無縫地帯

携帯解約違約金を巡る、総務省とキャリア各社によるバトルの行方

総務省が携帯電話の解約ルールの本格的な見直しを議論する会議を新設するなどの動きを見せる一方、キャリア側も違約金とは別の仕掛けを導入しようと余念がない状態です。

山本一郎です。このところ、尿酸値、体脂肪率等の各指標とのバトルに連敗続きです。

ところで、このところ総務省は、昨年発表した「モバイル創生プラン」の下、スマホを中心とした携帯電話市場の環境整備を大胆に行うべく様々な指導を展開しています。

総務省、MVNOや4G通信、SIMロック解除を推進(PC Watch 14/10/31)

総務省は31日、スマートフォンなどのサービスに対し、日本経済の創生と国民負担の軽減を目指した「モバイル創生プラン」を取りまとめ、公表した。PC Watch
同施策でまずはもっとも影響が大きいであろうと考えられるのが、今年の5月から実施されるSIMロック解除の義務化です。これによりドコモ、KDDI、ソフトバンクといった主要キャリア各社は、SIMロックを理由に顧客を囲い込むことがむつかしくなるため、従来よりも厳しい競争を強いられることになることが予想されます。

当然、キャリア側も総務省に言われるがまま黙って従うということはありえるはずもなく、対抗策は色々と考えていることでしょうが、まずは契約期間の縛りを強化すべく解約手数料の値上げをするなどの動きがあるようです。

SIMロック解除義務化にキャリアは囲い込みで対抗か(週アスPLUS 15/4/14)

NTTドコモは一部機種を対象に、2月20日から4月30日まで“端末購入サポート”キャンペーンを展開しています。これは6ヵ月間の継続利用を条件に端末代金を割り引くというもので、短期解約を防ぐ狙いがあるとみられます。

ソフトバンクも同様に、Xperia Z3などの機種について、1ヵ月目で解約すると4万5540 円の解除料が発生する“一括購入割引”を導入しました。週アスPLUS
早速こういう動きを見せるキャリア側に対して、総務省もそのまま放置するつもりはないようです。

携帯、違約金なしで解約総務省が5月から議論へ大手各社は難色必至(産経ニュース 15/4/20)

総務省は20日の有識者会議で、携帯電話の解約ルールの本格的な見直しを議論する会議を新設することを提案し、了承された。2年間の契約期間経過後は、いつでも違約金なしで解約できるようにする案も含め5月から議論を始めるが、契約者流出を懸念する大手携帯電話会社が難色を示すのは必至で、曲折が予想される。産経ニュース
個人的には、さすがに数か月で解約というのは事業者側も大変でしょうから、そういう行為に対してなんらかのペナルティーを設けるのはある程度認めることも致し方ないことかと感じます。その一方で、さすがに2年縛りの後は自由にさせてほしいですし、またそこで契約解除に違約金や手数料が発生するのは勘弁して欲しいと思います。

しかし、キャリア側はそうしたユーザーの意向はただのわがままであり許せないと考えているようですね。総務省の動きがメディアで報じられるやいなや、すかさずカウンターパンチが飛んで来ました。

『二年縛り』無料解約期間が2か月へ、携帯3社が今秋延長。更新月の前月にはメール告知(Engadget日本版 15/4/21)

携帯電話で長期契約のかわりに割引を受けられる一方、途中解約の場合は違約金を課せられる、いわゆる「二年縛り」をめぐって、携帯3社は無料での解約に応じる期間を現在の1か月から2か月に延長すると発表しました。また更新月の前月にはメールで告知します。Engadget日本版
なるほど、今までの無料解約期間を1か月から2か月に大幅に伸ばし、ついでにメールで更新期日を知らせてやるから、ユーザーは随喜の涙を流してキャリア様に大いに感謝しろということのようで、なんとも素晴らしい提案ですね。

さらに、SIMロック解除の具体的な実施方法も一部キャリアで明らかにされましたが、どうも今ひとつユーザーメリットが見えてこない内容になっているようです。

ドコモとKDDI、SIMロック解除はネットから無料で可能に(ITmedia 15/4/22)

ドコモ、KDDIとも、5月1日以降発売の端末には解除制限期間が設定されており、機種購入日から6カ月間はSIMロックを解除できない。また、一部機種はSIMロック解除の対象外だとしている。ITmedia
こうした展開に対して、携帯電話業界の動向に詳しいジャーナリストの石野純也さんはかなり厳しい発言をツイートしておりました。

てか、クーリングオフ導入回避の代わりに飲んだSIMロック解除だったはずなのに、ふたを開けたらクーリングオフは導入されないし、半年間は端末が回線とガッチリ紐づいたままだし、これって何も前と変わってないのでは。。。Junya ISHINO/石野純也
こうしたキャリア側の思惑が滲み出る数々の施策に対して、総務省はどう対応していくのか、両者のバトルの成り行きが今から楽しみであります。

さて、そういえばキャリア絡みの話ということでは、つい最近ソフトバンク傘下に統合されたばかりのワイモバイルがなかなか面白いことをやらかしてくれているようです。

ワイモバイル、「無制限」謳い販売したWi-Fiルーターに、突如「3日間1GB制限」を掛けて炎上。(すまほん 15/4/19)

このルーターは、500円/500MBの通信量追加が何度でも無料で行える「CA対応Pocket WiFi使い放題キャンペーン」が適用できるため、通信が実質的に無制限であることを謳って販売されており、価格.comでも75製品中1位の人気商品となるなど、かなりの高評価を得てきました。

ところが4月以降から突然、3日間の通信量が1GBを超えた場合、通信速度制限が掛かるようになったそうです。価格.comでは製品の評価は急激に低下。星1のレビューが急増。Twitterでも同様の報告が相次ぎ、炎上状態になっています。すまほん
ワイモバイルの「無制限」は「通信を止めない」という意味であることが判明。(すまほん 15/4/21)

ワイモバイルの「高速通信無制限」は、「通信を止めない」という意味であるとのこと。
(中略)
ワイモバイルの基準では、いくら急激に速度低下しても、繋がっているのだから「高速通信無制限使い放題」なのだそうです。
(中略)
LINE@経由で弊サイトに匿名を条件に寄せられた情報によると、昨年305ZTを契約した時、注意事項が羅列された書類には「3日間1GB制限」の注意書きが存在しなかったとのこと。また、ネット上には、305ZTは「3日間1GB制限なし」と明記した家電量販店の店頭ポップが存在したとの情報や、説明書類内にある「3日間1GB制限」の項目についてチェックすることを求められなかったなどの情報が上がっています。すまほん
私もワイモバイルの愛用者ですので、なかなか聞き捨てならない事態が進行しているようでありまして、興味津々です。

これらの話がすべて事実だとすると、もはや詐欺まがいの誇大広告案件でしかないと言われても仕方がありません。消費者庁や総務省は速やかに実態を調査し、もしも問題があるようであれば適切な指導を行っていただきたいものです。

もちろん、このような騒ぎが拡大する前に、ワイモバイルが適切な対応をとってくれるのが一番なのですが。