無縫地帯

SIMロック解除制限でドコモの対応が際立ってすっきりしない件

業績が芳しくないNTTドコモですが、SIMロック解除義務化への対応についてすっきりしない内容の方針発表を行っており、なんなんだろうと思います。

山本一郎です。腹を壊して下から出てくるものがすっきりしません。

ところで、ドコモが2014年度の業績発表を行いました。このところ外から見ているとあまり元気のない印象でしたが、改めて数字で見るとそのままの結果になっておりました。

ドコモ、「増益計画」の裏で苦しい"やりくり"(東洋経済 15/4/30)

やはり厳しい決算だった。NTTドコモの2015年3月期(2014年度)決算は営業収益が前期比1.7%減の4兆3833億円、営業利益は22%減の6390億円と減収減益に終わった。新料金プランによる通信収入の減少や割引費用の膨張、そのほかの費用増が要因だ。ドコモはすでに昨年10月、中間決算の発表時に業績予想を従来の7500億円から6300億円に下方修正していた。東洋経済
当然ながら、今期は無駄なコストを削減しつつさらなる収益を上げるための策を積極的に投入していくことが求められるわけですが、そうした事業努力に加えて、総務省からはSIMロック解除義務化といったさらなる高いハードルが科されることになっており、中の人達の苦悩はいかばかりかといったところであります。SIMロック解除義務化にまつわる話はしばらく前にも以下のような記事を書きました。

携帯解約違約金を巡る、総務省とキャリア各社によるバトルの行方(15/4/22)

キャリア側からすればSIMロック解除義務化へ抗うための各施策はユーザーを囲い込むための確信的な意図があるのは商売ということを考えればそれなりに分からなくはありませんが、明らかにユーザーの足下を見たような露骨なやり方を弄すれば、ユーザーもバカではありませんからそれなりに大きな反発が起きる事くらいは覚悟すべきでしょう。日本は平和な国ですからこれで暴動が起きることはまずありえませんが、皆、文句ぐらいは大声で言いたいということです。

同じことをやるにしても、やりようがあるのではないかと思うわけですね。

SIMロックが解除されても誰も幸せになれない(PC Watch 15/4/24)

半年の解除制限期間は、端末の購入代金支払い形態を問わない。つまり、代金を一括で支払っても、分割で支払っても期間は同じだ。まず、ここが納得できない。一括で代金を支払って完全に自分のものになった端末になぜ解除制限期間を設定されるのか。仮に半年未満で別の事業者にMNPしたとしても、契約期間に満たない場合は解約金ペナルティを支払う必要があるし、当然、月々サポートも打ち切られる。だから、代金支払い済みの端末にまで解除制限期間を設けられることに納得がいかない。PC Watch
代金の支払いが完了しドコモを解約した条件の端末に対してまでドコモがSIMロックを主張するのは不自然です。何を根拠にそこまでの権利があるとドコモが考えているのか、いまひとつ良く分からないんですよね。論理的に考えれば、そうした端末をどのように使おうがそれはユーザーの自由のはずですが、ドコモはそうは考えていないようです。

ドコモ加藤社長、SIMロック解除“180日間”は「不正防止」(ケータイWatch 15/4/28)

少ないかもしれないが、一部のユーザーが、不正に入手して他社へ転売する行為が散見される。犯罪というか悪意ある行為を防止したいという観点から必要だと考えていた。ある種、義務付けられたら防止する必要があると。5月1日以降に発売されるものは、全機種SIMロックの解除に変更を加えて対応したい。これまでできる機種、できない機種もあったが、全ての機種で対応する。不正にもあわせて対応する」と述べた。ケータイWatch
こちらの記事をそのまま素直に読むと、ドコモとしてはごく少数ではあるが一部のユーザーがSIMロック解除を悪用しているので、ドコモユーザー全員がその責を負って不便に甘んじてほしい。その代わり、ドコモとしては不正利用ユーザーのSIMロック解除にも差別することなく対応することにしたと弁明しているかのようです。はたして加藤社長本人が本当にそういう意図でこうした発言をしたのか、それとも言葉の選び方が拙かったのかは分かりませんが、不正を働こうと考えているわけではない一般ユーザーからすると全く納得できない論理展開であることは否めません。

それに、SIMロック解除180日間をおいたところで、その転売で利益を上げている人が180日間寝かせたり、違法な業者が抱いていれば、何の歯止めも無く転売できてしまうことになります。さほどの実効性があるかは良く検証する必要があると思うんですよね。

どうしてこんなすっきりしない展開になってしまったのか。ドコモはSIMロック解除に絡んで何か公には明かせないような悪質なトラブルを抱えていたりしたのでしょうか。何か別の事情があるのだとしたら、正直に話してごらんという気持ちになります。

それにしても、このSIMロック解除義務化の一件については、何も語らずうやむやのままで施行日の5月1日を迎えたソフトバンクがさすがです。おそらくは、ドコモやKDDIが真面目に早めの対応をしてユーザーからボコボコ叩かれるのをじっくり観察してから、おもむろに当たり障りの無い施策をドヤ顔で発表するのでしょうね。

気がついたらアリババ集団やチャイナテレコムからの裏口出資がされたりすることのないよう求める次第であります。