ドコモはこのまま本当に沈没してしまうのでしょうか
危機感のある決算をドコモが発表し、さてこれからどうなるのか興味深い業界環境になってきましたが、MVNOという新戦場がドコモ、au、SBMという固定された競争環境にどう影響を与えるのでありましょうか。
山本一郎です。ドコモも使っています(自慢)。
ところで、10月末から11月初頭にかけて、国内大手キャリア3社が揃って2014年度上期の決算を発表しました。いろんな業界解説が出ているようです。全体の大まかな傾向については3社の決算短信が同じページ上で一覧できる以下の記事が分かりやすいかもしれません。
大手3社の決算は明暗、ドコモがサービス攻勢、自宅に「クラウド」 (WirelessWire News 14/11/10)
NTTドコモは減収減益、KDDIは増収増益、ソフトバンクは増収減益と、3者3様の決算となった。WirelessWire News営業利益では遂にKDDIにも抜かれて3位へ転落とまさにドコモ一人負けの状況。ださすぎます。iモードで一世を風靡したドコモがまさかこんな状況に陥ることがあろうとは、月並みではありますが平家物語の一節を思い出さずにはいられません。
さすがにこの状況はまずいということで、親会社のNTT決算発表会においても鵜浦社長自らが言及する一幕があったようです。何をしているんだ、といったところでしょう。分かる、分かりますその気持ち。
ドコモ「下方修正」にNTT鵜浦社長が吠えた(東洋経済 2014/11/13)
11月7日の決算説明会の席上、鵜浦社長はこうまくし立てた。「ドコモの復活、ナンバー1を目指すことが新たな使命だ。共同責任だと認識している」「ドコモが今回示した中期計画は、私にとっては最低限」「大幅なコスト見直しにチャレンジさせる。ドコモも(吉澤和弘)副社長主導のプロジェクトが動いている。私が副社長に直接リポートをさせる」などと止まらなかった。東洋経済わざわざ「副社長主導のプロジェクト」という言及をする辺りには、暗にドコモの加藤社長に大きなプレッシャーを与えているということでもありましょう。どうでもいい話でもありますが、このストレスで加藤社長の毛髪がさらに危ういことになるのではないかとちょっと心配です。
それはさておき、今回のドコモの不振につながった大きな要因は今年6月に導入されたあやしい新料金プランにあるとされています。
ドコモ新料金誤算で業績予想下方修正、KDDIは2ケタ増益へ(ロイター 14/10/31)
足元でドコモの足を引っ張っているのは6月に導入した新料金プランだ。月2700円で国内電話がかけ放題となるため、毎月この金額以上に通話料を支払っているユーザーが先行して新料金プランに移行、音声ARPU(契約者1人当たりの平均月間収入)を引き下げたほか、小さいデータ容量コースを選択するユーザーが多かったのも誤算で、この両面が収益を圧迫したもようだ。ロイターつまり、新料金プランを発表したら予想以上に利用客が多くて、通話料収入もパケット代収入も減ってしまったというのがドコモ側の言い訳です。知らねえよ。しかし、新料金プラン加入を半ば強制するような形で施策を展開したのはドコモ側でありまして、この辺りはちょっとなにか違うんじゃないのといった感が無きにしも非ず。
ドコモ旧料金ユーザーは機種変更価格が大幅値上がり新料金プランへの移行を促す狙いか(日経トレンディ 14/9/3)
新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」が好調のNTTドコモ。だが、2014年9月1日より、旧来の料金プランでスマートフォンを機種変更する際、毎月の端末代を割引く「月々サポート」を実質的に適用せず、旧料金を維持したままのユーザーの機種変更価格が高額になることが、ネット上で話題となっている。ドコモは自らユーザーを新料金プランへ追い込んでおきながら、いざ蓋を開けてみたら当初の思惑とは違った結果が出てしまって慌てているということなのではないでしょうか。何でしょう、このピタゴラスイッチ的な玉突き現象。ちなみに、今回の新料金プラン導入については以下のような意図が含まれていることが加藤社長によって公言されております。
(中略)
