
休眠口座利活用のザル法案、まさかの委員長提案での早期採決を狙う利害関係者の謎の動き
今国会での成立を急ぐ休眠口座の利活用に関する法案が、今月14日に予定される安保関連法案の強行採決の影響もあって日程が詰まり、難色を示す野党に利害関係者が直接ロビー活動するという騒動に発展しております。
山本一郎です。意味のある行動を促す議論が大好きです。
ところで、先日来、少しだけ休眠口座に関する議論をわずかにしました。
休眠口座の資産を「NPOの社会活動に利用」という謎の仕組みが問題視される件(ヤフーニュース個人 やまもといちろう 15/8/4)
やまもといちろうさんの休眠預金に関する記事について(駒崎弘樹BLOG 15/8/2)
疑惑の支援スキームが輝く「休眠口座の資産をNPOへ」で駒崎弘樹さんに質問10個(ヤフーニュース個人 15/8/25)
隊長、よくぞ聞いてくれました。休眠預金活用に関する、やまもといちろう氏への返信2(駒崎弘樹BLOG 15/8/25)
あくまでほんのちょっと触っただけなのですが、フローレンスの駒崎弘樹さんからのご回答もいただき、また内閣府方面からもしっかりとやり方について考えていきますという話を頂戴しましたので、まあちゃんと国会で委員会審議をしてしっかりと日本社会のために意味のある活動をやっていってほしいと思っていたわけなんです。
ところが、どうしても利害関係者としては今国会でこの法案を通したいらしいのです。そんなに急ぐ理由が良く分かりません。一方で、日程がないので共産党に反対されると委員会でこの法案についての委員会審議を時間かけてしなければならないため、今国会での成立が怪しくなる。なぜならば、今月14日にも懸案となっている安保法案の強行採決が実施されるのではないかと思われているからです。それもあって、NPO界隈より、どうにか共産党を説得して委員長提案で法案を通して欲しいという謎の呼びかけがありました。
きちんとした審議しないで法案通すのは、良くないんじゃないかと。
で、そもそも、一連の議論で私も指摘したとおり「休眠口座の利活用でNPO/NGOを通して社会を良くする財源を」というとても立派な御旗の割には、雑なコンプライアンスのザル法に見えます。だからこそ、与野党でしっかりと委員会で審議すべきなのに、国会閉会までの時間がなく、与野党合意で委員長提案に持ち込むため共産党を説得しろというのは何なんでしょう、という話です。
共産党の肩を持つわけではありませんが、国民の財産なのだから国民に返すべきという共産党の主張ももっともであります。しっかりと議論し、審議を経て正しく法律が策定され、コンプライアンス含め筋道が通るようにしていただきたいと思います。
読売新聞も社説でしっかりと「審議を尽くせ」と仰っております。
休眠預金法案公正性の確保へ審議を尽くせ(読売新聞 15/8/30)
で、この呼びかけを行ったのは、日本ファンドレイジング協会という団体の代表理事を務めておられる鵜尾雅隆さんです。
日本ファンドレイジング協会
NPO界隈に呼びかけて人を動員して政党や議員にプレッシャーかけるだけでなく、「新聞記者からの取材攻勢(何故共産党は止めるのか?質問)」を促しておるようです。読みようによっては、さすがにちょっとやりすぎじゃないのということで、騒然としております。利害関係者のど真ん中が音頭を取って共産党に正面からロビーを仕掛ける姿には感動の涙を禁じ得ません。しかし、他にやり方はなかったのでしょうか。
鵜尾さんについては、彼の名誉のために言うならば、これという悪意があってこのような申し入れを共産党方面に対してしたかったというわけではないとは思います。直接鵜尾さんにもメール出してその真意を伺ったんですが、早期に審議を開始して欲しい、本法案の優先順位を上げてほしいという一心から、共産党方面に働きかけを強めた、というのが実情のようでした。気持ちは分かるんですが、やり方が雑すぎないですかね。
せっかく善の善たる行為を行うためのNPO/NGO助成の枠組みを作るのに、コンプライアンス方面の配慮に乏しいザル法を議員立法で作り、その審議もまともにせずに全党賛成で委員長提案で法律を通そうとするのは、さすがに昭和の族議員みたいな流れなんじゃないかと思うわけであります。そういう疑いをもたれないよう、堂々と議論し、国民の理解をきちんと促して然るべき法律に仕上げていくほうが、手間はかかっても最終的には優れた仕組みを構築することができて、日本でNPO/NGOの力を借りていきたい人たちのためになるのではないでしょうか。
社会的に意義のある活動をして善行を積もうとする前に、ロビー活動のあり方として、やって良いことと悪いことの分別をつけるべきじゃないかと個人的には思うわけなんですが、正しく審議が行われ、日本社会の改善に足る内容であって欲しいと願っております。