無縫地帯

ドコモもソニーもモバイル業界の転換期で事業構築に悩んでおられるようですね

ドコモの決算が微妙であったり、ソニーが微妙な事業に進出するなど、全体的に明暗がはっきり見えている情報通信業界ですが、試行錯誤しながら見通しを立てる難作業をしている間はなかなか業績が大変なようです。

山本一郎です。裏があるほど奥行きのある人間になりたいです。

ところで、日経がドコモの経営不振を報道しておりました。

ドコモ、4~12月営業益19%減新料金プラン重荷(日本経済新聞 15/1/27)

NTTドコモの2014年4~12月期の連結業績(米国会計基準)は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比19%減の5600億円前後になったようだ。国内通話定額を柱とする新料金プランによる減収が響いた。
不調の要因としては昨年6月に導入された新料金プランが挙げられています。ただ、この見方に対して異議を唱える論考もあります。

ドコモの減益は新プラン"だけ"が原因か?(ふーてんのiPad 15/1/27)

第3四半期の決算でもわかるように業績は改善していません。やはりバケツに大きな穴が空いているのでしょう。その大きな穴はやはりMVNOではないでしょうか。利用料金の少ないユーザーの一部はドコモの新プランではなく、MVNOの格安プランに乗り換えていると考えます。
(中略)
これはドコモだけの問題ではありません。MVNOの知名度がさらに上がれば、auやソフトバンクも競争に直面することになり、収益面でマイナスの影響を受けることは間違いなく、なんらかの対抗策が必要になるでしょう。ふーてんのiPad
なるほど、料金格安が売りのMVNOがドコモをはじめとした大手キャリアの業績に影響を及ぼす可能性があるということですね。この辺りのことについては以下のような興味深い話もあります。

総務省の中の人「ドコモの純増のうち、4割はMVNOの契約分。KDDIとしてもドコモのMVNOに行くよりは自社のMVNOを使ってもらった方がまだいい」石川 温
ITジャーナリストである石川温さんのツイートですので疑う必要はないと思われますが、しかしながら総務省の中の人がどういう立場でどういうコンテクストにおいて語ったのかはよく分かりません。しかし、ドコモの純増を大きく支えるほどにMVNO需要は大きいという事実があることは間違いないと解釈して良いと思われます。

おそらく、情報通信関連の市場は、みなが承知の通り持続的な成長から飽和、そして消費者の選択の結果としての適切な規模への収縮、調整局面に入ったよ、ということなのでありましょう。

こうした状況であれば、さらにMVNOに参入してくる事業者は増えそうなんですが、今のところ「MVNO=格安スマホ」という公式が成り立つようでして、また新たな伏兵が現れる気配です。

ソニー、格安スマホに参入検討イオンで割安のエクスペリア旧モデル販売(SankeiBiz 15/1/27)

ソニーが格安スマートフォン分野への参入を検討していることが26日、分かった。流通大手のイオンと組み、早ければ今春に発売する方向だ。
(中略)
ソニーは「エクスペリア」シリーズの旧モデルを、イオンの各店舗で割安に販売する方向で最終調整している。料金は端末代の分割払いと通信費を合わせて月額3000円程度。端末価格は最新モデルの半額程度に当たる3万円台を想定している。SankeiBiz
この記事を読んで旧モデルに3万円という価格設定はどうなのだろうと感じたのですが、やはり思うことは皆同じようで、ITジャーナリストの石野純也さんがかなり手厳しいツイートをしておりました。

しかし、あれがホントだったらソニー、ブレまくりだし、型落ちでなんとかなると思ってたらミッドレンジをナメてるよなぁ。そんなんだから、ミッドレンジ以下で失敗したのに。Junya ISHINO/石野純也
去年売ってた売れ残りですって分かって、誰がそこに3万出すのよって話。だったら新しいZenFone買うよね…。Junya ISHINO/石野純也
ある意味で、昨今の転換期真っ只中のソニーに対して「ブレるな」というのは薄毛の人にハゲるなと言うようなもので、いつまで転換してるんだという話以外は批判無用なんじゃないかとも感じるんですけどね。

古いAndroidスマホというのは、単にハード面の性能が最新モデルよりも劣るということ以上に、古いOSの抱えるセキュリティ的な不備への対応策が今後Googleやメーカーからちゃんと提供されるのかどうか分からないという不安があります。そうした点も承知で古いスマホを購入するというのであれば、いわゆる「自己責任」の範疇なのかもしれませんが、実際にはセキュリティのことなどよく分からないITリテラシーの低いユーザーが手を出しがちな現実もあります。その辺りの問題点については過去にも拙ブログで記事を書いていますが、全く状況は改善されないままに感じます。

格安スマホがシニア層に人気だそうですが大丈夫なんでしょうか(14/5/1)
通信事業者以外も格安スマホ市場へ参入する新しい時代の夜明け(14/8/24)

最新OSを搭載しセキュリティ対策も万全な格安モデルが流通するのであれば何も危惧しないのですが、売れ残りの在庫整理であればサポート面もそれなりのものしか期待できずです。もっとも、ここでソニーが頑張って古いモデルでもセキュリティアップデートを完璧にこなしてくれるというのであれば、それは素晴らしいので頑張っていただきたいところですが。

いずれにせよ、市場環境が変化するにおいては、いろんな事業の見直しや収益の悪化を経て、合理的な投資を行っていかなければならないわけですから、ドコモもソニーも前を見据えてしっかり考え頑張って欲しいと願う次第であります。