無縫地帯

スマホを巡る問題は、メーカーもキャリアもやりにくい相手とはビジネスしたくないよねという話のようです

率直な取材で評判の石川温さんの記事を取り上げつつ、ユーザーニーズよりもまずは「土管側」キャリアとのコンタクトを強めていくべき、という身も蓋もない作戦をサムスンが取っている話が興味深いです。

やまもといちろうです。私はやりやすい相手です。

ITジャーナリストの石川温氏が、ある意味「すっぱ抜き」にも近いようなノリで、かなり興味深い記事を書かれていました。

話題の“新OS”は「Androidと何が違うのか、さっぱり分からない」(日経ビジネスオンライン 2013/3/26)

「Androidとは何が違うんでしょうか。お客様が見たときに何が違うのが、僕にはさっぱり分からない…」

こう語るのは、某日本メーカー関係者。「『Firefox OS』や『Tizen』についてどう思うか」と質問したときの本音だ。
記事の主旨は、最近なにかと話題になるスマホ向け新OSの「Tizen」や「Firefox OS」について、業界関係者の言葉を引用しながら、その内実をざっくばらんに描こうというものです。記事全体としては、多分に石川氏個人の思いが強く出ているようですから割り引いて読む必要があるとは感じつつも、たとえば、下記にあるようなサムスン電子幹部とのやりとりには、なんとも苦笑せずにはいられないものがあります。やや長いですがそのまま引用します。

では、肝心の「ユーザーがTizenを選ぶメリットはあるのか」と突っ込むと、こんな答えが返ってきた。

「ユーザーにとって、OSは関係ない。キャリアがAndroidやiPhoneを採用しつづけていれば、“土管屋”になっていくのは明白だ。Tizenというキャリアのためのプラットフォームを構築することで、キャリアとして独自サービスも展開しやすくなり、いずれユーザーの利益につながるのではないか」

ユーザーにOSは関係ない…その通りかもしれないが、まずはキャリアの都合を最優先というわけだ。やはり今の段階では、ユーザーが置き去りにされている感が強い。
サムスンの中の人もずいぶん正直に答えたものです(本当にそう言ったのだとすれば)。以前から企業分析などで言われてきたことですが、サムスンは家電事業のグローバル展開において、各国現地における需要を洗い出し、それに合致した製品の製造販売を徹底することで、今の世界市場における有利な地位を築いたとされています。

有望市場で現地に溶け込む韓国系企業「アグレッシブすぎて嫌だ」とボヤく声も(SankeiBiz 2013/1/26)
日本企業には真の国際化が必須、サムスンに学ぶ新興国開拓の勘所(ITpro 2010/10/5)

つまり、サムスンが今回は「スマホ市場」というバーチャルな巨大新興市場を調べてみたら、実は需要のポイントは、エンドユーザーにではなくキャリアにあるという答えを見つけたということでしょう。

キャリアが採用しなければ、どんなにエンドユーザーがそれを望んでも使えないことは、現在ドコモでiPhoneが使えない現実を考えればとてもわかりやすい話です。つまるところ、ドコモとサムスンのスマホビジネスに対する思惑は、かなりの部分で合致しているのではないかと妄想してしまいます。

あとは、これもたまたま同じタイミングで出てきた話ですが、サムスンにとって、Androidはお付き合いしにくい相手だったようです。

サムスン製品責任者「”Androidの父”はやりにくい人物だった」(ガジェット速報 2013/3/25)

Appleも当然お付き合いが面倒な相手でしょうし、こういうことが重なれば、メーカーもキャリアも、自分達がやりやすい相手とお互いに組んでビジネスしようじゃないかという話になるのは、もっともなことなのかもしれません。