無縫地帯

台湾人45名を含む60名以上が、ケニアで中国本土へ拉致

中国と関係の深いとされるケニアで、インターネット犯罪に加担したかどで起訴され無罪となった台湾籍45名を含む60名以上が中国本土へ「強制連行」され、事実上の拉致をされていることがわかりました。

山本一郎です。いろいろ起きそうなので中国には立ち入らないようにしている者です。

例年、私の住んでいる千代田区では楽しみにしているジャズフェスティバルがこの時期あるのですが、そこのスポンサーが今年はなんと中国南方航空でビックリするわけなんですよね。もちろん、世界各国どこの人でも音楽を愛するのは自由ですが、正直大丈夫なんだろうかと思う事件が最近多くなってきました。

その中国と中国南方航空の件で、先日インターネット詐欺関連の問題があったかどでケニア当局に起訴されたものの無罪判決の下った台湾人を含む60名以上を中国本土へ強制移送したということで、大変な問題になっております。

平たい話が、中国から多大な支援を受けているケニア政府が、法的なバックグラウンドを無視してこれらの台湾人の拘束と中国本土への強制連行を求める中国政府からの圧力に屈した、という話です。こんなものが横行するとチベットや新疆ウイグル、台湾だけでなく、近い将来日本人だってろくでもないことに巻き込まれたりすることになるでしょう。

台湾籍の45人、ケニアから中国に「強制連行」(CNN 16/4/13)

また、一部報道によるとケニア国内で犯罪を犯したとされる中国人少なくとも16名も、この台湾人の拉致と同じ形で中国本土へ強制連行されたとされています。外交筋では、ケニア政府の抗弁として「台湾とケニア間には国交がなく、ケニア入国申請国である中国に合法に移送したもので、ケニア政府はひとつの中国政策を支持している」と話しています。

しかしながら、仮にひとつの中国をケニアが支持しているとしても、台湾籍でケニア司法からこれらの詐欺事件で無罪を言い渡された少なくとも23名も拉致されており、身柄を押さえる法的根拠すらも無いという結構な話になっています。

この強制連行で出てくるのが、冒頭で述べた中国南方航空です。アライアンスはスカイチームであり、ケニア航空とコードシェア便を出しており、ケニアの首都ナイロビまで飛んでいるので強制送還のための飛行機を用意したのが中国南方航空であることは見逃せません。実際、私も13年から14年にかけて何度かポートジプチやソマリアを通りかかったとき、エージェントが手配したのがこの中国南方航空でして、その際に私でさえいろんなことがありましたので、ましてやケニアの話が出たとなるといろんな類推がされるものだろうと思うわけです。

その後、同じくCNNではこれらの台湾人拘束と強制連行の根拠が「不法滞在」であることがケニア当局から発表されたようです。

ケニアから中国に強制移送の台湾籍2人、国営メディアで「謝罪」(CNN 16/4/16)

なお、本件では中国南方航空はこれといったアナウンスを出していません。スカイチームでも、個別の事案について回答できる立場にはないという返答でしたので、事態の推移を見守るほかありません。ただ、やはり気になるのは、これらの海外事情で世界的な常識として理解されてきたことが中国の国内状況で中国当局が後先考えずにいろんなことをやってくることに対する是非です。

というのも、凶悪事件云々が国内であったとき、手続きとして、海外に逃亡した犯人の身柄拘束のために手順を踏んで現地で逮捕、強制送還ということはあり得ます。しかしながら、それは相手も法治国家であり、関係国ほかの理解と協調を得られて初めて手配できるものであって、現地の裁判で一度は無罪判決が出てパスポートを本人に返還するタイミングで拘束というのは無理筋もいいところです。

そういうことが平気でできてしまう国が中国なのだというのは仕方ないにしても、さすがに常軌を逸しているんじゃないかと思うのですが。間違っても、日本国内で同様の事態が起きないように願いますし、万が一、海外で日本人が巻き込まれたときにどうするのかは想定しておいて良いのではないでしょうか。