ビッグデータという、99%の事業者には効果の無い話
ローソンのコミュニケーション戦略が話題になっていますが、ビッグデータを使った顧客情報分析で売り上げを大幅に改善できる業者なんてそんなにいないですよ。
やまもといちろうです。
ローソンのCRM戦略に関する内容が界隈でバズっており、にわかに盛り上がっておりますが、あまりにも馬鹿馬鹿しいので言及しておきます。
1割のヘビーユーザーが6割の売上を支える現実5,200万人を超えるPonta会員データを活かすローソンのCRM戦略
ローソン、ビッグデータ分析で「街」をもっと幸せに
もちろん、ローソンのここのところの健闘は目を見張るものがありますし、その旗振り役となっている玉塚元一氏のリーダーシップやグループ全体のCEOを務める新浪剛史社長の先見性は素晴らしいものがあるのは事実です。玉塚氏はローソンの情報部門の意見を良く聞いて、非常に効果的な施策を立て続けに打ち、この界隈における優れた先行事例となりつつあるのは間違いありません。市場からの期待が集まっていることは、ある意味で新浪体制の信任の証ともいえるでしょう。
その賞賛と裏返しに、現実で起きていることは「あれだけのデータを活用しておきながら、たいしたことが分かっていない。あるいは発表できるレベルに達していない」という話なんですよね。なんですか、その微妙すぎるリサーチ結果は。約5,200万人の会員データを駆使して「1割の客が6割の売り上げを上げる」とか「徒歩5分以内、距離にして半径354メートルの客層にリーチする作戦だ」など、そんなもの当たり前じゃないですか。これでどうやって商品開発に繋げているんです?
ビッグデータだhadoopだ関係なく、パネル使ってサンプル調査するだけで分かる話でしょう。
裏側にはいっぱい仕掛けはあるんだろうけど、そのぐらいのことは小売ならどこでもやっている話ですね…。これをCOOがドヤ顔で発表してしまうのはマズいんじゃないでしょうか。
平成25年2月期 第3四半期決算短信 四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
この辺見ていると、2010年ぐらいから取り組んできた事業が3年ぐらいかけて育ってきて収益に貢献してきているのは分かります。現場では相応に頑張って新しい事業や仕組みに取り組んできたのでしょう。直営店舗が増えてきて、仕入れや配送の効率化が進んだので全体収益が改善したのであって、客単価の改善が見られないあたりからは、どの辺にビッグデータによるCRM戦略の成果を見て取るべきなのか、判断に悩むわけですね。
第38期中間報告書
そういうのも含めて、CRM戦略に取り組んでデータを活用してますよー、というローソンのPR戦術があるのだ、ということであれば話は分かりますが、むしろデータを使って仕入れが劇的に改善しているとか、ロジスティクスの効率化が進んで販売管理費が増えても在庫が圧縮され収益確保できるようになっているのだとか、そっちのほうをローソンは言うべきなんじゃないでしょうか。
CRMに関しては素人がカジュアルに眺めてイメージを良くする方面の話というよりは、仕入れの圧縮や配送の効率化といったプロが良し悪しを見極めて収益性の改善にどれだけ寄与できたのかというあたりが重要な界隈なので、当たり前のことを現場の人たちが頑張って当たり前にやってますという話をプレゼンする必要はないんじゃないかと思います。
一方で、一般論ですがこの手のビッグデータについてはわざわざ何千万の会員から項目抽出したサンプル引っ張ってきて検証するというのは効率が悪いですし、普通の小売をやっている人たちからすると高嶺の花過ぎる世界で無関係なんじゃないかと思います。そこから出てきた戦略に、これからあなた方は振り回される世の中になりますよ、というぐらいのことしか意味を持たない感じがするのです。むしろ、スモールデータの活用を効果的に進めることで地域の零細商店でも明るい仕入れができたり商品開発が実現したりってことのほうが幸せだと思うんですけどね。
まあ、ローソンの情シスの人たちは幸せな環境が実現できてていいなあ、といったところでしょうか。