無縫地帯

「ひとり親世帯の貧困」問題と、駒崎弘樹×常見陽平論争について

貧困に直面している「ひとり親」支援を目的とした児童扶養手当の拡充について、賛成・推進派の駒崎弘樹さんとひとり親家庭に育った慎重派常見陽平さんで議論をしました。私は「どっちでもいい」派です。

山本一郎です。個人的に、人間としての品性の貧困問題に直面しています。何か思い通りいかないことがあると、つい「うんこ」とか口走ってしまうのです…早くこの精神的困窮から脱却したいです。

ところで、先日さまざまな問題で波乱が続く厚生労働行政の中で、珍しく前向きなもののひとつに「ひとり親等を対象とした児童扶養手当の引き上げ」という政策課題がありまして、あれやこれや議論しております。

もともとひとり親世帯の貧困問題は「そろそろどうにかしないとね」という話であり、一方で「そこまで困窮しているのであれば生活保護でいいんじゃないの」という反論もあって、どの辺が適切なセーフティーネットなのか良く分からない、という状態が続いておりました。

財務省と厚労省の間でも協議があったようで、今年の初めには塩崎大臣が記者からの質問に答える形で増額の方針をすでに打ち出していました。

塩崎大臣閣議後記者会見概要(厚生労働省 15/1/6)

児童扶養手当、拡充検討へ塩崎厚労相が答弁(朝日新聞 15/11/10)


この流れの中で、例によって社会起業家の駒崎弘樹さんが、ライフワークとして取り組んでおられる「ひとり親への支援」の一環として、ネット上で署名運動を繰り広げるなどしており、話題となっていたわけです。

子どもを5,000円で育てられますか?貧困で苦しむひとり親の低すぎる給付を増額してください!

塩崎厚生労働大臣に「ひとり親の低すぎる児童扶養手当引き上げ」を要望しました!

むつかしいのは、常見陽平さんが明確にこの運動に「反対」の声を上げたとおり、ひとり親世帯=貧困という図式は必ずしも当てはまらず、カネで解決できる問題であると安易に考えてほしくないという当事者もいるということです。

「ひとり親を救え!」運動はなぜ炎上したのか署名キャンペーンに対して上がった意外な声(東洋経済オンライン 15/10/30)

ひとり親家庭は応援するが、「ひとり親を救え!プロジェクト」を応援しないことにした


また、政策筋ではすでに財務省、厚労省間で、年内をめどに、ある程度手当て引き上げの道筋が見えているところへ、社会起業家が横から出てきて「手当て引き上げ運動」を演出することで、決まっている路線に便乗する形で手柄を横取りするだけではないかという批判も多数見られました。増額が決まっている話は知れているのに、「増額しよう」と後から世間を炊き付けて、実際増額が決まれば運動の成功だ、とやる手合いは問題ではないか、という話です。

そういう状況でもあったので、運動を起案した駒崎弘樹さんと、手法に問題を提起した常見陽平さんを議論してもらうべく、先日フジテレビ系ネット放送ホウドウキョク『真夜中のニャーゴ』で中川淳一郎さん、漆原直行さんを交えてお話してみました。放送は11月10日23時05分からで、パソコンやスマホなどから無料で観られます。

真夜中のニャーゴ


議論の中で出てきたのは、そういうひとり親世帯の貧困の原因となっているのは、幾らかの割合が離婚問題であり、別れた父親の側が子供の親権を母親に引き渡した後、決められた養育費をきちんと払わないケースが多いということ。また、貧困を全体で見渡した場合、相対的貧困率で見ることが妥当かどうかや、経済的困窮は必ずしもひとり親世帯の問題だけではないこと、さらにはセーフティーネットとしての生活保護はスティグマ(刻印)問題を持つこともあって社会的・心理的に受給に抵抗があることなどが問題として存在します。

翻って、上記塩崎大臣の記者会見で下敷きになったのは、ひとつの事件でした。ひとり親世帯として扶助を受給していた母子家庭が、シェアハウスといういままで法的枠組みでは認識されていなかった新しい生活の仕組みに対応できておらず、他の男性との「同居」認定されてしまい手当て支給を打ち切られたことが背景にありました。

生活の様式もさることながら、家族の形も時代によって変容していきますし、子育てのあり方も昔とはずいぶん様変わりしています。日本人家庭の標準とされた「サザエさん」や「ちびまるこちゃん」のような三世帯同居の家庭観は特に都市圏では一般的ではなく、現代の私たちにはさまざまな形のリアルが存在しているため、これを経済的尺度や家庭の構成で行政が見ていくことにはいろんな制約がついてきているのでしょう。

っていうか、サザエさんにおいては日本の代表的ババアであるフネさんが実は設定上40代(48歳)ですからね。私と6個しか歳違わないのかよ。いまにも死にそうな年寄りに見えるのに閉経からそんな経ってないとか超騙された金返せと言いたくなるわけですが、やはり私は品位に欠けているようですので、日本政府には品格手当ての新設を要求します。

こちらからは以上です。