無縫地帯

交通事故の原因は星座にあるという驚愕の事実が発覚 by 愛知

人を惑わす疑似科学の問題はかねてから指摘されていましたが、愛知県警が交通事故と星座の関係を論じた文書がウェブで出ていて騒動になりました。

山本一郎です。星座どうこうよりも、そういうちまい星の輝きを根本からなぎ倒す太陽さんの凄さと近さには感謝を申し上げる次第です。

ところで、世の中にはまことしやかな虚構の話が現実と混同されて流布された結果、なぜか多くの人がそうした説を広く信じてしまい、いつの間にか社会において「事実」と誤って認識される事態が起きたりします。

その典型の一つが江戸しぐさであります。

歴史の捏造『江戸しぐさ』に潜む危うさ|やまもといちろうコラム(Daily News Online 15/6/19)

「江戸しぐさ」とか、完全にインチキだと思いますね。

ほかにも、 水に優しい言葉をかけると結晶がきれいになるという説を吹聴した「水からの伝言」などという事例が有名であります。

「水からの伝言」を信じないでください(「『水からの伝言』を信じないでください」に関連する全ページと項目のリストと主な更新の記録)

こうしたいわばトンデモな説の数々は、笑い話のネタとして扱われている分には人畜無害で済むのかもしれませんが、なぜか教育のような場で道徳の教材として使われるような傾向が少なくなく、子供達がそのまま偽の歴史や偽の科学を信じ込んでしまい、明らかに教育的に適切ではない事態を招いたりするのが困りものです。特に、江戸しぐさは文科省自らが率先して取り上げてしまったのも痛い話でした。

続・江戸しぐさの正体第14回:文部科学省と「江戸しぐさ」(ジセダイ 15/7/28)

内部での検討の結果、来年度から「江戸しぐさ」の教材導入をとりやめたとしても、過去において文部科学省が何年も虚偽に基づく教育を推進してきた事実が消えるものではない。文部官僚の皆様にはその点を改めて考えていただきたいものである。ジセダイ
政府や役所のような公的機関が一度こういう嘘の情報を流布してしまうと、なかなか取り返しがつかずでその罪は重たいです。できれば、不適切であった情報については何がよくなかったかを明確に示した上で誤りを正すことで社会の規範となっていただきたいものだなと考える次第です。

しかし、残念ながら悲劇は繰り返されるのを止められないようです。今度は愛知警察が、江戸しぐさ並みの破壊力ある誤ったデータに基づく情報公開をやらかしてしまったようです。

星座から見た交通死亡事故の特徴](愛知警察 15/9/2念のためのウェブ魚拓:[http://megalodon.jp/2015-0904-1202-10/https://www.pref.aichi.jp:443/police/koutsu/topics/seiza.html http://megalodon.jp/2015-0904-1202-10/https://www.pref.aichi.jp:443/police/koutsu/topics/seiza.html

愛知県内で発生した過去10年間(平成17年から平成26年)において発生した死亡事故を、各星座ごとに飲酒・高速道路・自転車・歩行者別の発生状況・月・時間ごとの発生状況を分析し、特に注意してほしい部分についてまとめたものであります。愛知警察
星座から見た交通死亡事故の特徴~愛知県内で発生した過去10年の死亡事故~(PDF:343KB)](愛知警察 15/9/2念のためのウェブ魚拓:[http://megalodon.jp/2015-0904-1201-22/https://www.pref.aichi.jp:443/police/koutsu/topics/documents/seiza-01.pdf http://megalodon.jp/2015-0904-1201-22/https://www.pref.aichi.jp:443/police/koutsu/topics/documents/seiza-01.pdf

えー、これは何なんでしょうか。星座というのは単に生まれた月日で12のグループに分けたに過ぎず、その各グループ毎に何らかの運命的な特徴があると考えるのは疑似科学でしかないわけですが、愛知警察では堂々と星座を理由にして「速度の出し過ぎによる事故が最多」「飲酒運転や信号無視が最多」「12星座の中で一番事故が少ない」「交通事故で亡くなる方が最多」等々の断言をしております。

どうやら愛知県内で発生した過去10年間の死亡事故データから導き出したものだそうですが、星座と事故発生に何らかの相関があると考えるのは科学的根拠のない疑似相関でしかありません。こんな所見で交通事故の分析をしているようではいつまで経っても交通事故数ワースト1の不名誉な看板を下ろすことはできないんじゃないでしょうか。

交通事故死者数、愛知が12年連続でワースト14年204人(日本経済新聞 15/1/3)

占星術で一喜一憂するのは個人の自由ですが、警察のような公的機関の場合、たとえそれが単なる話題作りであったとしても、根拠のない疑似科学を用いて交通事故分析をすることは自身の信用を貶めることにしかならない行為であるとしっかり認識していただきたいものです。

もしもなんらか具体的に星座が交通事故などのインシデントと関係があるのだとすれば、それはぜひ見てみたいので、どなたか是非因果関係について記された論文などあるようでしたら教えていただければと思っております。よろしくお願い申し上げます。