アドテク企業の中の人が「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」と宣っていたようで素敵です
CCCが新たな店舗購買データ活用のサービスを開始し、その提携先であるマイクロアドが地味な記事を出していたので取り上げてみました。
CCCが実店舗の購買者データを利用して広告配信を開始すると発表しておりました。
マイクロアド、CCCの店舗購買データを活用して広告配信へ(CNET Japan 14/12/4)
CCCとCCCマーケティングが保有する実店舗の購買から推計した志向性データや、ライフスタイルデータなどを「MicroAd BLADE」上で活用することで、これまでのウェブ行動データだけでは実現できなかったカテゴリを生成し、プライバシーに配慮した上で広告配信できるようになるとしている。遂に来るべきものが来たなという感じではありますが、今回の施策の勘どころは「プライバシーに配慮した上で広告配信できる」という錦の御旗を振りかざすことで、いつも五月蠅いプライバシーフリークの追求も適当にあしらえると考えたあたりではないでしょうか。低減データ云々の話も盛り上がっておりますので、そういった方面に未来を見出したい気持ちは分かります。
(中略)
実店舗の購買から推計した志向性データとウェブの行動データを掛け合わせた配信が可能になるほか、広告主や代理店の要望に基づいた新たなカテゴリの生成にも取り組んでいくという。これにより、「コーヒーを嗜好している30代ビジネスマン」「自動車を所有または利用している40代男性」などターゲットを選定して広告配信できるようになるとしている。CNET Japan
もっとも、エンドユーザーの立場からすれば、コーヒーを買いに出かけたらなぜかコーヒー関連の広告がスマホでやたら表示されるようになるという可能性は今後高くなるわけでして、そういう現象が起きれば体感的にはプライバシーを侵害されているような気持ち悪さを覚える可能性はあるかもしれません。そうした個人ごとでの感覚の有り様みたいなものに対して、どうフォローして不愉快にさせず逆に気持ち良くなってもらえるかを目指すのが本来のサービス業の理想的なあり方だとは思いますが、残念ながらそこまできめ細かい対応を自動化できるのかどうかと言えば、まだ未知数です。テクノロジーの現状を考えると、そうした境地まで到達するにはまだ時間がかかりそうな気がしなくもありません。結果として、実店舗の購買者データを利用した広告配信のようなサービスは、過敏な人達からはやはりウザイ、気持ち悪いといった反応が返ってくることは十分に予想される次第です。
で、この発表があったの受けるような形で、同サービスのアドテク部分を担当するマイクロアドの中の人のインタビュー記事があったのですが、これが正に炎上を狙った見出しで素敵でした。
「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」行き詰まる、ネット広告の自動取引(東洋経済オンライン 14/12/5)
アドテクの分野で代表的な企業で、サイバーエージェント子会社であるマイクロアドの渡辺健太郎社長は、「今までのアドテクは死んでいる」と言う。12月3日には「TSUTAYA」や「Tポイント」で知られるカルチュア・コンビニエンス・ クラブ(CCC)グループと提携。実店舗での購買情報をマイクロアドがネットの広告配信に活用する。渡辺社長の言う「アドテクの死」と結び付く話なのか。その真意は。東洋経済オンライン記事を読んでみれば、従来のアドテクはもうダメだから当社の新しいアドテクを使ってくださいねという、旧来からよくありがちなパターンの展開でもありますが、SNS辺りでの反応を見てみると目論み通りにネット民の心を捕まえることは出来たようでおめでとうございます。もっとも、ネット民の方も大方は心得たもので、与太を振りまくためのネタとして消化している感じでもありましたが。
個人的に気になるのは、この東洋経済の記事がはたしてネイティブ広告なのかどうかという点です。タグなどを見ても「広告」であることは明示されていません。しかし、見出しのセンスや記事の展開など、その演出のあり方は記事広告的なニュアンスが多分に感じ取られます。経済誌のインタビュー記事であれば、多かれ少なかれこういうテイストのものになりがちではありますが、もしこれが最初からネイティブ広告として企画されたものであるとすれば、ネイティブ広告とはどういうものであるかを示すための一つのスタンダードになるのかなと感じた次第です。
サイバーエージェントの人たちをして「マイクロアドはサイバーエージェントのグループの中ではマシなほう」という下馬評どおりの戦いぶりを続けられるのでありましょうか。