無縫地帯

ユナイテッド他、偽装子会社を使いリワード広告用の小遣いアプリを複数運用

ランキング不正操作などの問題が絶えないリワード広告について、上場企業のユナイテッドなどが匿名の小遣いアプリを運営しプラットフォームの利用規約をしている実態が明らかになりました。

山本一郎です。ミサイルのボタンが目の前にあったらとりあえず押してみる性格です。

ところで、前回AppBankとかいうマックスむらいさんとこの会社が適法性が疑わしい形でmixi運営の「モンスターストライク」の有償アイテムを使い、派手にブーストをやらかしている記事を掲載しました。

グノシー他、AppBank「モンスト攻略」ブーストでアプリダウンロード数を水増し(ヤフーニュース個人 山本一郎 15/6/13)

記事の具になっていたグノシー他、微妙アプリのダウンロード数を水増しするようなお話については、まだ問題としては終わっていません。これはこれで来週どこかで続報でも出したいと思っております。

で、この問題となるリワード広告ですが、これ単体では適法であって、別に何も問題ありません。リワード広告とは、街頭で配っているチラシも同然であって、このチラシについているちり紙(価値のあるもの)にあたるのが前回指摘したような「モンスターストライク」のアイテムであったり、現金と等価のAmazonギフトだったりするわけです。要するに、ユーザーが欲しいものをぶら下げて、欲しければこのアプリをダウンロードしてね、というプロモーションをやるわけですね。これがリワード広告の原理です。

しかしながら、このような行為を経てダウンロードされたアプリは、俗に「ブーストがかかる」という言葉で業界では表現され、そのアプリを利用したい本当のユーザーによるダウンロードではなく、おまけである「モンスターストライク」やAmazonギフトなどの褒賞(リワード)が欲しくてダウンロードしているわけです。一回ダウンロードしてそのアプリが起動されたのが確認されれば56円分のamazonギフト出すよ、モンストのオーブあげるよと言われてダウンロードさせる行為は、Appleの"AppStore"やGoogleの"Google Play"においては、ダンロード数によって変動することのあるランキングを不正に操作するものだとして、利用規約上、禁止されています。

デベロッパーは、不正なインストール、レビューや評価に対する報酬やレビューや評価の捏造といった不正な手段やプロダクトに評価を付けたユーザーへのインセンティブの提供などによって、ストア内でのプロダクトの掲載順位を変更しようとしたり、プロダクトの評価やレビューを操作しようとしたりしてはいけません。:https://play.google.com/intl/ALL_jp/about/developer-content-policy.html|
これらのリワード広告活用によるダウンロード数の水増しは無料ランキングの操作にあたるため、利用規約違反であることはAppleやGoogleにもはっきり書いてあります。にもかかわらず、この手のリワード広告を展開し、ランキングを操作したりダウンロード数を水増しする行為は問題であることは言うまでもありません。たとえプラットフォーム側から警告されなくとも、ルールを守って社会的倫理に背かない活動をする必要が企業には求められています。

つまり、リワード広告単体は別に問題ないけど、この仕組みを悪用してダウンロード数を水増しして「100万ダウンロード突破!」とかいってインチキをしたり、ダウンロード数で無料ランキングが決まるやり方で流行ってもいないアプリを上位に押し込んだりするのは問題取引ですよ、ということですね。

今回、取り上げますのは、ユナイテッドという会社です。一般にはイマイチ馴染みのない会社ですが、かねてからこの界隈では「ブースト広告を派手に展開している会社のひとつ」と目され、最近このユナイテッドが運営するアプリ「CocoPPa」というアプリのダウンロード数が3,500万を超えたとかリリースされていました。

ユナイテッド株式会社
ユナイテッド株式会社の上場企業情報

世間で出回っておりますお小遣いアプリ(リワードアプリ)は、パッと見、零細企業がやっている野良アプリのように見えますが、実際には、上場企業であるユナイテッドも含めた元締め企業によって運営されております。登録名称も「abeno co.,ltd.」「Egg.Inc」など、事実上の名無しさん企業で該当するホームページもなく会社登記が見当たらない法人もあります。

例えば、ユナイテッドが運営していると見られる「[無料]稼げるガチャ!こづかいガチャキン」では、「Assist,Inc」という法人名で登録されています。このダミー会社が運営するアプリを調べてみると、意外なことが分かります。リワード広告の卸元となるCAリワード、Appdriver(アドウェイズ)、8cropsから「ブーストをかけたいクライアントからのダウンロードアプリリストと画像」など各種情報がアプリに流れ、アプリ内でリワード額と並んで掲示される仕組みですね。

図にするとこんな感じです。

[[image:image04|left|【図解】アプリの挙動からリワード広告の卸元を特定するぞ大作戦絵巻]]

で、このアプリ群の内容を調べると幾つかのサーバーに巧妙に分割され、匿名性の高いドメイン取得方法(GMOが運営するお名前ドットコムなど)で管理されていることが分かりますが、ある方法で運営者を辿っていきますと、決済管理の仕組みがユナイテッドの管理しているサーバーと連携していることが分かります。何ですかこれは。つついてみると、外からユナイテッドの管理しているであろうと目されるアプリ群がぞろぞろと10個以上出てくるわけで、いったい何だろうと思うわけです。

