「タイ全裸事件」水谷佑毅さんの株式会社DYMが、中国で違法な無資格医療ツーリズム実施中(修正追記あり
先月、タイへの社員旅行で集団全裸になり国際的な事件を引き起こした水谷佑毅さんの株式会社DYMが、中国上海支社で無資格無認可の医療ツーリズム事業を行っている疑いが強まりました。
山本一郎です。消防署のほうからきました。
ところで、先日炎上したタイでの全裸事件で一躍スターダムへと名乗り出た「医師」水谷佑毅さん率いる株式会社DYMですが、まだカロリーが残っていたらしく黒煙が上がっていたので見物にいきました。
「タイで社員と全裸」株式会社DYMの水谷佑毅さんがお詫びの件(ヤフーニュース個人山本一郎 16/3/11)
タイ全裸の株式会社DYMが評判の隠蔽に使った7つの手法(web>SEO 16/4/21)
魚拓
タイで全裸騒動を起こしたDYMが自社に都合の悪い記事を消しまくっている件(NAVERまとめ 16/4/23)
魚拓
ちょうどこのDYMに薄く出資をしている上場企業のインタースペースさんとは仕事を打診しようと思っていた矢先のタイミングで燃え始めたため、インタースペースさんも私も非常に困惑しております。
そんなDYMが起業セミナーをやるという告知をしていたのですが、先日ステルスマーケティングの問題で誰かが騒いでいたベクトルグループ総帥の西江肇司さんや、梁山泊事件の仕手戦の具として大いに名前を挙げたビーマップさんなど、素敵な面々がIPOを語っておられるではないですか!一定の方面におけるオールスターじゃないですか。これはすごい。(いろんな意味で)私も行きたかった!
第 18 回 VENTURE ALLIANCE FES 開催のお知らせ
魚拓
ベクトル社が名指しステマ記事にホームラン級にアレな反論をして広告業界大困惑の巻(ヤフーニュース個人やまもといちろう 15/11/3)
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[[image:image04|right|水谷佑毅!西江肇司!僕たち私たちのアイドルがそろい踏み。これはキラーコンテンツですわ]]
そんな面白事案の絶えないDYMですが、先般からDYMの手がける健康事業についての違和感はほうぼうで語られておりました。
結論から先に言いますと、DYMが手がけている中国上海での医療ツーリズム事業は無認可になっており、違法の疑いが強いサービスになっております。
以下本題です。
[[image:image01|center|「治療手配」「日本の医療機関のセカンドオピニオン」など踏み込んだ表現が並ぶDYM上海支社]]
中国では日本と違い、登記してある事業内容以外のことをしてはいけません。すべてが認可制です。なので、事細かに登記簿に事業内容について記載していくわけなんですが、以下がDYMの海外子会社「上海迪_美健康管理咨_有限公司」の登記内容です。ここから検索すると出てまいりますが、そもそもこの会社、旅行業務が業務内容に入っておらず、登記されていません。提携先の旅行会社があるとのことですが、中国の旅行業者は登録番号を表記することが義務付けられており(まあどこの国でも当たり前ですが)、これへの記載がないというのは不思議なことです。告知もされない旅行業者にどこか海外に医療ツアーで連れて行かれてしまうのでありましょうか。
中国法人登記検索窓口 : 上海市工商局企_注册登_信息公_(企業公開登記情報)
で、登記内容を見てみますと、ここにはっきり次のように書いてあります。
:[[image:image02|center|DYMの上海法人の登記はこちら。水谷佑毅さんマジでグローバルビジネスパーソンっス]]
健康管理咨_(医__断、治_、心理咨_除外)
和訳:健康管理業務に限る(医療診断、治療、心理療法は除外)
つまり、このDYM上海子会社は、業務内容において下りている認可は「医療診断や治療は除外」であり、医療ビジネスは許されていません。「マッサージなどのヘルスケア事業(健康管理業務)はいいけど、診療や診断などの医療行為は駄目ですよ」という意味です。ところが、DYMアジアのサイトでは、日本地図のところに治療目的の訪日のための旅行のアレンジメントの案内が思い切り記載されています。さらには、彼らのプレスリリースや中国人向けの広告には、日本での「治療手配」とか「医療機関のセカンドオピニオン」などと書いてあるんですよね。これって中国で認可のとれていない「医療診断」そのものですよね。ましてや、旅行業務にいたっては登記内容に入ってすらいません。わざわざ登記にも「それやったらあかんよ」とまで記されておるわけで、全米が泣いた。
