無縫地帯

Appleが日本に研究施設を作るらしい件について

Appleが日本市場での浸透を図ろうということで、横浜に新たな研究施設を建設するという発表があり、波紋が広がっておりました。これはこれで、素敵なことですけどね。

山本一郎です。最近は酒を飲んでもりんごのような美しい赤さにならなくなってきました。年は取りたくないものです。

ところで、安倍首相が衆議院選挙へ向けた街頭演説の中、米Appleの宣伝とも取られるような発言をして話題を振りまいておりました。

アップル、日本に開発拠点アジア最大級首相が言及(産経ニュース 14/12/9)

米IT大手のアップルが、アジアで最大級の研究開発拠点を日本国内に設けることが9日、分かった。安倍晋三首相がこの日、さいたま市内での街頭演説で、海外から日本への投資が拡大している一例として言及した。産経ニュース
首相がこうした発言をした意図としては、有力な海外企業が日本に進出し投資してくれることで日本の経済状況は明るいということを示したかったようですが、そうした思惑にほとんどのメディアは乗ってくれず、どちらかと言えばなぜAppleが日本でといった点に関心が集中してしまい、選挙戦という文脈での効果を考えるとあまり意味のある話題ではなかったかもしれません。

個人的にはそういう話を表でしちゃう首相のお茶目加減は嫌いじゃないんですけどね。

それはともかく、このAppleが日本に開発拠点を設けるという話は、あっと言う間に世界中のメディアに注目されることとなりました。興味深いのは米Wall Street Journalの記事でしょうか。

アップル、日本に研究拠点を開設(WSJ 14/12/10)

日本語版記事は残念ながら有料会員向けの限定公開ですが、原文は今のところ全文を読むことができるようで、Appleも首相の発言を受けて公式に日本で研究施設を作ることは認めています。しかしながら、一部国内メディアが「アップルが米国以外に研究開発拠点を作るのは初めて」(読売新聞)と報じているのは誤りのようです。

Apple to Open New Research Site in Japan(WSJ 14/12/10)

Though Abe described the planned Apple site as ”among the largest in Asia,” the company already operates research and development centers elsewhere in Asia, including China and Taiwan. It has several large research facilities in Israel and has reportedly been considering sites in Europe.WSJ
すでに中国本土や台湾にはAppleの研究施設があるほか、イスラエルには大規模施設が複数稼働しており、欧州でも同様な展開が行われているようだとあります。こうしてみると、これまで優良顧客を抱える大事な日本市場であったのに専門の開発部隊が存在しなかった日本のユーザー向けに、ようやくそれなりの力を入れるつもりになったのかという穿った見方も出来なくはありません。

なぜ今さらでAppleがこうした動きをしたのかということでは、以下のような論考がブログに公開されていました。複数のポイントを突いていてなるほどと頷かされます。

Appleが日本に研究開発拠点を置いたのってなんでだろうね。というのをモヤっと考えてみた(かもめのはとば Re:[2]14/12/9)

色々なケースをもやもや考えてきましたが、ほぼフィーチャーフォンから各種の事例を積み上げてきた日本市場からは持って行けるものが多々あるのではないか?という点に尽きるのではないかと思います。かもめのはとば Re:[2]
どこまで本当かは知りませんが、iPhoneのエコシステムを開発する際にはドコモのiモードが参考にされたという噂もありますから、そういう点は可能性としてありそうです。まあ、あとは日本はなんだかんだ言って、他国に較べれば企業秘密のリークが少ないというセキュリティの良さなどは評価されているのかもしれないですね。社会全体が疲弊してますます世知辛い方向になりつつある昨今ですが、今後もそういう美点が日本から無くならないことを祈るばかりです。

ガラパゴス万歳ということで。ひとつ。