三菱製テレビが教えてくれたIoTの抱える問題点
三菱製や、日立製、船井製のテレビで、メーカーのものではない第三者が流したデータが原因でテレビの挙動がおかしくなる問題が勃発しており、夢広がるIoT()時代にこんな状況で大丈夫かと思う次第です。
山本一郎です。最近飛行機よりも新幹線に乗る機会が増えて、縦揺れが無いのが逆に違和感を覚えるようになってきました。
ところで、春のうららかな週末、テレビ番組を楽しもうと思った多くの人達を襲った謎の画面消失。何も操作していないのに数分ごとに再起動と暗転が繰り返されたそうですが、どうやら原因は配信されたデータに何らかの不具合があったとのこと。
三菱製テレビ REAL 全国的トラブル、突如暗転繰り返す。原因特定復旧「当社でないデータ」影響(Engadget日本版 15/3/29)
と、当社でないデータ??
三菱電機は、3月29日、三菱製テレビ「REAL」において、突如再起動と暗転を繰り返す不具合が起きたことを明らかにしました。ここで気になるのは、なぜ不具合を発生させるような第三者のデータがオンエアダウンロード放送に含まれてしまったのかということで、そのあたりの詳しい状況説明が待たれるところです。
(中略)
広報部では「オンエアダウンロード放送に当社のものではないデータが影響した」と話しており、三菱電機側が流したわけではないデータがなんらかの関係で影響を及ぼし、不具合にいたったとしています。Engadget日本版
オンエアダウンロード放送は、いわゆる一般的なインターネット接続を介してユーザー自身が任意にデータをダウンロードする行為とは事情が異なります。提供されるデータはメーカー側なり放送局側なりがしっかりとコントロールしていることが前提であり、そこで提供されるデータは自動的にテレビにインストールされます。もし仮に、そこで悪意のあるデータが配信されたとしても、基本的にユーザー側がそれを拒否することはできません。
ある意味で、今回の件はIoTが普及した際にどういう不具合が起こり得るかということを分かりやすく示してくれた好例ととらえるべきでしょう。IoTな製品が通信を介して不正なデータを受け取り、それによって機能に支障が発生しても、その製品を利用しているエンドユーザー側では問題を自ら解消することはできず、ただひたすらメーカー側が対応してくるまで待つしかありません。そして恐ろしいのは、こうした不具合が個別の製品で単独に起きるだけであれば機器の故障ということであり従来もあり得た話ですが、今回は遠隔から一斉にデータが配信されることで全国において同時多発的に不具合が発生したという点にあります。もし、これがテレビではなく、人の生命に直接関わる機器であったとしたらどうなっていたことでしょうか。あまり考えたくはありませんが、今後そうした事態は起こり得るものとして覚悟しておく必要がありそうです。
なお、今回の不具合は全国で100万台をはるかに上回る規模で影響があったと推計されています。
三菱「REAL」に再起動繰り返す不具合最大162万台に影響(ITmedia 15/3/30)
また、上記の数字は三菱製だけを集計したものと考えられますが、実際には三菱製以外にも日立製や船井製のテレビで同様な不具合が発生していた模様です。
三菱・日立・フナイのテレビが突然消える謎の不具合発生自動アップデートが原因?(ゴゴ通信 15/3/29)
該当メーカーは当初は三菱の『REAL』だけと報道されていたが、後に日立やフナイの液晶テレビも同じ症状が起きていることが確認された。ゴゴ通信なお、三菱は同社の総合トップページ]からPDF形式で「お詫び」を発表している---のですが、これがリンクされてるのはこの記事を書いている時点では、[http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ctv/ テレビの製品ページからは一切リンクされていません---(追記:改めて確認したところテレビ製品ページのトップからもお知らせでPDFへのリンクが追加されておりました)。
3月29日発生の三菱電機製液晶テレビ受信障害についてのお詫び(三菱電機 15/3/29)
---エンドユーザーの感覚からすれば、もし自分のテレビに不具合があればテレビの製品ページで状況を調べようとするのが普通だと思うのですが、テレビの製品ページでは上記お詫びへのリンクが無いばかりか、これまでにどういう不具合が発生したかというような案内も出ていません。---オンエアダウンロード放送で生じた不具合は、そのままオンエアダウンロード放送で直ぐに対応したから、ユーザーに要らぬ不安を覚えさせるような情報は出来るだけ見えないようにするということなのでしょうか。そういうやり方は却ってユーザーに不安を覚えさせるような気がしなくもありません。本来であれば、どういう不具合がどのような原因で生じ、それに対してどう対処したかを分かりやすく説明し記録しておくべきであり、そういう情報公開をしているメーカーの方がずっと信頼感は増すと感じる次第です。
以前、日経テクノロジーオンラインで川口盛之助さんとIoTの微妙さ加減について語った話がいきなり表出していて「おいおい」と思うわけでありますが…。
自動車メーカーの敵は、グーグルではない 川口盛之助×山本一郎の「メガトレンド対談」(その6)
そして、4月3日現在、いまなおこれといった続報は無いように思います。大丈夫なのでしょうか。気がついたら中身がTizenになっていたとかいうレアな事例でないことを祈るばかりです。