無縫地帯

元総務省所管業界団体の研究会が自前のアイドルグループ結成を画策して炎上

個人的には楽しそうに見えた「ICT48」というアイドルグループに模した人材募集をICTビジネス研究会がやらかした件で、少し騒動が広がっていたので改めて取り上げました。企画再開を待っております。

山本一郎です。毎日快便です。

ところで、元総務省所管の業界団体でもある一般社団法人テレコムサービス協会が関わる研究会の一つにICTビジネス研究会というものがあります。

一般社団法人テレコムサービス協会
ICTビジネス研究会

ICTビジネス研究会は、行政や業界を超えて、ICT利用側とICT提供側、メディア等が様々なテーマやシーンで集まり、情報・通信を利用した新たなビジネスモデルを創る活動を中心としたコンソーシアムなんだそうです。

で、このICTビジネス研究会が新プロジェクト開始するということで人材を募集しておりました。

集え「ICT48」、ICTで活動する女性を募集(ASCII.jp 16/6/10)

ICTビジネス研究会(一般社団法人テレコムサービス協会)は6月9日、「ICT女子プロジェクト」を開始した。
(中略)
メインメンバーとなる「ICT48」も募集する。活動内容は、ICT48のメンバーで構成するチーム(3名×16チームを予定)で、研究会が主催する「ICTビジネスモデル発見&発表会」へ参加すること。
なんとか48などという名前を付けてしまうあたり、まるで芸能界のアイドルグループのようなセンスで、同プロジェクトを立ち上げた中の人のセンスがそこはかとなくうかがい知れるところでしたが、驚くことに実際の募集内容の方もアイドルオーディションと見紛うばかりのものだったようです。

「ICT女子プロジェクト」が発足女性の活躍支援かと思ったらまるでアイドルオーディションだったでござる(BuzzFeed 16/6/10)

一見してまじめな企画に見えるが、応募用紙を見ると……。

身長や体重の記入欄、アップ・全身の写真の添付欄がある。応募できるのは、 2016年7月1日時点で13~24歳の女性だ。BuzzFeed
こうなるとNSを中心に見事炎上するのは当然の流れ。その辺りの経緯はまとめサイトが分かりやすいかもしれません。

総務省「ICT女子プロジェクト」がひどい件→しれっと少し修正→削除で真っ白(NAVERまとめ)

さすがICTビジネス研究会と名乗るだけのことはあって中の人達による炎上対応(?)もそれなりに早く、問題のプロジェクトに関するページはあっと言う間に消滅してしまっています。しかし、ネット上での広報活動に長けていることが逆に禍したのか、Googleで検索すると問題プロジェクトの名前が堂々とヒットしたりはしています。まあ、これもしばらくした消えてしまうのでしょうが。

[[image:image01|left|用意周到にきっちり仕事しているあたりは限りない好感を覚える事例]]

さて、この手の騒ぎはネット民の大好物ということで色々と調べる人はたくさんいるわけですが、こんな話まで出てくる始末。

テレコムサービス協会が募集するICT48 よその応募用紙をパクリ、こっそり差し替えるもアーカイブされエビデンス残しまくりの件(I believe in technology 16/6/11)

さすが、ICTビジネスを研究する一般社団法人テレコムサービス協会 ICTビジネス研究会ですね。応募用紙をWordで作成するにあたり、ICTを駆使し、インターネット上の他者が作成した同じような目的のコンテンツを見つけ出したんでしょうね。もちろん、パクるからには、「ままごと mamagoto」さんに連絡を取り、ファイルを流用させていただく許可をいただくなど、後から問題にならないような対処も済ませているのでしょう。I believe in technology
なんとも味わい深い話であります。

そのほかで気になったのは、この記事を書いている時点では、ICTビジネス研究会のホームページで「組織構成]」と「[http://ict.telesa.or.jp/committee.html 委員会]」を説明するためのページがどちらも「ただ今このページは、準備中です」となっていること、そして、法人テレコムサービス協会のホームページでも「[http://www.telesa.or.jp/opinion/index-all テレサ協が関わる協議会・研究会・懇談会」を報告するページが「ただ今作成中です」となっているあたりでしょうか。どう考えても、これらは今回の炎上事件があった件について色々と証拠を消しているように見えてしまうのですが、それは穿ちすぎでしょうか。

