無縫地帯

音楽配信ビジネス周りが微妙に色々と盛り上がっているようです

我が国の音楽配信の事業環境はスマホ時代となって大きく変遷してきております。その中でも、キャリアの一角を占めるKDDIが先に仕掛けるという展開になり、大変興味深い状況です。

山本一郎です。暖かくなってきましたね。アイスコーヒーのおいしい季節に差し掛かってまいりました。

ところで、共同通信の配信ニュースによると、日本が世界で一番音楽ソフトをたくさん売っている国になったそうです。

音楽ソフト、日本が初めて米抜く12年、世界最大市場に(47NEWS 2013/4/8)

この報道が微妙なのは、「映画やCMでの使用料など、音楽ソフト以外の売り上げも含めた全体の市場規模では米国が引き続き最大」というところで、音楽ビジネスそのものが日本で絶好調というわけではないというあたりでしょうか。

世界全体における音楽の流通形式の主流が、パッケージや音源を買って聴くという形から、音源そのものは所有せずにストリーミングなどを通じて聴くという形へ移行している状況から考えると、逆に日本は時代の流れに遅れているという考え方もありえます。どちらがより好ましいのかは、ユーザー側と業界側で判断がわかれるところかもしれません。

海外の音楽ストリーミングビジネスに関する論考については、あくまでもビジネス提供側からの提案でありユーザー側がはたしてそれを是とするかどうかはまた別の話ですが、音楽業界向けサイトで続いている特別連載企画の『未来は音楽が連れてくる』が面白いです。

『未来は音楽が連れてくる』(Musicman-NET)

ここ最近はさすがに日本でもスマホを起点としたストリーミングによる音楽ビジネスがじわじわと動きだしたように見えますが、そういうタイミングでKDDIが意外な動きを発表しました。

聴き放題音楽配信サービス「LISMO unlimited powered by レコチョク」をリニューアル(KDDIニュースリリースPDF書類 2013/4/9)

リリースの件名には「レコチョク」の名前が入っており、リニューアルという体裁になっていますが、実質的にはレコチョクを辞めるという発表です。

KDDIとレコチョクは業務提携して、2011年6月から「LISMO unlimited powered by レコチョク」を提供していましたが、2年の契約が終了するということでしょうか。

新音楽配信サービス「LISMO unlimited powered by レコチョク」の提供開始について(KDDIニュースリリース 2011/5/17)

実は、KDDIは、台湾ベースの音楽配信会社KKBOXの株式を2010年末には取得していて、ずっと子会社として維持していたのですが、日本国内ではほぼ何も展開せず、その後にレコチョクと配信事業を開始したりして、あれは飼い殺しで終わったのかと思っていたら、ここに来て突然降ってわいたような話になった次第。

マルチデバイス向け音楽コンテンツ配信会社KKBOX Inc.の株式取得について (KDDIニュースリリース 2010/12/15)

KDDIといえば、頑張って展開してきたリスモちゃんがApple iPhone発売のしわ寄せを喰って突然死するという事故もありました。この思い切りの良さというか、サービス開始するときの先の考えなさは素晴らしいフットワークと言えます。

音楽配信の雄、リスモくん死去5歳(虚構新聞)

この一連の動きが当初からの予定通りなのか、それともレコチョクとの間で何かあったのか気になるところですが、レコチョクを作った張本人のソニーも「Music Unlimited」という別のサービスを開始したりしていて、外から見ていると何かよくわからないなという印象を受けます。ガラケー時代の徒花として一世を風靡した「着うた」が事実上の終焉に近づき、レコード会社合同で始まったレコチョクも一気に曲がり角にさしかかったと見るのが良いのでしょうか。

定額音楽配信サービス徹底比較!(レコチョクBest vs Music Unlimited)(インディーズミュージックデータベース 2013/3/19)

それにしても、音楽配信ビジネスはその複雑な権利処理やインフラ運用などの手間を考えると、投資に対するリターンがあまり美味しくないようにも見えるのですが、見た目が派手ということも手伝ってか、やはり皆さん手を出したくなるようですね。

懲りずにパナソニックがまた手を出していて、他人事で余計なお世話と思いながらも心配になってしまいます。なんなんでしょう、最近のパナソニック。

パナソニック、音楽配信参入車載オーディオとセットで(朝日新聞 2014/4/9)
パナソニック、独の音楽配信会社を買収(サンスポ 2014/4/9)

パナソニックの車載用オーディオに独自の番組を配信し、機器の販売を伸ばす。パナソニックは2013~15年度の中期経営計画で自動車関連事業を強化する方針を掲げており、オーピオの買収はその一環。
確かにAppleはハードを売るために音楽配信を手がけて大きな成功を収めましたが、いまから真似してそう簡単に収益が見込めるようになるとも思えないんですよね。向かう方向が間違ってなければ良いのですが……。

誰か、パナソニックを救ってやってください。