無縫地帯

全Facebookユーザーはアイルランドの法律に従って行動しなければならないそうです

米系サービスに対して警戒心の強いドイツでは特にFacebookを気にしているようですが、実名登録の問題で個人情報をFBに晒された問題ではFBがアイルランド法に準拠していると主張、騒ぎが広がっています。

山本一郎です。今年もなんやかやあり、夏休みがなくなりそうです。
まあ、人生全体としてずっと休んで旅しているようなものなので、あまり気にしませんが。

ところで、欧州ではプライバシーのあり方をを巡って大手ネットサービスと各国政府の間で様々な軋轢が生じております。一番分かりやすい例はGoogleが裁判で負けた「忘れられる権利」でしょう。

欧州「忘れられる権利」判決の行方(ハフィントンポスト 15/5/17)

欧州連合(EU)の最高裁判所となる欧州司法裁判所(CJEU)が米検索大手グーグルに対し、EU市民の過去の個人情報へのリンクを検索結果に表示しないように命じる判決を下したのである。
(中略)
CJEUの判断は、欧州内で市民に忘れられる権利を保障する典型的な判例となったこと、グーグルが包括的な取り組みを開始したという点で非常に大きな動きだ。ハフィントンポスト
あー、そうなりましたか。

同案件は欧州全域において有効となる事例ですが、このほかにも欧州の各国ではそれぞれが独自にネットサービスをプライバシーの観点から規制しようという動きが見られます。

たとえば、ドイツではかなり以前からFacebookに対して規制を課すような試みがなされてきました。

フェイスブック利用は法律違反?ドイツで罰金も(WEBRONZA 11/11/9)

日本でも急速に普及しているフェイスブック。企業はもちろん地方自治体でも使用する例が増えているが、ドイツではこれに歯止めをかける動きが起こり、話題を呼んでいる。役所など公的機関がフェイスブックを使用すると、5万ユーロの罰金を科すというのだ。WEBRONZA
ドイツで公的機関のFacebook使用が禁じられた同じ年、我が国では市役所の公式ホームページをFacebookに全面移行する自治体が登場しなにかと話題になりましたが、プライバシーに対する考え方の違いが如実に表れていて大変興味深いものがあります。

武雄市が公式ホームページをFacebookに全面移行……アリ? ナシ?(Web担当者Forum 11/8/9)

どうしてこう、世界的に見ても「そっちに行くのは問題あるよね」「やめようね」という方向へ足を踏み出してしまう変なのがいるんでしょう。

で、我が国のことはさておき、ドイツは国民レベルでFacebookに対する警戒心が高いようでして、その後もFacebook絡みでは同社がメッセージングサービスのWhatsAppを買収すると、人々が大挙して他のサービスへ移行するといった現象も起きております。

ドイツ人が大挙してWhatsAppからThreemaへ移行: Facebookの一員になったのでプライバシーが心配(Techcrunch 14/2/22)

そんなFacebookに対する信用がやたらに低いドイツで遂に大きな動きがあったようです。

ドイツ当局、Facebookの実名強制措置を認めず--Reuters報道(CNET Japan 15/7/30)

ドイツのデータ保護監視機関がFacebookに対し、ユーザーに実名使用を強制することはできないと宣告した。CNET Japan
事の発端は、プライベートと仕事を一緒にしたくなかった女性がFacebook上で偽名を使って利用していたところ、そうした使い方を好まないFacebook側によって最終的に実名を晒されるといったトラブルがあったようです。

マジかよ、と思って調べてみたら、確かにそういう事例があったようで。もう少しちゃんとした続報を待ちたいと思いつつも、結構な話になりそうで。

Facebookの主張としては「同社の本部がアイルランドにあるので、アイルランドの法に従うべきであり、同国では実名主義が認められている」からとのことでして、なるほど、そういう理屈でFaceBookが運営されているのであれば、全世界のFacebookユーザーは全員がアイルランドの法律に従って行動しなければならないようです。大丈夫なのか武雄市民。Facebookのトップページには是非ともアイルランドの法律を分かりやすく掲載しておいてほしいものです。

とりあえず、このドイツでの話は今のところロイターの記事だけがソースということでして、今後どのように展開するのかよく見えない部分もありますが、もしこれでドイツにおける実名使用の強制が除外されるようなことがあれば、他の国でも同様な権利を求める運動が始まる可能性は高いと考えていいでしょう。

German regulator orders Facebook to allow pseudonyms(Reuters 15/7/28)

今後の成り行きが注目されますね。
私もアイルランドにまた行ってみたいですね、家族を連れて。