ちなみに、ICTビジネス研究会の中の人達がアイドル好きなのは過去の実績でも明かに思えます。

粒揃いのアイデア連発!ICTビジネスモデルで競う全国大会(ASCII.jp 16/2/22)

応援サポーターとして、アイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」も登場。ASCII.jp
さて、ここまで色々とお騒がせした当事者は一体どういう心境なのだろうかと思っておりましたところが、いくつかのネットメディアで担当者に取材しておりました。

批判殺到「ICT女子プロジェクト」サイトが“白紙”状態に担当者「中止や撤回ではない」(ITmedia 16/6/13)

取材に対し、テレサ協の担当者は、批判や指摘については把握しているとした上で、「企画の意図をうまく伝えることに失敗し、アイドルグループの募集をしているような表現になってしまっていた。現在はいったんサイトを休止して、きちんと伝わるように中身を変更している」と説明。企画の中止や撤回などではなく、1週間ほどを目安に再開を目指しているという。ITmedia
なるほど、担当者としては心が折れているということはないようですね。13日の取材で「一週間ほどを目安に再開を目指す」と回答されていたということは、ちょうど本日が21日ですから、そろそろ企画再開の目処が立った感じでしょうか。

面白いのは、なんとか48という名称を起用するにあたっては「秋元康さんにも承諾を得た」そうで、元総務省所管の業界団体だっただけのことはありそちら方面への配慮はぬかりなかったようです。

「ICT女子」のための「ICT女子プロジェクト」へ-炎上の原因と目指すべき方向性を考える(WirelessWire News 16/6/14)

「ICT48」の年齢を13才から24才に区切った理由は、それまでの活動の中で学生のアイデアと、社会人のアイデアが違っていることに気づいたためで、「ICT48」は学生を中心とした募集とし、25才以上については別途募集の予定だったとしている(なお、25才以上については「IoT48で募集」と一部で報じられているが、これはあくまでも一案で決まったわけではないとのことだ)。WirelessWire News
メディアからのツッコミに対してもっともらしい回答が色々とあるわけですが、どうも後からとって付けた理論武装のような印象が拭えないと言ったら厳しすぎるでしょうか。いみじくもWirelessWire Newsの記事の中で指摘されていることですが、当初のICTビジネス研究会の募集内容からは、真面目にICTビジネスにおける女性の活躍を応援しようという姿勢はあまり感じることができませんでした。

「人を募集するための応募用紙」として参考にしたのが「タレント事務所の応募用紙」(活動内容を鑑みれば、普通の履歴書でも良かったはずだ)、学生と社会人の区分といいながら採用したのは「年齢による区分」という形を取ったことの過ちを、外部から指摘されるまで気づかなかったということそのものが、深刻な問題だということは指摘しておきたい。WirelessWire News
折角のアイドルグループ結成を密かに目論んでいたのに、ネット民の無粋なツッコミ炎上が予想を超えて凄かったため、今さらで苦しい建前論で言い訳しているのでなければいいのですが。

で、この騒ぎですが遂には元所轄である総務省にも飛び火してしまったようで、総務大臣自らがコメントを出した次第。

「ICT48」不適切募集要項 総務相「誠に残念」(NHKニュース 16/6/14)

高市大臣は「今後はリンク先の情報を含めた発信内容全体について、しっかり確認することを徹底したい」と述べ、再発防止を徹底する考えを示しました。NHKニュース
どうも事の本質とは異なる部分で総務省の責任について遺憾の意が表明されたようですが、まあなんといいますかこれはこれで味わい深いですね。

さあ、ここで起死回生の展開が始まってしまうのか。企画再開が間近という雰囲気はあんまりしませんが、固唾を呑んで見守りたいと思います。