無縫地帯

パナソニックは電気自動車の夢を見るか?

最近、パナソニックの動きが微妙でありまして、報道を見ていると自動車関連事業強化の方向へ軸足が大きく振れているように思います。さらに、自動車産業そのものへの進出も伺わせる内容も出てきて、さらに微妙な…。

山本一郎です。何か身体が重いです…。

社長への独自インタビューを元にしてという体裁で、朝日新聞がパナソニックの動向について興味深い報道を行っています。

パナ、車載機器事業に本格参入計器メーカー買収検討(2013/4/11)
パナソニック、法人向けに軸足社長「黒衣でもいい」(2013/4/12)

なぜ、同じような内容の話をわざわざ2日間にわけて掲載しているのか、その真意は外部の人間にはよくわかりませんが、こういう切り口の広報活動の相手として経済紙ではなく朝日新聞を選んだあたり、パナソニックとしても色々と深い思惑があるのかもしれません。

パナソニックが自動車関連事業で色々と動いていることは、この数日前にも自動車関連事業強化という名目で海外において音楽配信会社を買収したことが報道されるなど明かです。

パナソニックが独の音楽配信会社を買収自動車関連の強化で(産経新聞 2013/4/9)

音楽配信事業を自前で用意しようという考え方がはたしてビジネスとして正しいベクトルなのかどうかはともかく、自動車関連で事業したいのだなという意志は伝わってきます。

年頭にラスベガスで開かれた国際家電見本市のCESでは、津賀一宏社長が「将来、パナソニックは自動車メーカーになるかもしれません」という花火を打ち上げていましたが、あれは単なる受けを狙ったネタではなかったのかもしれません。

将来は自動車メーカー!?パナソニック、「脱テレビ」へアクセル(産経新聞 2013/1/27)

で、肝心の自動車産業全体の動向ですが、今話題のTPPが上手く着地すれば、国内自動車産業としてはかなり美味しいという見積もりが出ているようです。もっとも、米国の自動車産業側からすれば日本のTPP交渉参加は反対の立場ですから、実際にどうなるかは今の時点では交渉がどう着地するのかさっぱりわかりません。

TPP交渉、自動車業界は「歓迎」(東洋経済 2013/3/21)
TPP交渉、日本参加に懸念=自動車産業に脅威―米民主議員団(時事ドットコム 2013/3/15)

トヨタ自動車の前身が豊田自動織機製作所であることはあまりにも有名な話ですが、それを考えれば、いつかパナソニックといえば自動車会社だよねという未来がくることも絶対にない話とは言い切れないのでしょう。そう思わないとやっていられない事案となってきております。

しかし、ここ何年か流行った、電気自動車ならば従来のレガシーな自動車会社でなくても成功できるという景気の良い話も、電気自動車自体が様々な原因を抱えて不調となってしまった現時点では単なる夢物語でしかなく、さすがにパナソニックとしてもそこまでお気楽には考えていないと思いますが、さてどうなんでしょうか。

電気自動車は、ニッチ化? 大化け?(東洋経済 2013/2/19)
電気自動車に失速の兆し、燃料電池車で提携相次ぐ(ロイター 2013/2/5)
中国電気自動車メーカー比亜迪が失速「期待の星」が一転、経営難に(産経新聞 2012/10/17)

電気自動車の界隈全体が、夢から覚めて微妙な現実に直面しつつあることは、また近日中に触れたいと思いますが、そんな微妙すぎる現状を知っていながらパナソニックが何かに勝算を感じ取って参入への布石を打ち続けているのは気になるところですね。

どちらかというと、製造業同士の合併・再編は白物AV家電は白物AV家電同士っていう暗黙の諒解があったんですが、これはまさかの自動車+白物AV家電の資本統合でもやらかそうとしているのか?と市場の側からは感じ取ってしまう部分でもあります。いや、自動車じゃなくて実は造船だったとか、鉄鋼でしたなどというオチもあるかもしれませんけど。

パナソニックは迷走していたのではなく、はっきりした戦略に基づいた動きをしていたのだ、と後で反省し、再評価するような結末となるよう、願う次第であります。