ゆえに正面から「医療診断」と書いてしまうといきなり違法になるため、問い合わせを避ける目的なのか、サイトの一部は表現を変え、マッサージやストレッチなどの「健康目的での訪日」に書き換えておられます。それだと「早期発見と早期治療」「ガンは早期発見するべき」「中国ではこれだけがん患者が増えています」という広告の内容は何なんだという話になりますので、この内容だけ見ると、完全に違法なモグリ業者になってしまいます。
DYMメディカル中国語サイト
魚拓
[[image:image05|center|健康チェックを要求。どうみても医療サービスです、本当にありがとうございました。]]
DYM 日本で人間ドック
魚拓
また、サイトでは力強く日本での提携医療機関と銘打って、各施設の紹介まで念入りに行われております。大丈夫なのでしょうか。
上海衛生局に連絡を入れ、このようなサービスを実施するのに医療診断の認可は必要なのかという質問をしたところ「海外に検査で中国人を送り出すのに、事前の問診しないわけにいかないでしょう。当然のことながら、医療行為ですので認可は必要です」との返答が得られました。まあ、そりゃそうですよね。
[[image:image07|left|あるはずの会社がなく、別のアパレル会社がのんびり営業してました。]]
一番最初にDYMが上海で法人を組成する際の登記地を見に行ってもらったのですが、現在の法人と同じビルの違う号にありました。その事務所を借り上げる際に記載されている住所が本件医療サービスの実施場所として指定されていたので、これも見物にいってもらうと、いまはすでに引き払って別の事業者がこの場所を使っていました。掘り起こしてみると、以前インタースペースが上海に進出した際に登記した場所が、書類上そのまま流用されていたようです。DYMが何らかの事情でこのオフィスを事業登録か何かで使ったのかもしれませんが、経緯は謎です。過去に関わりのあった住所とはいえ、そのまま書類に残していて大丈夫なのかと思いましたが、DYMには深慮遠謀があるに違いないということで、そっとしておきましょう。
念のためにこの入っている会社に問い合わせをかけてみたもらったんですが、「我_在日本INTERSPACE公司的新_稿上看到他_的子公司_速特(上海)广告公司与_公司合作的消息。(お前らインタースペースの上海事務所じゃねえの?どっかいったの?)」「此公司已_很久之前不在是我_的合作商,_知_。(ワイら、もう無関係やで。すまんな)」との返答でした。そうでしたか。
で、中国での患者集め自体が現地法で違法の疑いが強いので、受け入れ側となっている日本のクリニックは大丈夫なのかという話になります。サイトに日本側の提携医療機関とされているクリニックが3つ掲載されておりましたので、各々連絡を入れて事情を聞いてみると、DYMのサイトでの説明とまったく違う話が聴こえてきました。サイトに書かれていたあるクリニックの経営者は、電話で次のように説明しています。
私「DYMの中国サイトで、集めたがん検診希望者を貴クリニックを検査、診療の提携先として送り出していると明言してあるのですが…日本語サイトにも、『'''提携医療機関のご案内'''』として、貴クリニックのお名前が明記してあります」
クリニック「いえ、契約している先はありますが、業務提携というものは特になく、DYMと業務提携をしているとか、独占契約があるというわけではありません」
私「つまり、DYMがサイトで貴クリニックと連携しているかのように見せている内容は間違いであるということですか」
クリニック「通訳をお連れになった中国の方が当クリニックにお見えになることは確かにあります。ただ、私どもは検査をするだけで、診療を行うわけではありません。然るべき人物や法人からご紹介があり、検査をご希望であれば、検査のご案内をさせていただく形になります」
