Google検索のサジェスト機能はどうなる
日本でも、インターネットの本来持つ自由や利便性と、失敗することもある人間らしさとの間で問題が顕在化しつつあります。googleのサジェスト機能に対する東京地裁の判決を見ながら考えていきます。
山本一郎です。アストロズが弱すぎて可哀想です。
ところで、東京地裁が米Googleに対して検索表示の差し止めと賠償を命じる判決を下しました。やや特殊な経緯を辿った事例ということもあり、国内メディアの多くがこの判決を報じています。実に興味深いところです。
Google検索サジェスト機能で名誉毀損認める東京地裁初判断、差し止め命令(産経新聞/ITmedia 2013/4/16)
グーグル検索予測:差し止め命令名誉毀損を認定(毎日新聞 2014/4/15)
グーグルに表示の差し止め命じる(NHKニュース 2013/4/15)
グーグルに表示差し止め命令個人名の検索予測巡り(日本経済新聞 2013/4/15)
何が特殊だったかというと、昨年の3月の時点ですでにGoogle側に対して表示削除を求める仮処分申請が行われ、それを東京地裁が認めたにもかかわらず、Googleが日本の法律には従わないという回答をしていた点にあります。
この手の問題は、技術よりもインターネットという思想の体系に拠る部分が大きいと思うのです。インターネットが体現した自由と能力の問題であり、より民主的な世界を築くためには制限なく公開情報は共有されるべきだ、というメッセージも感じるわけです。
Googleが「日本の法律には従わない」と宣言注目の「サジェスト機能」裁判の行方は(EXドロイド 2013/3/28)
今回の東京地裁の決定に基づき、男性はGoogleに関連ワードを22日までに削除するよう求めたが、削除権限を持つ米Googleは「日本の法律で規制されることではない」「社内のプライバシーポリシーに照らして削除に該当する事案ではない」として決定に従わないと回答した。サービスはグローバルに提供するけれど、何か問題が起きた時には自国以外の法律に従うつもりはないからよろしくとGoogleが公言したわけですね。さすがにこういう発言がなされれれば、誰もが今後の成り行きに注目せざるをえないという状況での今回の判決でした。
もっとも、この判決に対するGoogleの回答は「判決内容を精査し今後の対応を検討する」というだけで、その行方はいまだ不明です。控訴するのか、それとも判決に応じるのか、大いに気になるところではありますが、もし仮に控訴せずにサジェスト表示を削除するというようなことになれば、今後、同様な対応を求める裁判が多発する可能性もあると思われます。しかし、そういう事態はGoogleとしては避けたいところでしょう。
考えられる一つの落とし所としては、日本国内向けへのサジェスト機能の停止というのはあるかもしれません。実際、今のサジェスト機能は、ネタ提供装置として使われてしまっているような部分が多分にあり、著名人の名前を入れるとまさに名誉毀損としか言えないようなサジェストが帰ってくる事例を目にすることも少なくありません。この機能を上手に悪用すれば、誰かを貶めることも可能という話まであります。
Googleサジェスト機能表示差し止め裁判で神が負けた!(情報商材裏サイト 2013/4/16)
サジェストにより災難って、意外に多かったりするのかもしれません。前回も、リテラシーの話ということで色々書いた最後にネット選挙に触れましたが、このサジェスト機能による情報操作の可能性という問題も、ネット選挙には大きな影響力となりえます。考え出すと問題ありすぎて切りがありませんが、しかし悩ましい話ではあります。
特に、あれって、学習機能があるので、●●×▽などを調べるとき、追加Wordで「詐欺」とか「犯罪者」と多くのIPから検索者が増えると、サジェスト機能に追加され、トレンド操作が出来たり、悪意ある攻撃が可能だったりします。
ネットは、怖いですね。
このあたり、いわゆる「忘れられる権利」の問題というのはネットが万能であるが故にジレンマを抱えているとは思います。ぶっちゃけ、ネットで検索すれば過去の経緯がすべてあますところなく出てくるから便利である、という本質と逆の展開ですからね。
ネット上で「忘れられる権利」とは(web R25)
まずは、この手の訴訟が起きて、一枚一枚判決、判例を重ねながら、どのあたりが日本の社会にとって一番好ましいのか、時間をかけて議論をしていく以外、ないと思いますね。