無縫地帯

ドコモのマーケティングは一体どこへ向いて商売しているのかたまに不思議に思います

NTTドコモがお年寄りを見守る「おらのタブレット」をリリース。その名称から内容までひねった首が360度回りかねないセンスのアレさに驚愕していますが、これはこれで便利そうです。

山本一郎です。ずっと懸案であった親指の皮剥けがひと段落して快適です。

ところで、ドコモという会社はたまに理解不能なマーケティングで人々の度肝を抜くようなことをやらかすわけです。お堅い組織の割にいまいちなセンスのベクトルに予測不能なことをやらかすのは何故なんでしょう。過去には「DoCoMo 2.0」などという秀逸なキャンペーンを展開したこともありまして、これなど中の人にとっては忘れたい黒歴史に違いないと思っていたところ全くそんなことはないようで、依然として同社のサイトにはしっかりと記録が残っておりました。

徹底解剖「DoCoMo 2.0」とは?(NTTドコモ)

ドコモが変わる、ケータイの常識を変える――。
ここでは、話題の「DoCoMo 2.0」について、CMだけでは伝えきれないコンセプトや、ケータイで実現する新しいサービスや機能についてご紹介します。NTTドコモ
改めて今になって見返してみてもなかなか斬新でワクワクしますね。で、このキャンペーンに対する当時の巷の反応もそのまま残っているのがWebの良いところ。例えば以下のようなブログ記事が参考になります。

ドコモ2.0が教えてくれる2つのこと(Web担当者Forum 07/6/6)

ネットで大ブレイクしてから1年が旨味。
詰め込みすぎの効果は散漫。ゴージャスもやり過ぎると裏目に。Web担当者Forum
大失敗!?「ドコモ2.0」(タケシメモ 07/6/3)

このキャンペーンを企画(製作・実行を広告代理店に依頼)した人やGOを出した人は、ドコモ社内とau・ソフトバンクしか見えておらず、ユーザーは蚊帳の外になっているんだろうな、とひしひし感じる。タケシメモ
要するに、あのドコモのキャンペーンは激しくピントが外れていたのではないかということでして、特に後者の記事にある「ユーザーは蚊帳の外」という指摘はなかなかに重たいものがあると感じます。そりゃ受け手の側からすればセンス悪いと感じるのも仕方のないことなんだろうかと感じます。

しかし、こうしたドコモの独り合点でどこに向かって商売したいのかよく分からない悪い癖みたいなものは相変わらず治ってないようでして、またつい最近もギョッとするような名称の新製品を発表しておりました。

ドコモ、地域で高齢者を見守る「おらのタブレット」を提供開始(ITmedia 15/6/1)

NTTドコモは6月1日、高齢者向け見守りソリューション「おらのタブレット」の提供を開始した。全国の法人や地方自治体を対象に、法人営業の販売チャンネルを介して販売する。ITmedia
おらのタブレット……。あのさあ。なんですかこのネーミングは?

いや、東北地方が舞台の人気NHKドラマの中で主人公の若い女性が「おら」というのは、なんとも味があってちょっとばかり微笑ましい印象があると言われればなるほどそういう見方もあるのかと思わなくもありませんが、広く日本全国で高齢者の方々に使っていただこうという趣旨で販売する商品に「おらのタブレット」というのはピントが外れすぎじゃありませんか。

もしかしたらこれは私だけの偏見かもしれませんが、「おら」という語感には特定地方の方言における一人称であるという使い方を除くと、一般的な語感としてあまり好意的なニュアンスが含まれていないのではと危惧します。特にギャグ・コメディーの類では、おらと自称する人物は他者よりも情弱であったりといった設定であるパターンが少なくありません。クレヨンしんちゃんの中でも特異性を演出するために主人公は「おら」と自称していますね。あれはあれでかわいい幼児がモチーフだからある程度許されているのだと思います。そういう意味でも、おらという一人称が普通に使われている地方の方には大変失礼ではありますが、決して普遍的にフラットな印象の言葉ではないと感じるわけです。SNSなどを見てもこのネーミングに疑問を感じている方は皆無ではないようです。

商標権の問題で難しかったのでしょうか。それとも一部で炎上するのも含めての話題性を狙ったものなのか。この名前で日本全国のお年寄り向けに提供しようと決めたドコモという企業のセンスは随分と不思議なものがあると感じます。

やはり、ここは「年寄り向け大きい携帯電話」とか「枯れ葉タブレット」などといった、ストレートなネーミングのほうが良いのではないかと思いましたが、私のセンスもずれているかもしれません。申し訳ございません。