私「そうでしたか。実際に、サイトで貴クリニックの名前が出ておりますが、これを承認した経緯はあるのでしょうか」
クリニック「私どもは何も存じ上げません。もしも、何かの事情で名前を勝手に使われているのであれば、それはさすがに問題ではないかと思いますが…」
私「契約や提携をされたわけではないのに、中国人向けのサービス案内で人間ドックのサービスを日本で受けられる窓口として勝手に紹介されてしまったという感じですかね」
クリニック「はい。DYMという会社との契約は記憶にありませんし、クリニックの名前を使って良いとも申しておりません」
また、別の医療機関でも同じ話が聞けています。
私「貴医院がDYMの提携医療機関という表記で外国人向けの医療ツーリズムの受け入れ先に明記されているのですが」
事務長「メールでいただいた内容を担当者に確認しましたが、そのような受け入れの業務提携は行っておりません」
私「サイトに記載された内容は事実と異なるということでしょうか」
事務長「違うと思います。通常の人間ドックをお受けになられるご希望は承っておりますが、何らか提携を行って受け入れるという形ではありません」
私「がん検診を含む人間ドックを受ける際には、特に提携は必要ないということですか」
事務長「そうですね。なぜそのような話になっているのか、私どもも分かりません」
どうも、経緯を見るに中国側でも無許可で医療ツーリズムをアレンジし、日本側も特にこれといった提携がクリニックや医療機関とされたわけでもないのに『提携医療機関』として膨らませて書いてあるというのが実情のようです。確かに、診療目的かがん検診などの人間ドックかは別として、普通に患者と日本の医療機関をアレンジして送り出すだけであれば、わざわざ提携と銘打つ必要もなさそうな気がします。なぜDYMが風呂敷をそこまで広げてしまったのか、理由はよく分かりませんが、きっとたいした理由ではないと思うので、まあ気にしないでおきましょう。
日本側の診療機関でさえこの体たらくでして、そもそも何でこんなことになっているのか登記情報を改めて見てみると、何のことはない、中国の司法書士事務所が掲載している『ヘルスケア事業を登記するための書き方サンプル』のFAQをそのままコピペしてDYMヘルスケア事業として中国で法人登記していることが分かります。おいちょっと。いったい何してんすか。
健康管理咨_公司__范_包括_些(ヘルスケア事業を会社登記するにはどう書いたらええんや?)
[[image:image06|center|一字一句変わらない、写経を思わせる豪勢なコピペで敢然と登記するDYM。漢らしい]]
一事が万事この調子なので、他にもDYMについては素敵な話がいっぱい出てくるわけですが、せっかく全裸になったことですし、これを機に、ちょっとは反省し心を入れ替えて少しでも真面目な仕事に取り組んでくれるといいなと思うわけであります。
この記事の掲載に先だって、DYM側にも事情を伺うべくメールや電話でコンタクトを取ってみたのですが、4月26日15時01分と16時20分、受付していただいた女性からは丁寧に「担当者よりすぐに折り返し連絡する」と伝えられたまま、いまなおご連絡をいただいていないという状態ではあります。きっと忙しいんだよね、DYMは急成長企業だから仕方ないね。
こういうDYMのような素敵な会社は是非前を向いて頑張っていって欲しい、いつまでも面白い事案をネットに提供し続けてもらいたいと心から願う気持ちで一杯でして、続報を打つゲージを溜めるためにもDYMからの魂の籠もったお手紙が必要です。パンチの効いたお返事がいただけるといいなあと思っておりますので、正座して待ちたいと思います。
引き続き、よろしくお願い申し上げます。
(追記 28日15:10)
ご指摘が複数あり、中国ではペーパー登記が認められているため、現在の法人と同じビルの違う号に外資法人が登記されることはあり得るようです。現在DYMは上海リージャス(素敵な素敵なレンタルオフィス)に入居されていますが、現状でこちらは法人登記を忌避されるため、存在しない場所に登記を置き続けているのではと推測しております。
なお、現段階でなお、DYMからメールや電話での返答はありません。
また、画像キャプション中、現地に入っている会社は旅行代理店ではなくアパレル会社でした。謹んで訂正申し上げます。