無縫地帯

手を染めるのは簡単でも足を洗うのがむつかしいネットサービスの罠

もう使わなくなったウェブサービスを退会しようにも、退会するまでに面倒くさいステップを踏まなければならない業者は沢山あるようです。

山本一郎です。手が鼻水に染まっています。

ところで、手を染めるのは簡単でも足を洗うのがむつかしいものと言えば、まず想像するのは悪事であります。一旦悪の道にはまってしまうと、その世界から縁を切るには大変な手間と努力が求められることも少なくありません。

で、それと似たようなものが実はネットサービスです。別にネットサービス自体が悪というつもりはありませんが、一旦入会するとやめたいと思ってもなかなかむつかしい。もちろん、やめるために半殺しの目に遭うというようなことはありませんが、しかし、単純に退会するための手間が尋常じゃないことは多々あります。

たとえば、ネットユーザーでFacebookを利用している方は多いでしょうが、Facebookの退会方法を知っている人はあまりいないかもしれません。いざ辞めようとするとかなり面倒です。おそらく故意にそうなっているのでしょうが、完璧にアカウントを抹消するための方法はFacebookの中ではすぐに分かるような形では説明されていません。おかげで、「Facebook 退会」と検索すると、辞め方を紹介する記事がゾロゾロとヒットします。まあ、退会しようと思う人はそれほど多くないでしょうが、後学のため知っておいても損はしないでしょう。以下の記事などが参考になりそうです。

これでアカウント完全削除!「Facebook(フェイスブック)」の退会方法(nanapi 15/2/13)

興味深いことに、直感的な操作からはアカウントを抹消することがまず出来ない仕組みになっています。アカウント関連の操作をするために、「ヘルプ>ヘルプセンターを見る」といった深い階層を経ることに思いつく人はまずいないでしょう。さらに、あまり読みたくないような冗長なヘルプの文中にある「お知らせください」というリンクをクリックしないとアカウント抹消作業へ至れないというのは、ちょっとしたいじめです。その後もパスワード入力を何度も求められ、何度も確認のボタンを押すことでようやく作業を終了しても、追い打ちをかけるように実際のアカウント削除までは14日間の留保期間が設けられているという、思い切りウザイ仕様です。それだけ辞めてほしくないんでしょうね。

しかし、これだけ面倒でもアカウントを削除できるだけFacebookはマシなほうでして、世の中には一度入ったら辞められないというネットサービスも存在するようです。

女子中高生が熱狂する「ミックスチャンネル」(東洋経済 15/3/10)

スマートフォンで楽しむ10秒動画アプリ、「ミックスチャンネル」が今、中高生を中心に爆発的に伸びている。2013年12月にドーナツ社(東京・渋谷)がリリース。立ち上げからわずか1年間で、月間動画再生数は4億1000万回を突破し、今や国内の動画コミュニティアプリとしては最大級だ。東洋経済
若者の間では「ミクチャ」と略して呼ばれて大人気の動画共有サービスだそうですが、なんとこのミクチャのアカウントは一度作ってしまうと、今のところ削除することが出来ない仕様であることが報告されておりました。

ミックスチャンネルのアカウントの消し方について(消せない)(情報科学屋さんを目指す人のメモ 15/4/12)

ミックスチャンネルをやめたいときや、アカウントを作り直したいときに、どうやってアカウントを削除すればいいのか、を紹介します、と言いたいところなのですが、実はミックスチャンネルには、未だにアカウントを削除する機能がありません。情報科学屋さんを目指す人のメモ
システム運営上の問題なのかもしれませんが、データは消せてもアカウントは抹消できないというのはどうもすっきりしません。いろいろ業者側の考えはあるのでしょうが、もう少しどうにかならないのでしょうか。ユーザー本人が使わなくなったままアカウントだけが残ってしまう状況はセキュリティ的にも懸念されるものがあります。先ほどFacebookのアカウントを抹消する方法が分かりにくいという話を書きましたが、その結果ユーザー本人は削除したつもりのアカウントが生きていて悪用されるという事例もあります。

大昔に退会したはずの Facebook アカウントがレイバン的なのに乗っ取られた話(おともだちティータイム 15/4/10)

あの例のレイバンスパムに悪用されてしまったのですね。最近は私ですらすっかりレイバン商品の最新事情に詳しくなってしまいました。詳細は是非リンク先のブログを読んでいただきたいのですが、悪用されているアカウントを止めるためにアクセスしようとしたら「アカウント復活させたいなら政府発行の証明書を送ってこい」とFacebookから求められるあたり、建前上これは致し方無いことなのかもしれませんが、簡単には退会できないのと同様にまた面倒なことになっています。

ブログ記事を書かれている方はそういう要求にも真面目に対応されてスパムアカウントを無事停止されたようですが、ここで面倒になって諦めてしまう人も少なくないかもしれません。こうして放置された多数の幽霊アカウントがスパムなどの犯罪行為に利用されるとしたら問題です。アカウントを公式に削除することが出来ない状態のミックスチャンネルなどはそうした良からぬ行為を考える輩から狙われる可能性が高いとも言えそうです。

ネットサービスで会員アカウント制を提供する事業者にはこうした問題への対策をしっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、ユーザーの方も気軽にアカウント登録する事前に、辞めたいときにはちゃんと辞められるのかどうかといったことを確認するのが安全だと思います。まあ、辞める時のことまで考えて登録する人はほとんどいないのでしょうけれど。

退会しにくいサービスの代名詞といえば、我らがGREEでありました。その後どうなったのか、最近はあまりよく分からなくなってしまいましたが、きっとどこか遠くで楽しくやっているのでしょう。「GREE 退会」の素敵な検索結果を見るに、あまり情報が新しくなってないので、きっと改善したに違いない。そう思いつつ、筆をおきたいと思います。筆って何だよ。