Apple Watchで少し残念に思った件
注目された「Apple Watch」が発表されましたが、内容を見るにまあこんな感じなのかという内容で、これといって凄過ぎず駄目過ぎずというあたりが絶妙でありました。
山本一郎です。時計は心の中にあるタイプです。
ところで、世界中の注目を集めたと言っても過言ではないであろうApple Watchの価格が無事発表されたわけですが、一部で予想されていたように200万円を越える高級モデルもしっかりと用意されていました。
Apple Watchの最高級モデルは218万円(税別)!全ラインアップの価格が判明(週アスPLUS 15/3/10)
本当のガジェット好きな富裕層からすれば安すぎて高級腕時計と名乗るのもおこがましいような代物ですが、庶民からすれば十分に高すぎる値段設定でもあります。一体どのような層がコアターゲットになるのかやや不明な部分もありますが、やはり中国ではそれなりに人気が出るのではないでしょうか。
アップルに憧れる中国市場、新製品ウオッチの売り上げに期待(ブルームバーグ 15/3/11)
複数あるアップル・ウオッチのモデルの一つはゴールドだ。中国で高級品を求める消費者にアピールしている。日本でもIPOで一儲けしたようなスマートな方々がサクッと18金のモデルをお買い上げして、ブログやTwitterあたりで自慢してくれそうな予感がします。堀江貴文とか秒速で一億円稼ぐ人あたりが「買いました」とか名乗りを上げると安っぽさから周囲がドン引きして目が覚めるのではないかと期待する次第です。
(中略)
チャイナ・マーケット・リサーチのマネジングディレクター、ショーン・ライン氏(上海在勤)はアップル・ウオッチについて、「中国で大ヒットするだろう」と述べ、「憧れのブランドで、値段もそれほど高くない」と続けた。ブルームバーグ
一方で、本当にお洒落な人達からの反応はイマイチのようでもあります。
アングル:「アップルウォッチ」、ファッション業界には響かず(ロイター 15/3/10)
シャネルやジバンシー、エルメスなどハイファッションブランドの関係者らは、アップルウォッチはガジェット(電子機器)であり、今季のマストアイテムとなるアクセサリーではないと口をそろえる。この辺がイマイチよく分からないんですが、デザイン的にいけてないって話なんでしょうか。
(中略)
パリの百貨店プランタンのセールス担当も、この意見に同調する。ロレックスなどの高級時計を扱うプランタンだが、最上位モデルは1万ドル以上するアップルウォッチを販売する計画はないという。「理解しなくてはならないのは、こちらは高級ブランドで、(アップルウォッチは)テクノロジーだということだ」と語った。ロイター
プランタンは却下したApple Watchですが、日本の百貨店である伊勢丹は取り扱いを始めるようです。お国柄ということもあるでしょうが、さてどちらの判断が商売として成功するのか成り行きが楽しみですね。
ファッション重視か。Apple Watch、伊勢丹やDover Street Marketでも取扱い(ギズモード・ジャパン 15/3/10)
個人的には、Apple Watchがヘルスケア機能の搭載を見送ったのではないかという憶測報道があり、それが今回の発表で正しかったことが判明したことが残念だなと見ています。
WSJ:Apple Watchは、当初計画されていた高機能健康センサーの多くが見送られた(Macお宝鑑定団Blog[羅針盤] 15/2/17)
WSJが、Apple Watchに詳しい幹部からの情報として、4年前から開発が始まり、血圧、心拍数、活動量、ストレスレベルを測定出来るリング型ヘルスモニターデバイスが想定されたが、仕組みが複雑過ぎたり、上手く動かなかったりしたため、搭載される予定だった多くの機能は見送られたようだと伝えています。Macお宝鑑定団Blog[羅針盤]Appleの当初の目論み通りの動作が出来なかったことや、米国食品医薬品局等の規制当局との調整がむつかしかったというのもあるようでこれは致し方なかったのでしょう。また下手にインチキな健康機能を搭載しなかったあたりにAppleなりの矜持を示したということなのかもしれません。
で、面白いのはAppleも転んでもただでは起きないといいますか、おそらくはApple Watchでの利用を念頭にこれまでやってきたであろうヘルスケア関連の研究・開発成果をしっかりとアピールしている点です。
アップル、医療研究を助けるResearchKit発表。iPhoneユーザーからデータ取得、研究機関に直接送信(Engadget日本版 15/3/10)
アップルは医学研究のためのフレームワークとして、iPhoneで医療データを取得し、大学や病院などの研究機関に送信する ResearchKit を発表しました。当初はApple Watchを身につけているだけでこうした検査機能を簡単に利用できることを目指したのでしょうが、さすがにまだそこまでのセンサー機能を腕時計サイズの中に収めるのは無理があったのではないかと想像します。
ResearchKit は iPhone や iPod touch内蔵の加速度計、マイク、ジャイロスコープ、GPSなどを利用した医療研究支援目的のフレームワーク。
(中略)
疾患ごとに用意されたアプリの出す指示に従って簡単な運動をしたり、質問に答えたりすることで、データの収集を行います。発表時点で用意されているアプリは喘息、乳がん、循環器疾患、糖尿病、パーキンソン病の5つ。アプリが取得したデータは、それぞれの疾病に関する研究に役立てられます。Engadget日本版
なお、AppleはこのResearchKitをオープンソースで提供していく意向とありますし、またプライバシーについても十分に配慮しているとのことで、今後実用化が進むと面白いことになるのかもしれません。
iOSデヴァイスで健康管理できる「ResearchKit」は研究にも役立つ(WIRED.jp 15/3/10)
ResearchKitではデータは匿名化される。また、オプトイン方式のため、ユーザーは「(医療データを)共有するかどうか、どのように共有するかを選択できる。アップルがデータを見ることはできない」という。WIRED.jpどこかのDNA解析サービスに較べれば良心的に見えます。あまり過剰な期待はせずに今後の成り行きを見守りたいと思います。