無縫地帯

Microsoftのソーシャルのシェア精神がやりすぎな件について

マイクロソフトが『Windows 10』に絡んで、未来のIoT世界を睨んだ意欲的な技術戦略とソーシャル機能の実装を目指しているようですが、ちょっと意欲的過ぎてやばい雰囲気がします…。

山本一郎です。シェア精神の塊のような存在です。

ところで、普通の人々が日常生活の中でPCを使う機会が減りつつあるという状況を、女子高生というかなり誇張されたサンプルで示してくれる面白い記事がありました。

女子高生にとって「パソコンの死」はいつ? 未だ40%がパソコンをつかう理由と「授業中スマホいじり」の実態。原宿の女子高生110人アンケート。(アプリマーケティング研究所 15/8/5)

今回は「女子高生のスマホ事情」について研究すべく、「原宿の女子高生110人」にアンケートを実施しました。※女子高生全体を正確に調査したものではないため、あくまで参考までにご覧ください。アプリマーケティング研究所
もちろんこれはあくまでもネタとして読むべき記事なんですが、今のスマホファーストな世の中の一端をうかがい知ることができるという意味ではかなり参考になります。女子高生の立場からすると下記の要件が満たされれば、PCはこの世から不要になる可能性があるようです。

1.「スマホの通信制限」が実質なくなること。
2.「音楽のデジタル環境」が整備されること。アプリマーケティング研究所
なるほど、東京オリンピックに向けて街中の公衆無線LANが整備され、このところにわかにサービスが乱立しはじめたストリーミング音楽配信の内容が充実するようであれば、あまり遠くない未来に女子高生はPCを本当に必要としなくなるのかもしれません。

まあ、しかし考えてみれば、仕事で膨大なデータを処理するといった用途を除けば、ほとんどの人もスマホだけで大概の用は十分に足せるような状況が整いつつあるわけでして、女子高生だけを特別視するのも時代遅れな感はあります。そういう状況下では、Windows Phoneというスマホの立ち上げに失敗したMicrosoftはかなり厳しい局面にあると言わざるを得ません。Windows 10という新しいPC用OSの発表に際しても、多くの人々がその点に触れています。

「Windows 10」はAppleと真逆のアプローチで勝負を挑む(ITmedia 15/8/3)

Microsoftにとって本当に越えなければならない峠は、やはりそこからスマートフォン、さらには各種IoTへと足場を広げることに他ならない。MicrosoftはWindows 10の稼働デバイス数を3年以内に10億台まで増やすという目標を発表している。果たしてそれは達成しうる目標なのか。

そのカギは、今秋に関連製品がローンチされるといわれる「Windows 10 Mobile」が握っている。Windows 10 Mobileは、これまでの課題だったアプリケーション互換性問題へ切り込み、PC的な使い方までをカバーする意欲的なアップデートだ。ITmedia
と言うわけで、Microsoftとしてはスマホ市場も視野に入れつつ、かなり意欲的な形でWindows 10を市場に投入したのだと思われますが、今日のIT市場における大きなキーワードであるソーシャルやシェアというコンセプトに関してかなり大きな勘違いをやらかしてしまったようです。

社内 Wi-Fi を Windows 10 の Wi-Fi 共有対象から外してパスワードを変更する(ポテチに関する雑記帳 15/8/4)

Windows 10 には Wi-Fi Sense という新機能があり、これは Wi-Fi スポットを自分の連絡先に自動的に共有できるものです。一度有効にすると、 Microsoft のサーバーに保存された Wi-Fi パスワードが連絡先に晒されてしまいます。ポテチに関する雑記帳
この説明だけでは、一部の察しが良いギークな人達にしか意味不明でありますが、かいつまんで適当に説明すると、Windows 10にはWi-Fi設定を自動的に共有してくれる便利な機能が搭載されており、これを利用可能にしておくと自分の利用しているWi-Fiスポットへの接続情報が、PCの中に保管してある連絡先へも通知されということのようです。

もう少し事の次第を詳しく報じた記事もあります。

無線LANパスワードを友達に共有?Windows 10の新機能「Wi-Fiセンサー」はセキュリティリスクになり得るのか(サイバーインシデント・リポート 15/8/6)

Wi-Fiセンサーには2つの機能がある。1つがオープンなホットスポット、すなわち暗号化されていない無線LANアクセスポイントへの自動接続だ。
(中略)
多数のユーザーから情報を集め、それを分析して「高品質な接続」が可能なオープンアクセスポイントを判定するということだろう。Wi-Fiセンサーを有効にしているユーザーがそのアクセスポイントに近づくと、自動的に接続されるというわけだ。ただ、この「高品質」はおそらく通信速度や持続性などのことで、セキュアかどうかは問題にしていないと思われる。
(中略)
「連絡先によって共有されたネットワークに接続する」が、Wi-Fiセンサーのもう1つの機能の制御スイッチだ。
(中略)
恐ろしいのは、その接続を連絡先や友達の全員と共有するということだ。特定のユーザーやグループではなく、「全員」なのだ。CNETの記事では「その実装は一言で言えば狂気じみている」とまで評されているが、そう言いたくなるのも無理はない。自宅の接続をFacebookの友達と共有するように設定した場合、友達を100人登録していれば、100人があなたの自宅のアクセスポイントに接続できるようになるということだ。サイバーインシデント・リポート
これはなかなか豪快な共有機能と言えそうです。ソーシャル文化に則り何でもシェアすることを重んじる方々はともかくとして、普通のユーザーはとりあえず、こちらの設定はオフにしておくのが今のところは無難なように感じます。

なんといいますか、前CEOのバルマー時代にソーシャル方面に出遅れて失敗した反動がここに来てMicrosoftを変な方向へ駆り立ててしまっているのでしょうか。過ぎたるは及ばざるがごとしとはよく言ったもので、ここまで極端なソーシャル的取り組みはさすがにないだろうなと。他人事ではありますが、Microsoftは早くこの間違いに気付いて無事軌道修正することを願ってやみません。

まあ、何事も適量が最善ということで。はい。