ガラケー時代の終わりに咲く徒花的な何か
ガラケーの機能性や簡便な仕組みにノスタルジーも感じつつ、謎ハードの出現や取り巻く環境の悪さに秋の気配を感じる昨今です。
山本一郎です。どこの組織に傭兵で雇われてもお家騒動に巻き込まれるのが運命です。
ところで、ガラケーという単語で一括りにしてしまうのはやや語弊があるかもしれませんが、ここではAndroidやiOSで動作するスマホ以外の国内市場向け携帯電話で主にタッチキー操作する端末を指すこととします。フィーチャーフォンという呼称もありますが、まあガラケーと言い切ったほうが誰もが具体的なイメージをしやすいでしょう。
で、そのガラケーが徐々にその役目を終えようとしています。
KDDI、「PCサイトビューアー」を16年3月末に終了(ITmedia 15/9/1)
auのPCサイトビューアーは、同社のフィーチャーフォンでPC向けwebサイトを閲覧するいわゆる“フルブラウザ”サービス。(中略)2004年12月からサービスを提供してきたが、スマートフォンなどの普及に伴い利用者が減ったことから終了することになったという。ITmedia「そういえばそんなのがあったなあ…」と遠い目になってしまう単語ですが。
スマホが登場する前はいかにガラケーでPCサイトをそのまま見ることができるかということで各社がフルブラウザの技術を競ったものですが、ほぼPCと同一のブラウザ環境を実現したスマホの登場によりお役ご免ということかと。ドコモやソフトバンクについてはまだ同様のサービスが提供されていますが、こちらもそう遠くない将来に終了しても不思議ではありません。
一方で、依然として電話機能に主眼を置いたガラケー的なるものへの需要は市場の一部において高止まりしており、その結果がOSにAndroidを利用しつつハード構成は従来の二つ折りケータイの体裁を採用した端末の発売に至り、巷では「ガラホ(ガラケーとスマホから作られた造語)」と呼ばれたりしています。ただし、料金プランが微妙に割高になる可能性があるなど、どうしても純粋なガラケーとは異なる要素があるため、従来通りのガラケーを求めるユーザーの心に刺さるのかどうかは微妙かもしれません。
新型ガラケー「ガラホ」実機レビュー今までのケータイとの違いや注意点は? ドコモ・auの端末は使いやすい?(日経トレンディネット 15/8/26)
今回紹介した「ARROWSケータイ F-05G」と「AQUOSケータイ SH-06G」の2機種は「これからも通話とメールだけの折り畳み式を使い続けたいけれども、最近になってLINEがどうしても必要になった人」に向けたケータイだろう。スマホのブラウザーも搭載しているが、通信速度が遅いのでYouTubeなどの動画視聴には向いておらず、ガラケーからスマホへの移行で迷っている人が使うぶんには機能が少ない。日経トレンディネットぶっちゃけ、いまでも通話専用機としてガラケー使っている私としても、余計な機能がなく、バッテリーも長時間もち稼動できるガラケーの良さは重宝しています。どうしてもスマホと二台持ち、三台持ちになりますが、どうせブラウジングはスマホかタブレットで外出先はささっと確認するぐらいしかありませんので、やむを得ないと割り切って使ってます。身の回りを見てもそれなりの割合で複数台運用が一般的のようです。
そうした状況の中、MVNO事業者のFREETELが通話とSMSに特化したSIMロックフリーのフィーチャーフォン「Simple」を発売し、特に新しもの好きなギーク層の注目を集めた結果か先行予約は即日完売。さらに、その後の店頭入荷分もあっと言う間に売れてしまうという評判ぶりにも関わらず、メーカー側では増産しないことを発表して話題となりました。
FREETELのSIMフリー「ガラケー」Simple、発売3日で販売終了。増産予定無し(Engadget 15/9/1)
FREETELが8月28日に発売したSIMフリー『ガラケー』Simpe。発売から僅か3日の8月31日をもって販売を終了しました。理由は「予想を大きく上回る注文で総生産分が完売したため」。増産は追加の部品調達が困難であることを理由に行わないとしています。Engadget「部品調達が困難」という理由がなんともモヤモヤしたものを感じさせますが、どこかのOEMメーカーで大量に売れ残っていた古いパーツでも買い叩いて作らせたのでしょうか。まあ、そういうビジネスもありでしょうし、それで手に入れたユーザーが満足できる製品に仕上がっているのであれば全く問題はないと思います。しかし、微妙な情報もあるようですね。
FREETELのSIMフリーケータイ「Simple」発売3日で販売終了(ケータイWatch 15/9/1)
「Simple」の発売以降、ソーシャルメディアを中心に、購入したユーザーの一部からは、品質に関する疑問が挙がっている。ニュースコメント[SIMフリーのフィーチャーフォンSimple、早くも販売終了に](無線にゃん 15/9/1)
(中略)
同社の広報担当は、「ソーシャルメディア上での話題となっている内容については把握しているが、その内容のほとんどは、電話帳アプリの仕様など、発売前に公式サイトにて公表していたもの」としたうえで、「発売後間もないため、正確な数字は把握できていないが、いわゆる“不具合”と認識されるものは、ごくわずか」としている。ケータイWatch
どうもSMSが受信できないなんていう問題があるらしく。そもそも、ドコモ網との相互接続試験とかちゃんとやってたのかな?なんて思うんですけど。ぶっちゃけ、日本のキャリアはう○こで、標準規格であるはずのSMSとかでも結構へんてこりんな作り方・使い方をしてたりするので、標準どおりに作ったはずの端末なのに通信できない、なんてことは当たり前なんですよね。昔某プロジェクトで標準準拠端末なのにドコモに接続できなくてどれだけ苦労したことか・・・。無線にゃんうーん、どうなんでしょうか。なんとなくではありますが、国内キャリアの実質プロプライエタリな通信仕様と、SIMロックフリー端末を謳うメーカー側の検証不足が、悪い形で組み合わさってしまった結果と見えなくもありません。もし、そうした諸々が追加販売を行わない理由の一つであるとしたら、ちょっと感心できないものがありますが、これはあくまでも憶測であり真相は不明です。
このSimple、考えようによってはガラケーの時代が終わりつつあるタイミングで咲いた徒花なのかもしれません。幸か不幸かほとんど市場に出回らなかったらしいSimpleを無事手に入れることができたユーザーは、この際そのダメな部分も愛おしみながら使うのが粋ということなのでしょう。
個人的には、PC/AT機の躍進が続く中でひっそりと役割を終えるワープロ専用機的な物悲しさを覚えずにはいられません。TizenみたいなOSで何か良い案があるといいんですが。