iPhone不振でAppleが話題ですがスマホ市場全体が今後はかなり大変そうにしか見えません
スマートフォンも世界的にいきわたってさすがに成長鈍化のフェーズに入り、さしものAppleも全盛期よりは利益率が下がってきました。このあと通信業界はどうするつもりなのでしょうか。
山本一郎です。この数日、発毛力が不振です。
ところで、Appleが第2四半期決算で大きな減収となったことを発表しておりました。長らく破竹の進撃を続けてきたAppleの勢いが遂に止まったということで、様々なメディアがそれなりに大きな扱いで取り上げていたのが印象的です。
アップル、1─3月は13年ぶりの減収iPhone販売減は初(ロイター 16/4/27)
アップル、1~3月13年ぶり減収iPhone減速響く(日本経済新聞 16/4/27)
アップル iPhone落ち込み 13年ぶり減収(NHKニュース 16/4/27)
Apple、13年ぶりの減収減益iPhoneの販売が初の減少(ITmedia 16/4/27)
今回の業績不振については当初から予想されていた部分もずいぶんあったわけですが、iPhoneの販売台数がこれまでを下回るのはこれが初めてという事実に加え、前年同期比36%減という具体的な数字が出てきたのはやはりインパクトがありました。
しかし、同社全体での粗利益率を見れば依然として39.4%に至り、純利益は105億1600万ドルということでして、まさに化け物みたいな数字を叩きだしているあたりはすごいなと素直に感心してしまいます。下がってこれ、というのは、夢があるというか、おいちょっとというか。
それにしても、こうしたおそるべきAppleの収益性を実現してきた牽引役のiPhoneを取り巻く市場の今後は決して明るくない雰囲気でして、すでに次の第3四半期の見通しでは売上も粗利益率も今期をさらに下回る予想が出ています。
4~6月期の見通しについては、売上高を410億~430億ドル、粗利益率を37.5~38%程度と予測した。ITmediaなるほど、そうですか。当然ながらAppleはこれからどうするのだろうみたいな論考がメディアでは賑わっております。
アップル、端末頼みの成長限界ソフトへ軸足転換(日本経済新聞 16/4/28)
アングル:13年ぶり減収のアップル、サービス事業は新天地となるか(ロイター 16/4/27)
コラム:アップル、iPhone販売不振でも狙える次の山(ロイター 16/4/27)
「アップルは時代遅れ」 ― 中国LeTV創業者がまたも大胆発言(WirelessWire News 16/4/26)
Apple Watch 2は単独でLTE通信サポートのうわさ。高速「S2」チップ、GPSも搭載しほぼiPhone不要に(Engadget日本版 16/4/26)
概ねこうした中で語られるのは、最近のiPhoneを筆頭としたApple製品は新鮮味がなく面白くないという指摘であり、残された活路としてはサービス方面での新展開や夢のテクノロジー満載の新製品を期待ということになるわけですが、そうした提案の数々に何か画期的なものがあるわけでもなく、言葉悪く言ってしまえば月並みな話でしかありません。すでにこんなことはAppleの中の人は当然考え尽くしていることでしょう。良くも悪くもiPhoneの成功で巨大になりすぎてしまったAppleが、これからどうやってこの苦境を乗り切っていくのかは彼ら自身が決めれば良いことだと思いますが、気になるのはAppleの好調にあやかってきた多くのサプライヤーが被る余波です。
アップル製品の生産に関わる日本企業も無傷ではいられないだろう。例えばiPhoneではジャパンディスプレイやシャープは液晶パネルを生産。カメラ用画像センサーはソニー、半導体メモリーは東芝が供給する。世界のメガヒット製品であるからこそ、販売減速による部品メーカーへの影響は大きい。日本経済新聞iPhoneの製造を一手に担っているのは「あの」鴻海ですから、Appleの不振がそのまま鴻海の業績へも影響し、さらにはシャープの買収事案にまた色々と影響してくるだろうこともありえる話でしょう。いわゆるiPhone景気もそろそろ終わりということで、他にもSamsungをはじめ世界中のiPhone関連サプライヤーは憂鬱な時代を迎えるのかもしれません。
で、よく考えてみれば、iPhone以外も含めてスマホ全体の市場がそろそろ頭打ちな状況なんですよね。
世界スマートフォン出荷、前年同期比伸び率が過去最低に--2016年第1四半期(CNET Japan 16/4/28)
変化するスマートフォン市場で、成長の停滞は驚くべきことではないが、前年同期比の成長率はこれまでで最低の記録である。CNET Japanスマホ市場、成長の終焉──「市場拡大は横ばいに」という公式統計
IDCレポートによると、中国における昨年のスマホの出荷台数は前年比2.5パーセント増であったが、2013年に記録した62.5パーセントという数字からするとかなりの落ち込みだ。今後頼りとなりそうなのは新興国市場というのがもっぱらの見方ですが、こちらは先進国市場とは打って変わって限り無く薄利多売で厳しい競争に挑むしかありません。先進国におけるスマホ黎明期のような美味しい商売というわけにはいかないでしょう。
また、GoogleはAndroidについて独禁法絡みでさらに追い込まれる可能性もあったりするようです。
欧州委員会、グーグルを独占禁止法違反で提訴 ― Androidアプリのバンドル提供で(WirelessWire News 16/4/21)
米、グーグルのスマホOS巡り調査拡大か米紙報道(日本経済新聞 16/4/27)
微妙です。実に微妙です。
こうなってくると、スマホを作って売るという商売は労が多い割には利益を見込めないものにどんどんなっていくばかりで、そう考えれば、国内メーカーの多くが比較的早くに自社開発を断念し撤退してしまったのは悪くない選択だったのかもしれません。Appleはこれまで先行者利益で随分儲けましたし、相変わらずハイエンドモデル市場ではそこそこ人気があるのは本当にすごいことだと思います。
作って売っても儲からないものとなりつつあるスマホですが、スマホの需要は今後さらに高まることは想像に難くないわけでして、じゃあ誰がそれを作って売るのかというのは悩ましいところです。とくにスマホが個人情報の塊でありセキュリティを求められる性格であるのも面倒な話でして、今後は情報ダダ漏れだけどタダ同然か、高度なセキュリティを実現しているけれど高額な製品の二極化がさらに進みそうな気がします。
セキュリティ重視の高級スマートフォン「SOLARIN」--価格1万ドル超で5月に発売へ(CNET Japan 16/4/26)
それもあって、新味のない投資熱が、IoTを経由して現在VRや人工知能、ロボット方面に雪崩れ込んで、にわかにバブルの様相を呈してきました。もちろん、有望なテクノロジーではあるのですが、これはこれで「いつか来た道」な感じもするわけです。最後にババを掴むのは誰なのか、固唾を呑んで見守りたいと思います。