無縫地帯

Facebookはとにかくボタンを押してもらいたいようです

FACEBOOKといえば「いいね!」ボタンでユーザーの嗜好を集めて広告に生かすモデルですが、ここにきて「いいね!」以外の感情も表記できるようにするんだそうで、注目が集まっています。

山本一郎です。いろいろ押されて熱湯に入ったりするのが趣味です。

ところで、Facebookが「いいね!」とは異なる感情表現が可能なボタンを追加するらしいという情報が流れ、国内IT情報サイトは一斉にこの話題を報じたわけですが、なぜか各サイトごとで記事見出しのニュアンスが随分異なるという大変興味深い結果になりました。

この話題、元々はFacebook CEOのMark Zuckerbergさんが本社で行われた質疑応答の場で「いいね!」とは違うボタンの提供を検討中であると発言したのが発端です。彼のコメントを拾い出した海外記事の引用と、その引用の和訳を併記したサイトの記事があるので参考になります。

ついに Facebook に、イイネ 以外の ボタンが加えられる! ただし、嫌悪を表すものではなく、悲しみや追悼を伝えるものとなる!(Agile Cat ― in the cloud 15/9/16)

Facebook と Zuckerberg は、人々が互いに Downvote を付け合うような状況を望んでいるのではなく、”Like” 以外の感情を表現するためのオプションを持ちたいのだと言う。Agile Cat ― in the cloud
Facebook側では具体的にどういう名称のボタンを付けるかまでは一切言及していないのですが、当該記事の見出しには「'dislike' things」、つまり「好きじゃない」的なモノを表現できるようになるとしています。

まあ、確かにそういう言い方をされるとさまざまな解釈が出るよなあとは思いますがね。

で、こうした「好き/嫌い」を単純に伝えるためのボタンではないというニュアンスを見出しでも分かるように努めているメディアには以下などがありました。

Facebook、「いいね」以外の感情を共有するボタンをテストへ(CNET Japan 15/9/16)
Facebookの新ボタンは「dislike」じゃない"別物"(マイナビニュース 15/9/16)
Facebookが「いいね」以外のボタンをつけるそうです(ASCII.jp 15/9/16)

一方、本来の微妙なニュアンスは全て無視して、PV稼ぎを目論んだ釣り見出しを採用したメディアとしては以下などが目につきました。

Facebook、本当に『ひどいね』(Dislike)ボタンを提供へ。ザッカーバーグが発表(Engadget日本版 15/9/16)
「よくないね!」ボタンをフェイスブックが導入します(ギズモード・ジャパン 15/9/16)
Facebook、“Dislike(よくないね!)”ボタンの設置を計画(ITpro 15/9/16)
Facebookに「いいね!」の反対「Dislike」ボタン導入へザッカーバーグCEOが取り組みを正式に発表(ねとらぼ 15/9/16)

やー、さすがにそこまでは言ってないだろ、とは思うんですよね。柱で誤解させてクリックを誘導させる技法だよなあというか。

釣り見出しを採用しているところも記事本文まで読めば、単なる「よくないね!」ボタンではないことが説明されているのですが、本文を読んでくれない低リテラシー層からもPVを得るためにわざと極端な見出しを付けているであろうことが見え見えでして、もうちょっと考えようやという気持ちもしないでもありません。

なお、実際にFacebookがどのようなボタンを採用するのかはいまだ不明ですが、中には言葉ではない絵文字を採用するのではないかという憶測も浮かび上がってきています。

Facebookの〈Dislikeじゃない〉ボタンは、絵文字だけになるかもしれない(Techcrunch 15/9/18)

こうした新しいボタンがどうなるかで世界中のネット民が浮かれている最中、当のFacebookはボタンの運用についてよりビジネスライクな発表を行っております。

Facebook、外部サイトの「いいね!」ボタンも広告ターゲティングに活用へ(ITmedia 15/9/18)

米Facebookは9月17日(現地時間)、2010年から提供している外部ページ上の「いいね!」や「シェア」ボタンのデータを、FacebookおよびInstagram上のターゲティング広告(Facebookでは「インタレストベース広告」)で利用すると発表した。
(中略)
インタレストベース広告は、Facebook上でユーザーの関心の高い広告を表示できるので、Facebookは広告主とユーザーの両方にとってメリットがあるとしているITmedia
ユーザーがFacebook上でボタンを押してどのようなものに興味を持っているかを積極的かつ具体的に教えてくれればくれるほど、ユーザーの消費欲に合致した広告が表示できるようになるということですね。当然ながら「いいね!」以外のユーザー感情を把握できるようになれば、より幅広いユーザーの機微に訴える広告演出などへも活用できそうです。

結局、Facebookとしてはとにかくユーザーにボタンを押させて、さらに儲けにつながる情報を収集したいという話でしかないのですが、ユーザーも上手に騙されて楽しめばそれで良いのかもしれません。

一番恐ろしいのは「FACEBOOK飽きました」とかいうのに一斉に「いいね!」が付いたりすることなんでしょうけどね。そして、だんだんユーザーがいなくなる的な。そうならないように、いろんな機能を追加して楽しくコミュニケーションできる状態にして欲しいと思います。