無縫地帯

EUがプラバシー問題で米国に派手なちゃぶ台返しを決めたようです

スノーデンさんによるNSA情報暴露以降最大の山場と見られるセーフハーバー関連で大いなるちゃぶ台返しがあったようで、セキュリティ方面だけでなくウェブ一般のサービスにおいても悩ましい状況があるようです。

山本一郎です。意外にちゃぶ台を返すよりは返されるほうが多い人生です。

ところで、エドワード・スノーデンさんによるNSAの情報収集活動が暴露されてから早くも2年以上が経つわけですが、いまだあの衝撃の余波が消えることはなく世界各所で大小の関連事件が起きております。

つい最近もスノーデン名義のTwitterアカウントが開設されたという話が世界中の様々なメディアに取り上げられ、相変わらずの人気ぶり(?)を発揮していました。

スノーデン氏ツイッター開始数時間で60万人フォロー(朝日新聞 15/9/30)

当初はなりすましの疑いもあったようですが、その確認方法は不明ながらTwitterでは本人であることを認定しているので、おそらくは本人なのでしょう。まあ、スノーデン本人がTwitterをしているかどうかというのは正直どうでもいいことですが、彼のもたらした暴露情報で世界の国家間に不信の種が植え付けられ、そこから芽生えた枝葉が徐々に大きなものに育ってきている気配は否定のしようがありませんし、昔はそれなりに仲良くやっていたEUでもずいぶん大きく育ってしまったようです。

個人情報移転に待った=米ネット企業に影響も―EU司法裁(時事ドットコム 15/10/7)

欧州連合(EU)司法裁判所(ルクセンブルク)は6日、米企業が個人情報をEU各国から米国に移転することを特別に認めた「セーフハーバー」と呼ばれるEUと米国間の取り決めについて、情報が十分に保護されておらず無効だとの判断を下した。取り決めに基づき米国で個人情報を取り扱っている企業はインターネット関連を中心に数千社に上るとみられており、今後企業活動への大きな影響も予想される。時事ドットコム
米への個人情報転送協定は無効 EU裁判所(NHKニュース 15/10/7)

アメリカのCIA=中央情報局のスノーデン元職員が、おととし、アメリカの情報機関によって大量の個人情報が収集されていると暴露したのをきっかけに、ヨーロッパでも懸念が広がり、オーストリア人の男性がフェイスブックを通じてアメリカに転送されるみずからの個人情報が適切に保護されていないとして訴えを起こしていました。
EU司法裁判所は6日、この協定について、「個人情報を十分に保護しているとは言えない」として無効とする判断を下し、男性の訴えを認めました。NHKニュース
事の発端が一個人のFacebookにおけるプライバシー懸念というある意味ではかなり些細な訴えだったものが、結果的には米国とEU間で結ばれていたセーフハーバーという取り決めをご破算にし、欧州で事業展開する数千(NHKの報道では4000超とあります)の米国企業に大きなダメージを与えかねないという飛躍を遂げており、なんとも驚きです。

ちなみにセーフハーバーとはなんぞやという点については、以下の記事中にある「データ保護のための法令」という項目が図解などもあり分かりやすいのではないかと思われます。

データを置くなら知っておきたい、クラウドセキュリティの基本(@IT 13/4/18)

データ保護を目的とした法令の中で最も有名なものは、1995年に採択され、2012年に改訂された「EUデータ保護指令改定版(EU Data Protection Directive)」です。日本の個人情報保護法とプライバシーマーク制度も、この指令から大きな影響を受けて制定されています。
(中略)
米国は特例として「セーフハーバー・スキーム」(the United States“safe harbor”scheme)という枠組みを持っています。これは、セーフハーバー原則を遵守すると自己宣言する米国企業に対して、「十分なレベルの保護」を行っていることを認めるという協定です。

米国のIT企業では、Google、Amazon、Salesforce.com、Facebook、Microsoft、Appleなどが宣言しています。これにより、米国のクラウドベンダはEUの個人データの移転が可能ですが、日本企業は不可ということになります。@IT
上記記事の中に出てくる企業名を見れば簡単に分かることですが、セーフハーバーが無効になることで影響を受ける規模はちょっと洒落にならないレベルになりそうです。今後EUと米国側でどのような歩み寄りが期待できるのか現時点では全く予測できません。いやあ、すごいことになってますね。

その後も続報がさまざまといったところですが、確たる話はこれといってなく、むこう数ヶ月は混乱の中にあるのかもしれません。最近では、スノーデンさんがロシアでの亡命生活に飽きて、収監されてもいいからアメリカに帰りたいという話をしているという微妙な動きもあるようで、なんだお前普通の奴じゃん的な流れになっているようなんですけど、さてどうなんでしょうか。

スノーデン氏「もうロシア嫌だ。収監されもいいからアメリカに帰りたい・・・・・」(オールジャンルのオージャン 15/10/8)


とりあえずウォッカでもたくさん飲んでおくとノスタルジーも解消されると思うよ。