お役所がIT絡みで新年の抱負を発表したらネット民から総スカンを食らったでござる
新年早々、新しい時代に相応しいサービスを提供しようとお役所もいろいろお考えのようですが、さすがにセンスが役人すぎるのか、あるいはやれという大臣がアレなのか、微妙な展開になっているようです。
山本一郎です。頂戴した年賀状を山ほど折り返したら手首が腱鞘炎になりそうです。
ところで、タイミングから考えればおそらくは年末に取材された話なんでしょうが、今年の経産省はスマホの決済アプリで頑張りますみたいなニュアンスの話が新年2日に報道されておりました。
買い物決済、スマホアプリで=訪日客向けに開発-経産省(時事ドットコム 16/1/2)
両替所が少なく、クレジットカード対応も十分でない日本の買い物環境は訪日客の間では不評だ。そこで経済産業省は、訪日客の消費のさらなる拡大に向け、スマートフォン向け決済アプリの開発に乗り出す。時事ドットコム普通に考えれば、じゃあ足りてない両替所を増やし、すでに世界的にも普及しているクレカの対応強化をすればそれでいいようにも感じますが、そこでわざわざスマホ向けアプリを含めた決済システムを新たに構築しようと提案するあたり経産省としての強い意気込みを感じるわけです。もちろん単なる決済システムというよりもキモとなるのは以下の部分なのでしょう。
アプリ利用者は事前に、国籍や性別、滞在先といった属性情報、クレジットカード番号などの決済情報、パスポート番号を登録する。登録情報に基づき、決済に加えて▽宿泊先に商品を配送▽宗教に配慮した食事の店を紹介-といったサービスも提供する仕組みだ。要はビッグデータな展開ですね。そしてIoTな目論みでもあるのでしょう。しかし気になるのは、短期間の観光で訪れる外国の皆さんが単に決済処理を行うだけのために、わざわざ個人情報とも言えるような詳細な属性情報を提供してアプリを使いたいと思うのかどうか。また、そうした新規決済システムを構築してもそれに対応した設備を宿泊施設や店舗側が導入してくれなければ、クレカ対応が十分できてないという現状の二の舞にしかなりません。で、当然そうしたツッコミはネット民から大量に沸き上がっておりまして、パッと見たところまずネガティブな意見しかありません。まあ、そうですよね。なぜ経産省が突然こんな話を始めたのかちょっと理解に苦しむところもあるのですが、モバイル決済競争に出遅れたどこぞの大手ITゼネコンあたりが裏で暗躍でもしているのでしょうか。
また、利用者の属性や消費行動の情報は、アプリでサービスを提供するクレジットカード会社やホテル、百貨店などで共有。マーケティングに役立てることにしている。時事ドットコム
で、経産省も新年早々から愉快案件を出してくるなと思っていたところが、今度は総務省が年頭の所信表明でやはりネットのご意見番な皆さんのハートに深く刺さりそうな面白案件を打ち出してきました。
マイナンバーカードでポイントカード一本化、総務省が2017年春以降の実現に向け検討開始(Engadget日本版 16/1/6)
高市総務大臣は、総務省の仕事始め式で「各種ポイントカードをマイナンバーカードに一本化したい」との意向を示しました。ポイントカードと言えば、今をときめくCCCのTポイントを筆頭にして有象無象が広く日本社会に氾濫しているわけですが、Tポイントと提携しているヤフージャパンを批判する意図はありませんが、そうしたカードが何枚も積み重なって財布の中で場所をとるのは不便な上、いちいちサービス毎に使い分けるのも面倒ですから、これが一つのICカードに全部まとまるのならそれはそれで便利かもしれません。しかし、ポイントカードを提供する事業者側の目論みは、そうしたユーザーの囲い込みと消費行動の追跡であります。とくにポイントカードを利用して行儀の悪いターゲティングなどやっている一部の事業者からすれば、それが政府の発行するマイナンバーカードに集約されるというのは国から常時監視されているようで歓迎されない可能性はあるでしょう。また、マイナンバーカードを持ち歩くという行為自体がプライバシーフリークな人々からはネガティブなものとしてとらえられているわけですが、そこに彼らが忌み嫌うポイントカードの類を組み合わせるというのは、勘違いな意見も含めてすごい反発を呼ぶのは必至であります。
(中略)
総務省ではマイナンバーカードについて、カードの券面、ICチップの空き領域、ICチップ内にある電子証明書の3つを主な利用箇所と位置付けており、高市氏の発言は、各種ポイントカードのID情報などをICチップの空き領域に格納しようという計画を受けてのものとみられます。本件について、総務省は2017年春以降の実現を目指して検討を開始しました。Engadget日本版
【発想ヤバい】総務省ポイントカード一本化案にネットで騒然!「何を考えているんだ」(秒刊SUNDAY 16/1/5)
こちらの記事でも「今各社がしのぎを削ってポイントカードの質を高めようとしているが、競争力がなくなり国のポイントカードのみになる」と書かれており、すでに勘違いが新たな妄想を招いて大いに盛り上がっています。別物でござる。
まあ、しかし、CCCのような企業によるユーザー囲い込み施策であるはずのポイントカードのために、政府がわざわざマイナンバーカードのICカード領域を提供するというのはどうにも気分的にしっくりこない話ではあります。
なんといいますか、経産省にしても総務省にしても新年早々から力を注ぐべき方向が微妙にずれているのではと思わせる話題が飛び出してきて、いやはやことしもいろいろとおもしろいことになりそうだなときたいにむねがふくらむばかりです。
猫でも撫でて暖かくして寝ます。お休みなさいませ。