういえばまだだったなとか思うわけですよ。向こうさんが「auひかりとまとめておきますね」と言われて初めて気づくみたいな。きちんと支払い状況を管理している方も多いとは思うんですけど、各キャリアごとにサービスやキャンペーンが乱立していたりして、一体何がどうなっているのか実態を把握するのも困難な感じです。
まあ、ほとんどのユーザーはサービス名なんて気にしておらず、単に少しでも安くサービスを利用できればそれで良いのでしょうが、問題はそうしたお得なキャンペーンがある日突然終了して巨額の正規料金が請求される事態が発生したりすることがある点でしょう。
つい先頃もソフトバンクが米国での通話やデータ通信などを無料でローミング利用可能とするオプションサービス「アメリカ放題」の申し込み不要・月額利用料無料キャンペーンを終了させたにもかかわらず、ユーザー向けにその旨を周知徹底していなかったことから、知らずにサービスを利用して高額請求されてしまったユーザーがそれなりの数いたようでして、当然SNSなどで炎上騒ぎに。結果的にはソフトバンク側が折れる形になりました。
ソフトバンク側にもいろんな事情があったとは思いますが、私の身の回りにも「アメリカ放題」が無いと渡米中でパケ死待ったなしの人々が少なからずいたので、それはそれは阿鼻叫喚になっていました。
ソフトバンク、高額請求の苦情受け『アメリカ放題』無料キャンペーンを再開。7月1日以降も遡って適用(Engadget日本版 16/7/15)
高額請求の話題では契約の細目を把握していなかったユーザー側の認識も俎上に載せられますが、いずれにせよ、苦情が多発したり騙し討ちと思われた時点で、通信会社として告知や対応の仕方に問題があったことは否定できません。Engadget日本版サービサー側とユーザー側で料金やサービスに対しての内容の理解や認識に大きな差があることは間違いないですが、結局はケータイ電話の料金システムそのものが分かりづらいということが大きく起因した事件だったように感じます。
で、そんなケータイ電話料金システムの罠の典型事例がまた別の形で報じられていました。
体操の内村航平、ポケモンGOで“通信費50万円”白井健三「表情死んでた」(SankeiBiz 16/8/1)
ふと携帯電話の通信料を確認した内村は、目を疑った。「50万円…」。何度も見直したが間違いなかった。やー、これはやってしまいましたなあ。
(中略)
データ通信の設定を誤り、定額制プランから外れていたという。「あの日の食事会場での航平さん、表情が死んでいました」と白井健三(日体大)。日本の妻に報告すると、あきれられた。SankeiBiz
まさにあるあるという感じでしょうか。内村さんの場合は携帯電話会社と交渉した結果、他の事例にならって1日約3000円の定額料金に収める救済措置を講じてもらえたそうでなによりですが、これはオリンピック選手という事情も含めての特例だったのかどうかが気になるところです。もし、無名の一般人ならそのまま容赦無用という対応で終わったのでしょうか。この報道を見たジャーナリストの西田宗千佳さんが問題点をTwitter上で指摘されていたのでご紹介しておきます。
遡及適応が基本なら、最初から「全員適応が基本」にすればいいのに>海外通信定額
サポート1件でかかるコストを考えれば、それが適切なのにしない。Munechika Nishida
いつになっても「何十万円の請求があるけど割引で数千円にしてるよ」という意味のない複雑な請求形態が変わらないのも、根は同じだと思う。そろそろそこを是正すべきでは。Munechika Nishidaまったく同感でして、いまだにケータイ電話料金は高級寿司屋の「時価」みたいなニュアンスがあってなんとも不思議な感じがします。
ARM巨額買収に打って出たソフトバンクグループが、アメリカ放題のサービス根拠のひとつであったスプリントをどうするつもりなのかにも関心が集まるわけですけれども、孫正義さんが決算発表会で「実質無借金経営」とか壮大な飛距離の発言をしていたことを考えるとそろそろこの界隈の「欺瞞と惨状」について整理しておくべきなのかもしれません。
なお、先日公正取引委員会が、10年越しの懸案であったスマートフォン販売の割賦による支払いを通信費に組み込んで実質的な価格統制をしているかどで強い態度で指針を出し始めました。これが進むと、一気に通信キャリアの料金プランもスマートフォン販売の内容も変わる一方、ようやく端末と通信の切り分けが可能になってきます。
高額スマホ販売、違法事例の指針公表へ…公取委(読売新聞 16/7/28)
願わくばもう少し早くやっていただきたかったという気持ちと、それならばdビデオやdマガジンなどの俗に言う「レ点商法」についても早々に問題点を抽出して健全化していただきたいと願うところでございます。