無縫地帯

ヤフーとNHNジャパンが検索事業で提携した件について

時代は流れるもので、自力での検索エンジンビジネスから撤収したはずのヤフーが、今度はNAVERまとめの興隆もあってNHNジャパンと提携という話が出てきました。興味深いところしきりです。

やまもといちろうです。今日も元気です。

ヤフーとNHNジャパンが検索事業において提携を発表しました。国内ネット事業者最大手と、現在急成長で話題のネット企業の2社による提携ということで、報道メディア各社は一斉にこの件を取り上げました。

ヤフー、ユーザー参加検索LINEのNHNと提携(日本経済新聞 2013/3/28)
ネット検索:ヤフーとNHNジャパン提携NAVERまとめが検索結果に(毎日新聞 2013/3/28)
ヤフーとNHNジャパン、検索分野で提携(ロイター 2013/3/28)
システムと人力を融合させた“ハイブリッド検索”が誕生--ヤフーとNHNが提携(CNET Japan 2013/3/28)

提携の内容については、INTERNET Watchの記事が詳しくまとめていますが、面白いなと感じたのは以下の部分です。

検索の課題解決、カギは「人とシステムの融合」~ヤフーとNHN提携の狙い

これまでの検索の仕組みは、インターネット黎明期のロボット検索を経て、2000年頃には人の手を介したディレクトリサービスによるリンク集に移行。その後、情報量が爆発的に増えたことで人力では整理できなくなり、再びロボット検索の時代を迎えた。NAVERまとめの仕掛け人でもあるNHN Japan執行役員の島村武志氏も、「この次のパラダイムはシステムと人の力の融合」と語る。
ヤフーは日本国内と、それ以外の諸国における運営が異なるため、一概に同じようには語れませんが、元々のヤフーはディレクトリ型検索サービスで世界的に大成功を収めてネット業界の巨人となりました。しかし、その後、Googleの機械検索に負けて、その手法から事実上の撤退戦に近いことをこの数年かけてやってきたわけです。検索エンジンも独自の開発を諦め、日本国内はGoogleのエンジンを、海外はマイクロソフトのBingを採用しました。

ところがここへ来て、NAVERまとめを利用した、機械ではなく人の手を介した検索事業を開始するというのですから、歴史は繰り返すということでしょうか。今回の施策で以前と異なるのは、ヤフーが社内でサーファーを使って情報を収集・整理するのではなく、NAVERまとめという他社サービスを利用するという点です。

NAVERまとめの各投稿は、従来ヤフーのサーファーが一定の社内ルールに則って情報を精査していたものとは異なり、投稿者が各人各様に勝手にやっていますから、中には内容が恣意的に偏ったものや、単なる他コンテンツからの転載、虚偽情報、ステマなどが含まれる可能性もあります。このあたりの問題はしっかりとコントロールしていくという話のようですが、結局はヤフーのサーファーと同じようなシステムが改めて必要になるのではという心配もしてしまいます。まぁ、そんな心配は余計なお世話でしょうが。

両社による発表会は、いまのところUSTREAMの録画で見られます。その中で40分10秒過ぎからの広告に関する質疑応答が興味深いです。

2013/03/28 Yahoo! JAPAN・NHN Japan 共同記者会見(USTREAM: Yahoo!JAPAN PRチャンネル)

これを見ると、NAVERまとめには広告案件が含まれていることを認めています。そして、ヤフーとの提携における検索結果にその広告案件が反映されるかどうかについては、今後検討していくという回答です。NAVERまとめに広告案件が含まれていること自体は、NHNジャパンの広告営業媒体資料を見ればわかることですし、実際、そういう企画案件は「提供:◯◯会社」みたいな表示があるので、わかる人にはわかる仕組みになっていますが、今後は、NHNジャパンとヤフーの両社がタッグを組んでの大型広告企画案件などが発生していくのかもしれません。ちなみに、NAVERまとめの企画広告ではソニーのヘッドホン広告が結構話題となりました。

ソニー ェ…「ヘッドホン女子」企画がゆるすぎるwww(NAVERまとめ)

検索と広告の関係はなかなかに奥の深い話でもあります。そういえば、同じようなタイミングでGoogleが、Googleニュースに関しては報道記事と記事広告が混在するメディアを排除する方向であることを発表しました。

A reminder about promotional and commerce journalism(Google News Blog 2013/3/27)
Google、純粋記事とプロモーションやマーケティング記事が混在するメディアは、Googleニュースのガイドライン違反として排除すると警告(Macお宝鑑定団Blog 2013/3/29)

アフィリエイト、プロモーション、PR記事、マーケティングなどをニュースコンテンツと混在している場合、Googleニュースから全記事の削除、あるいはサイト排除を実行すると警告
しかし、このルールを日本のメディアでも厳密に適用してしまうと、ほとんどのメディアがアウトになってしまうような気がするのですが……。ステマだなんだという話が出るとFC2ほか「ユーザーが勝手に利用している」サイトもいかんという話になってしまいます。また、ブログでのプロモーションをメディアビジネスの根幹に位置づけていてほぼ完全に終わるサイバーエージェントという会社もあるようですが、業績への悪影響が心配です。株価は大丈夫なのかなあ。