消費者庁がクックパッド絡みでやらかしてしまったようです
消費者庁がクックパッドと組んで食品ロスの削減に取り組むプロジェクト「消費者庁のキッチン」をやっている中で、なぜか「酵素ジュース」なる盛大なやらかしをしてしまったようです。
山本一郎です。先日来、牛乳を飲んだらくさい屁が出る難局を打開できません。乳酸菌魂が枯渇しているのでしょうか…。
ところで、最近知ったのですが、消費者庁は食品ロスの削減に向けた施策の一つとして、民間の料理レシピサイト「クックパッド」を利用して「食材を無駄にしないレシピ」の掲載を昨年11月から開始していたそうです。
料理レシピサイト「クックパッド」に「食材を無駄にしないレシピ」の掲載を始めました!(消費者庁)
消費者庁では、食品ロスの削減に向けて先駆的な取組を行う地方公共団体に対して、「平成25年度地方消費者行政活性化交付金」による支援を実施しました。で、こちらがその当該公式ページとなります。
この成果として、各地方公共団体から寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」をより多くの方にお伝えするため、料理レシピサイト「クックパッド」の「消費者庁のキッチン」において紹介します。消費者庁
消費者庁のキッチン(公式ページ)(クックパッド)
消費者庁は、消費者の皆様の安全・安心を確保するため、様々な取組を行っています。食品の分野では、偽装問題や食品安全に関する消費者問題に対して取り組んでいます。その中でも、食を楽しみながら食物アレルギーや食品ロスといった身近な問題に役立つレシピを掲載していきます。クックパッドなんですかね、これ。
で、以前にも総務省がSkypeを導入する事例を取り上げて、「いま最高に便利なものを、役所が使ったっていいじゃないですか」という話をしたのですが、今回は期せずして日本製サービスで最高なものがあったということでしょうか。これはこれで上手に利用できるといいですねと思ったわけですよ。
もうウェブサービスは「日の丸至上主義」である必要はないのではないか(15/6/8)
ところが、消費者庁、クックパッドとTwitterを使って思い切りやらかしてしまったようですね。
消費者庁、「酵素ジュース」のレシピをクックパッドで紹介、即日削除「食中毒恐れがある」と指摘受け(ITmedia 15/6/19)
消費者庁が6月19日、レシピサイト「クックパッド」の同庁公式レシピページ「消費者庁のキッチン」に掲載した「酵素ジュース」のレシピを即日削除した。同庁によると、掲載後、「食中毒の恐れがあるレシピでは」と指摘を受けたため削除したという。同庁は公式Twitterで経緯を説明し、「お詫び申し上げます」と謝罪している。これはやってしまいましたなあ。
(中略)
レシピは、スライスした果物と砂糖を瓶に漬けて直射日光が当たらない暖かい場所に保管し、清潔にした手で1日1回かき混ぜ、発酵が進んで泡が出てきたらガーゼでこす――というもの。「素手でかき混ぜるのは、手に付いた常在菌が発酵を進めるから」などと書かれており、ネットユーザーから「食中毒の危険があるのでは」などと批判が殺到していた。
ITmedia
当日は、SNSなどでネット民もかなり騒いでいたようですが、なぜこんなつまらない事故を起こしてしまったのでしょう。ちょっと考えれば食中毒待ったなしであることぐらい想像がつきそうなものですが…。そもそもクックパッドの当該企画自体が、各地方公共団体から寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」をそのまま掲載するということのようなので、もしかしたらどこかの地方公共団体に、疑似科学の「酵素栄養学」あたりにかぶれた御仁がいて布教活動の一環として情報を送りつけてきて、それがチェックされずにそのまま掲載されてしまったということなのでしょうか。それにしても、「素手でかき混ぜるのは、手に付いた常在菌が発酵を進めるから」という一文、常識ある人が読めば一発でやばいと気付きそうなものでして、あんまチェックしてなかったんですかね、これ。
で、この酵素栄養学ですが「江戸しぐさ」などと同じで学術的になんの根拠も無いにもかかわらず、なぜか巷で熱心に信じている人が少なからずいるというやっかいな代物です。ここ数年話題になっているようで、こうした誤った考えを正そうと熱心にブログで啓蒙活動をされている方もおられます。
なぜ多くの人が「酵素栄養学」に惑わされるのか、やっと理解できました!!(五本木クリニック院長ブログ 14/6/24)
健康系のサイトを覗いてみると酵素ジュースとか、酵素スムージーなるものを多く見かけますが、中には「数日常温で保存した方が効果的です」という危険なアドバイスが加えられているものがあるんです。空気中にも微生物は沢山いますし、ジューサー自体に微生物が存在しています。さらにジュースやスムージーを作るときの手にも常在菌がウヨウヨいますので、下手をすると病原性を発揮するバイキンが常温保存した酵素スムージー内で大量に繁殖している可能性があります。まさにこちらのブログ記事で指摘されている事態が、そのまま消費者庁によって行われてしまったということです。
そのようなサイトを作った方は当然おっしゃるでしょうね「発酵して酵素がたくさんできているんですよ」と。でもそれって一歩間違えば
「腐った飲み物で一家で集団食中毒」
ってことになるんですよ。五本木クリニック院長ブログ
で、興味深いのは同じ方が別の記事で酵素栄養学周辺について以下のような指摘もされております。
酵素ダイエットは効果以前にインチキ臭いセミナービジネスがはびこっている!?(五本木クリニック院長ブログ 14/7/13)
酵素ダイエットが理論的であり、効果が実証されているものなら問題は発生しないと思います。ミキサー一台で講座が開けるんですから、受講生(お客さま)もミキサー一台でダイエットが可能になるんですから。でも、チョッと待てよ、受講料って二つ受講することがマストなんで最低で10万円、マイスターだかスペシャリストになるなら25万円は最低必要です。やー、これは匂いますね。
この金額を払えば全身のダイエットは無理でもお腹まわりについた脂肪を医療機関で除去すること可能なんじゃないかなあ。五本木クリニック院長ブログ
どうやら「酵素うんぬん」で健康に良いとかダイエットに効くという話は、単なるインチキ商法と結びついている可能性もうかがえます。こうなってくると、消費者庁は食品衛生上の問題だけでなく、消費者保護の面でも問題ありと、二重にやらかしてしまったことを非難されても仕方ないような事態です。どうもちょっとばかり間抜けなことをしてしまいましたね。今後のリカバリーで頑張っていただきたいと思います。
がんばれ、常在菌。