「日本マイナンバー管理協会」の謎
マイナンバー制度の施行に伴い、マイナンバー通知カードが順次発送されている状態ですが、いろいろと不安を論じる向きがある中で便乗商法なのか「マイナンバー管理協会」なるものが資格ビジネスを始めてました。
山本一郎です。どちらかというとマイナンバー推進派です。
そして10月下旬から順次発送が開始されたというマイナンバー通知カードですが、なかなか配達事情が思わしくないようです。
マイナンバー:配達停滞郵便局への搬入遅れ(毎日新聞 15/11/26)
日本郵便が1年間で扱う簡易書留は約2億通。通知カードの配達数は約5700万通とその約3割にあたり、内閣官房幹部は「1カ月程度で配りきるという当初の配達計画に若干の不安はあった」と明かす。毎日新聞最初から計画に無理があったのではないかと思わなくもありませんが、ここはしっかりと全国民に無事に届けてほしいものです。
さて、いよいよマイナンバーが現実の制度として動きだしつつあるわけですが、やはり初めて導入される仕組みであるだけに実態が分からず不安に思う人は少なくありません。そうした不安に対しては、まずは国が率先してわかりやすく説明して対応するのが本筋だとは思うのですが、どうしてもそこはお役所的な堅苦しいものになりやすいイメージもあるせいなのでしょうか、知見を得るために国とは別の権威に頼りたくなるということがあるようです。
で、そういう需要を見越してなのか、「安全・安心なマイナンバー社会をつくるために」という謳い文句を掲げて一般社団法人日本マイナンバー管理協会という団体が早くも設立されておりました。
一般社団法人日本マイナンバー管理協会
公平・公正な社会を実現するために、非常に有効な施策であるマイナンバー制度。なるほど、マイナンバーの管理ルールを広く周知させることが活動目的のようです。ウェブサイトにある協会概要によれば、マイナンバーに関して守るべきルールを広く社会に周知し、マイナンバーを管理する個人や事業者のモラルの向上や、管理方法の確立と伝達をその社会的使命とすべく設立されたそうです。本来、そういうことは国の仕事だと思うのですが、マイナンバーに関する自警団のような感じなのでしょうか。
しかし、個人情報保護という観点からすると、その管理方法には「徹底したルール」が求められます。当協会は、このルールを広く周知させることを存在意義とします。一般社団法人日本マイナンバー管理協会
個人的には「余計なことせんでええわ」と思いますが、どうなんでしょう。
で、興味深いのは組織の長である大谷昭二氏は日本住宅性能検査協会の理事長と日本不動産取引適正評価機構の会長を務めていますが、その二つの団体は、日本マイナンバー管理協会と同じ住所です。
特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会
一般社団法人日本不動産取引適正評価機構
日本不動産取引適正評価機構にいたっては、同団体が推奨する「まる適マーク」に関する一般問い合わせ電話番号が、日本マイナンバー管理協会の問い合わせ先電話番号と今のところ同じままです。
「まる適マーク」のお問い合わせ
TEL: 03-6868-5509(受付時間 平日9:00~18:00 )一般社団法人日本不動産取引適正評価機構
<協会概要>不動産取引の適正評価とマイナンバー管理ルールの啓発活動が同じオフィスで行われているあたりに違和感を覚えなくもありませんが、世の中とは一般にそういうものなのでしょうか。また、日本マイナンバー管理協会理事の一人はシックハウス診断士協会の理事長ですがこちらの団体も住所が同じ所在地になっております。
〒103-0012
東京都中央区日本橋堀留町1-11-5日本橋吉泉ビル2F
TEL 03-6868-5509 FAX 03-6868-0827一般社団法人日本マイナンバー管理協会
特定非営利活動法人シックハウス診断士協会
なんですか、これは…どう見ても「これ、あかんやつや」臭がするんですけど、大丈夫なのでしょうか。
すでにネット民の間でも色々とこの日本マイナンバー管理協会については話題になっているようでして、プライバシーに関わる活動を推進する団体サイトなのに問い合わせフォームにSSL/TLSが使われないばかりか利用しているCGIがフリー版で利用規約違反なんじゃないかといったツッコミがあったり、団体名の英語略称がJAMMAを名乗っているけれどこれは既存の日本アミユ一ズメントマシン協会とまるかぶりなのはどうよとも言われたりしております。
一般社団法人日本アミユ一ズメントマシン協会
また、日本マイナンバー管理協会の顧問にはLEC(東京リーガルマインド)の専務執行役員が名を連ねていますが、LECでは早速マイナンバー管理アドバイザーなる資格の認定業務を開始するそうですが、この認定を行うのが日本マイナンバー管理協会となっています。
マイナンバー管理アドバイザー(東京リーガルマインド)
どうも内輪でぐるぐると回っているような印象もありますがそれはきっと穿った見方をしすぎているのでしょう。
さて、今後日本マイナンバー管理協会ではマイナンバー法学会の設立を目指すそうでして、こうした動きに対しては日本ツイッター学会や日本フェイスブック学会を彷彿とされるものがあり素晴らしいという声も上がっているようでして、これはしばらく目が離せない感があります。
当のマイナンバー管理協会に記されていた電話番号に連絡をすると、先方の第一声が「はい、日本不動産取引適正評価機構です」ということで、マイナンバー管理協会は連絡窓口の管理もできていないのかと不安になります。上記懸念を簡単に伝えて取材を申し入れようとすると、都合を聞く前に「担当者が不在」と定番の対応で、折り返しの連絡も無いといった状態であります。別に何かあって追い込む意図もなかったので、残念なんですけど。
マイナンバーの導入にはいろんな不安もあるわけですが、それ以上にこの手の便乗的な何かがあるのだとすれば、まずそっちを先に壊滅させるのがいいんじゃないかと思ってしまいかねません。
「お巡りさんこの人です」みたいなネタに昇華し、黒煙が舞い上がる日を楽しみにしております。
こちらからは以上です。