天下のアップルを訴えた島野製作所の件はどうなるのでしょうか
iPhoneが珍しくシェアをとっている市場である日本において、我が国が誇る製造業を振り回したとされるアップルのややこしい話が次々と明らかになっていて興味深いところです。
山本一郎です。訴訟はいっぱい抱えていますが元気です。
ところで、しばらく前のことですが、国内企業の島野製作所が特許権侵害を理由として、Appleに対して東京地裁に訴訟を提起したことが報じられました。
日本の中小企業が訴えたアップルの“横暴”の内幕(ダイヤモンド・オンライン 14/10/24)
2014年9月期で売上高1828億ドル(約19.6兆円、1ドル=107円換算)、時価総額約6000億ドル(約64.2兆円)という、世界一の超巨人を相手取って訴訟を起こしたのは、なんと売上高数十億円規模の島野製作所という日本の中小企業だった。それも、パートナーであるサプライヤーが提訴するという極めて異例の事態だった。ダイヤモンド・オンライン当事者である島野製作所もWebサイト上にて「アップルに対する訴訟の提起のお知らせ」というPDFを公開しており、こちらを見ると、独禁法違反等と特許権侵害の二点について米国本社と日本国内にあるApple Japanを訴えていることが分かります。
アップルに対する訴訟の提起のお知らせ(島野製作所 PDFリリース 14/9/12)
ダイヤモンド・オンラインでは続報も出ています。
続報アップルvs島野製作所証拠メールが暴く事の顛末(ダイヤモンド・オンライン 14/11/24)
「和解金狙いではなく、企業の大小を問わず最低限のルールを守るべきという思いで提訴した」という島野製作所。訴訟への注目度は高まっている。ダイヤモンド・オンラインダイヤモンド・オンラインの報道を読む限り、理は島野製作所にあるように見えますが、一方でApple側からは何の情報も出ていないため、迂闊な判断は差し控えたいところではあります。
ただ、Appleのサプライヤーに対する問題では、これまでにも色々と叩けば埃が出てくるような話がありました。
アップルの「植民地支配」が日本にもたらしたもの(ライフハッカー[日本版]13/8/30)
もっと安い人件費で、大量に磨けるところへ移転させようとの目論みだったということ。ビデオに録画された匠の技術は、どこかアジアの別の国に"移植"されたのです。ライフハッカー[日本版]こういう状況の中、中小企業規模のサプライヤーという立場でAppleを訴えるというのは今回が初のケースなのかもしれません。
対Appleの訴訟ということでは、初期iPodに採用されいてたクリックホイールの特許に関して国内技術者が訴訟を起こしめでたく勝訴した事案がありましたが、あれも認められたのは日本国内に関してのみ、しかも賠償額に関しても日本の知財高裁の判決において「発明の技術内容や程度が高度なものとは認めがたい」といった理由から訴え側の請求を大幅に下回る残念な形でありました。
iPod特許権訴訟、2審もアップル側の特許侵害認める知財高裁(産経ニュース 14/4/24)
携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」に使用されている技術で特許を侵害されたとして、山梨県富士河口湖町のソフトウエア技術者、斎藤憲彦(のりひこ)さん(57)が、米アップル日本法人に100億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、知財高裁であった。飯村敏明裁判長は1審東京地裁判決に引き続き、アップル側の特許権侵害を認め、約3億3千万円の支払いを命じた。今回の島野製作所の訴訟についても日本国内に限定した戦いとなるのか、それとも世界的な規模にまで発展する可能性があるのかといったことも含めて、今後の成り行きが大いに注目されるところです。弁理士の栗原さんの見解では、島野製作所の特許は米国でも出願はされているようです。
アップルを訴えた島野製作所が武器にした特許とは(栗原潔のIT弁理士日記 2014/10/29)
米国での状況を見てみると、島野製作所の上記国内出願に優先権を主張した国際出願(PCT/JP2012/065099)から米国に国内移行した米国出願13/878,280に対して、つい先日の9月3日に登録査定が出ています(まだ特許番号は確定していません)。日本での裁判に直接関係ないとは言え、アップルとの交渉において有利に立てる材料なので島野側関係者は万々歳だったのではないでしょうか?栗原潔のIT弁理士日記Appleが日本の部品メーカーに“驚愕圧力”、50%超値下げ強要など
日本の下請け業者がアップル提訴ファブレス戦略に影響も (1/2)
最近では、選挙で某国首相がアップルの研究開発拠点を横浜に作ることをアピールしておりましたけれども、このあたりのことも踏まえていろいろ考えたいところであります。