無縫地帯

都知事選「超無能」「ネトウヨ」「病人」「レッズ」外れガチャの戦い

14日告示の都知事選、与野党の候補者がようやく出揃いましたが、どうにもならないハズレくじばかりではないかと幻滅しています。本当に東京都は大丈夫なのでしょうか。

山本一郎です。一都民として、運命の都知事選2016がやってきました。何と申しますか、全部ハズレの可能性のある候補者が並んでいる状態で、どれがよりマシかを選ぶ民主主義のシステムエラーが発生している状態です。

各候補者一人ひとりの問題点をあげつらうよりは、なぜこのような外ればかりが立候補してしまうのか、都民として胸に手を当てて考える他ありません。ここまで微妙な候補者が並ばれるときついっすね。やはり、石原慎太郎さんが都知事をされていた時代は、良くも悪くも都知事というのは頑固親父がどっかり座って長期で都政を任せきるものだというイメージがあったのかもしれません。元副都知事の青山せんせが興味深い論考を出しておられますので、ご関心の向きはぜひお読みいただきたいと存じます。

「もう失敗できない」都知事の間違えない選び方明大教授・元都副知事青山

猪瀬直樹さん、舛添要一さんは、いずれも任期は短かった中で、具体的な都の都市設計や方向性を明確にしていく途上での辞任となったのは残念なことです。とはいえ、かかるメディアバッシング、あるいは都議会との対立の中でスキャンダラスに頻発する事案が繰り返し報じられれば都知事はもたない職なのだということもまた、良く分かったのではないかと思います。

今更ながら、舛添都政の2年間は都政関係者からどう評価されているのか、ご紹介


そうであるならば、都議会とセットで多少の泥水も飲み清濁併せ呑むタイプの調整型知事か、是々非々で都議会とも対立を辞さずクリーンな政治を目指す理念型知事かを選ぶことが念頭におかれるのではないかと思います。

過去の経緯はどうあれ、調整型の有力候補者は増田寛也さんです。間違いなくこの御仁は豊富な行政経験を謳う割に簡単に現状に迎合する典型的な無能政治家なのですが、逆に既存の政治勢力からすれば与(くみ)しやすく、現状批判勢力の盾になってくれることが役割として期待されているのが透けて見えます。もちろん、自民党や、つい最近まで自主投票といっていた公明とその支持団体である創価学会までもが増田支持に回ってしまいました。これはもう、一大既存政治勢力による大東京都モードです。

一方、自由民主党を割り、与党分裂と目された「ネトウヨ」の代表格・小池百合子女史は、一気に勝負に出て立候補までは大見得を切って喝采を浴びたものの、記者会見でいきなり「議会冒頭に解散」とぶち上げてしまい、本来であれば増田支持の旗幟を明確にしていなかった公明まで敵に回してしまいました。自民都連だけ馬鹿にしていればいいものを、なんてことをしてくれたのでしょう。公明や民進など諸派が、自民党都連のすったもんだで勝手に都議会解散だと言われても「とばっちり」以外の何者でもありません。おそらくは、せっかくのチャンスを棒に振る形で3位以下に転落していき、自民党からも離党する形で東京10区の議席も失う公算が高くなります。悲しいけど、目立ちにいきすぎて自滅という残念な結果に終わりそうです。

一連の小池女史出馬までの確執は、報じられているとおりです。小池女史と、自民都連の石原のぶてるさん、ひいては奥の院にいる森喜朗さんとの折り合いが悪すぎて、石原さんが都連で「小池だけは嫌だ」と連呼していたと言います。まあもうどうしようもないんですが、政治とは得てしてこういうものでしょう。

また、民進党は最後の最後まで単独公認で揉めた挙句、ジャーナリストの「病人」鳥越俊太郎さんを担ぐことが決定しました。しかも、野党統一候補にするというから驚きです。末期がん患者なんですけど。現状批判勢力が結集してうっかり鳥越さんが当選したところで、ほどなく命数が尽きてしまうのではないかと見ているこちらが心配になります。個人的には鳥越さんは政治面ではたいした人物ではないと思うんですが、ここまでボロボロの状態で這うように出馬出馬言ってる時点で「お爺ちゃん、頑張って」と言いたくなります。そんなん担ぐ民進党もどうにかしろと思いますし、野党四党が額あわせて鳥越さん推薦したという話を聞いて、正気を疑うレベルです。