みてくれえ、じょうじょうがいしゃのりようきやくいはんのさーばーだぁ。とくめいあぷりをおってて、とんでもないものをみつけてしまった。どうしよう。

不審なので、直接ユナイテッドにお勤めの方にも問い合わせをし、おそらく事情を知るであろう方面にも打診をかけたところ、確かにユナイテッドが運営しているお小遣いアプリであることが判明しました。また、社内情報と思しき資料や掲示板の残骸が見つかったり、たぶん先方もここが割れるとは思っていなかったらしく適法に周辺を調べるだけでもいろんなことが分かるわけですけれども、どうもこれらのリワード広告事業の指揮を執っておられたのはユナイテッド株式会社の執行役員でメディアコンテンツ副カンパニー長を務めておられる山下優司さんであることが分かります。善良そうなご尊顔から際どいビジネスにぶっこんでくる山下さんには末永く頑張っていっていただきたいと強く願うところであります。

山下優司さんのツイッターアカウント
山下優司さんのFACEBOOKアカウント

これらの仕組みは業界内でも一般的なシステム構成で、CAリワードにおいても誰が見てもとても良く分かるセールス用の図表がとても優秀でしたのでそのまま掲載してしまうわけですが、これらのお小遣いアプリは多かれ少なかれ同じようなシステムで動いていると見て間違いありません。

[[image:image02|left|【図解】超分かりやすいリワード広告アプリの仕組み。さすが胴元、分かってるゥ!]]

ユナイテッド以外にも、メディア系でお小遣いアプリをやっている上場企業は私が調査しただけでも少なくとも8社65アプリにのぼります。逆に言えば、それだけ儲かるんだということなんでしょう。

ではなぜ、上場企業がこれらのアプリを匿名性の高い方法で、偽装会社による窓口を用意したり、匿名で架空の個人名を利用してAppStoreやGoogle Playで登録しているのでしょうか。

要は「リワード広告を自社名でやったとき、利用規約違反でアプリがBAN(登録削除)されるだけでなくデベロッパー(会社全体)の資格が停止される可能性があるから」(リワード広告会社関係者)で、過去に「実際、Appleに睨まれてデベロッパー登録を削除されてアプリビジネスにならなくなったり、掲載したリワード広告のクライアントごと、リストから削除されたことが過去に何度もあった」(ユナイテッド関係者)ということです。

[[image:image05|left|他のアプリも仕組みはほぼ同じ。卸元が別だと料率が異なり、各社の力関係が垣間見える]]

総合すると、リワード広告を卸している各社も、リワード広告を使ってアフィリエイトサービスと称してお小遣いアプリを匿名でひっそりと提供し利益を確保していた各社も、全部グルであって、利益を上げるためにプラットフォーム会社の利用規約違反を知りながら展開していたことになります。

当然のことながら、これらのリワード広告を卸している会社にも「最近どうよ」という取材メールをお送りしてみたのですが、ほぼ全社がすっとぼけた回答をお寄越し遊ばされる事態となり、私の怒りが有頂天です。それどころか、たいした売上にはなっていなさそうですがGREEリワードにいたってはお送りした質問メールに対してガン無視をお決めになられ、広報・IR部門に回すよう電話でお願いしたのに電話に出ないなどの素敵な対応をされまして、さすがは我らがGREEだなと再認識しました。少なくとも無契約では絶対に外部から分からないような取引IDを名指しで案件と画像を小遣いアプリ側で引っ張ってきてリワード広告を掲載しています。そのことから考えてもGREEリワードがユナイテッドと何の取引もなかったとは考えづらいですし、完全なダミー会社を運営元にしているアプリに対して自社のリワード広告が掲載されていることについてまったく知らなかったということ自体もあり得ないと思うわけです。

だって、自社の取り扱っている広告がどこに掲載されているのか分からないとか、あり得ないと思うんですよ。

[[image:image01|left|システム概要。アプリを匿名化すればバレにくいが、一箇所突破されると芋づるで割れる]]

また、リワード広告会社からの対応の中に「利用規約違反ではない」という回答が含まれていることがあるのですが、ではなぜ、わざわざ匿名でこれらのお小遣いアプリを運用する必要があるのでしょう。それは、過去にもApple、Googleからリワード広告の運用をしていた会社に対してたびたび警告がきたり、リストから削除されたりしてきた経緯があるからで、それを知っていて、リワード広告会社は匿名ででもリワードアプリを展開し小銭を儲けたいと願っているユナイテッド他企業各社に対してせっせとアプリ向けリワード広告を卸し続けているのです。

逆に、あるリワード広告の胴元となっている会社は、配信する広告のタグごとにアプリのデベロッパーIDと、おそらくはオーディエンスデータを確保するためのタグ付きで画像が置いてあります。大丈夫なんでしょうか。これって逆引きしていけばすべての匿名お小遣いアプリの運営者の特定ができちゃうんじゃないのと思う次第であります。といっても私がそれに気づいたのは2月ごろですが…。

それもあって、一連の広報対応については、完全にケツが割れているにもかかわらず各社一様にとぼけた対応を取られたということで、近いうちに各社広報素敵な対応チャンピオンシップ(GIII)でも開催してみたいと思います。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。

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