旧料金プランのままXiスマートフォンに機種変更しようとした場合、月々サポート(総額3~6万円前後)が適用されない状態の、高額な料金で端末を購入しなければいけなくなるのである。
(中略)
「カケホーダイ&パケあえる」では、基本料が2700円(スマートフォンの場合)と旧料金に比べて大幅に上がることから、特に通話の利用が少なく、データ通信を活用するユーザーは、旧料金プランを維持していた方が得なことが多いといわれている。そのことを見越して旧料金プランを維持し続け、新料金プランへの移行を拒んでいるユーザーが、今回の施策に関して「機種変更時に新料金プランに強制的に移行させようとしているのではないか」と不満の声を上げているわけだ。日経トレンディ
そもそも新料金プランは中期的にパケット収入を拡大することが狙いの一つだ。その前提となるパケットトラフィックの増加トレンドは確実に進行しているロイター通信量の上限無しで提供されるパケット定額制が実質的に終わりを告げようとしていることは、このところの各キャリアの料金プラン見直しを見ていれば容易に理解できることですが、ここまであからさまにその意図を吐露してしまうのもなかなか潔い話ではあります。もちろんエンドユーザーもそうした部分には非常に敏感でありますから、音声通話利用をほとんどしないタイプのユーザーは音声通話定額サービス部分に無駄なコストがかかることを嫌って、データ通信に関するコストパフォーマンスが高いとされるMVNOへ流れ出るという動きも始まっています。一方で、データ通信をほとんどせず音声通話に比重が高いユーザーであれば、音声通話定額サービスがデフォルトで付いてくるドコモの新料金プランは大いに歓迎すべき流れでありますし、そんなユーザーが一番安いデータ通信料金プランを選択するのも至極当たり前にも見えます。つまり、ドコモの思惑とユーザーの思惑が微妙にズレていて、それが結果としてドコモの収益に反映されなかったというのが今回の顛末なのではないかと思ったりもするのですが、いかがでしょうか。
ドコモとしては、これから音声通話メインのユーザーにいかに無駄にパケットを使わせるかが大きな課題となってきます。近頃めっきりオワコンになったと思われていた「デコメ」みたいなものを改めてアピールしているのも、アプリに慣れないユーザーを誘い出すための巧妙な罠なのかもしれません。
キャリアメールでも“スタンプ”を「ドコモメールストア」11月12日開始(ITmedia 14/11/7)
ドコモメールストアには、さまざまなシーンで使える「ドコモダケ」などのスタンプを用意。サイズが大きく、アニメーションもあるスタンプをキャリアメールでも、送受信できるようになる。スタンプに加え、従来のデコメ用絵文字とテンプレート、ドコモメールアプリのデザインを着せ替えできるテーマなど約100パッケージをラインアップした。ITmedia「サイズが大きく、アニメーションもあるスタンプをキャリアメールでも、送受信できる」という件に思わず微笑んでしまいます。流行るといいですね(棒)。
こうなると、IIJが皮切りになって以降の各社の格安MVNOが主戦場になっていくのではないかと思うわけですが、ソフトバンクの孫正義と、ドコモLTEに乗っかった楽天モバイルがまーた日本を荒野にする頂上決戦を繰り広げてしまうのでありましょうか。
月額3,000円前後の格安スマホはどこがおトクなのか? - 2014年11月版(ITmedia 14/10/29)
楽天がMVNOに参入ドコモLTEを月額1600円から「楽天モバイル」(マイナビニュース 14/11/17)
なんかNTTグループの「本来であれば恵まれた立場にあったはずのエスタブリッシュが、リスクを果敢にとるバーバリアンの群れに砦を包囲されて領土を失い退縮していく感じ」がとても侘び寂びを感じて素敵です。意味的には衰える朝廷から任命されてたはずの守護大名が、力をつける地場の豪族に取って代わられ戦国大名に入れ替わる的な斯波氏と織田氏のような情勢ってやつでしょうか。
途中で自分でも妄想が広がりすぎて何を言っているんだか分からなくなってきました。ここはもうmixiモバイルでも旗揚げしていただいて強風に煽られて旗が根元から倒れるというギャグを期待したいところです。