民進党としては、国政レベルでの野党四党の協力関係を都知事選でも実施する意向が、主に民心都連の責任者であった松原仁さんにおいて強かったと見られます。ただし、都議会における民進党の勢力は小さく、単独で都知事の玉を握ったところで都政がスタックして動かなくなってしまう虞が強いという問題もあります。本来であれば、翼賛体制とまではいかずとも、自民、公明ときちんと握って民進の党としての東京の基盤を固めたいところであったはずが、単独候補に走った理由はこの松原仁さんが増田寛也さんや、相乗りできる可能性の高かった長島昭久さんと折り合いが悪かったからと言われます。松原仁さんも長島昭久さんも民進党の中では政治家としての能力が期待できる上位の人材である分、勝てない戦いに投入して議席を失う危険を犯すことはできないと判断されたのかもしれません。いずれにせよ、民進党が自民党と相乗りしない方針を松原さんが固めたことで、長島さんの擁立が見送られ、統一候補選びに走ったわけであります。民進党は最大のチャンスをこの時点で逃して以降、激しく迷走することになります。

この統一候補の選定は混迷を極めたのは報じられたとおりです。石田純一さんあり、古賀茂明さんあり、最後の最後まで混乱した挙句に「病人」だったわけであります。いったい何をしているのでしょう。「身体検査」という単語が、まさか生理学的な事情で語られることになるとは思ってもいませんでした。それであれば、早々に自民党との相乗りを目指して増田さんや長島さんを立てておけば、一番都民のためにも民進党のためにもなったのではないかと思うわけですが。

そして、最後は共産党からも立候補見送りを要請された「レッズ」宇都宮健児さんであります。過去二回出馬、どちらも泡沫とはいえないけど勝てるとも思えないという絶妙な票数で現状批判勢力の当選を拒むという、悲しい役回りを果たしておられます。宇都宮さんについて申し上げるならば、既存の党としての共産党よりもはるかに独善的、ワンマンで、かつ圧倒的に左であります。配慮がない分だけ、凄まじい勢いでのピュア左派ですので、政党が立候補降りろといっても抵抗することになりますが、そもそも鳥越さんが立った時点で宇都宮さんは現状批判票を糾合して自民公明の組織票を擁する増田さんに勝つことなど夢の世界になるわけです。通常であれば、勝てない戦いをするよりは、都政の一翼を担うポジションで妥協して能力を発揮して都民の生活の向上に役立てることを現実的に考えるはずですが、宇都宮さんは妥協しません。レッズですから。

そんなわけで、都民からすれば涙も枯れる今回の都知事選、増田小池鳥越宇都宮の有力4名での最終決戦になるのですが、このどれも外れ待ったなしのガチャで告示前の事前調査にて頭ひとつ抜けて出るのは「無能」増田寛也さんであります。もうこうなったら増田さんしか投票先が無い、と考える都民も多そうな気がしますが、はっきりいって小池女史が自爆して公明票70万票がごっそり増田さん支持に回ってしまったのがいけないんです。せめて創価学会が自主投票だったならば、まだ他の候補者にも勝ち目はあったかもしれませんが、いまのところ、当落ラインは前回より少し下がって165万票から190万票あたりと見られます。

最後に波乱があるとするならば、宇都宮さんが「そこまでいうのなら」と鳥越さん支持に回り、出馬を撤回することです。こうなると、俄然「病人」都知事も視野に入ってきます。当落ラインは少し上がって220万票ぐらいでの戦いとなり、それでもまだ20万票ぐらい足りないですが、さてどうなりますか。

やはり、都民として反省するべきは、有権者1,110万人を抱える東京に、これを治められる人材がいない、育たないということであります。立候補者を並べてみたとき、特定の党派の支持者でもない限り「ろくなやつが立候補していない」と感じてしまう状態からいかに脱却するかを考えながら、まずは目先の選挙をしっかり見つめることが肝心じゃないかと思う次第です。