ニュースキュレーションアプリ界隈もそろそろ淘汰が始まるのでしょうか
スマホ普及の恩恵を蒙ってバブリーな増資を繰り返してきたニュースキュレーションアプリ界隈ですが、どうも急ブレーキがかかる一方、ユーザーベース拡大で打てる手が限られてきて微妙な状況になりつつあります。
山本一郎です。私自身は商売っけのないカメリオを最近は愛用しています。
これまで何度かこちらのブログでもニュースキュレーションアプリ界隈の話題を取り上げてきました。
猫も杓子もニュースキュレーションアプリへ参入の時代到来(14/8/19)
赤字14億円も想定通りと豪語するGunosyが色々な意味で話題です(14/9/4)
私流カメリオのたのしみ方山本一郎編
で、この状況がどう推移していくのか生暖かく見守っていた次第ですが、ここにきて面白いデータが発表されておりました。
2014年度 モバイルニュースアプリ利用動向調査(ICT総研 14/11/4)
日本国内におけるモバイルニュースアプリの利用者数(アクティブユーザー数)は2012年度末に303万人だったが、2013年度末には4倍の1,294万人へと急増した。今後も増加傾向は続き、2014年度末に2,242万人、2015年度末には3,286万人に増加すると見込まれる。さらに2016年度には3,927万人、2017年度には4,435万人がモバイルニュースアプリを利用すると予測される。ICT総研なるほど、スマホの普及により「アプリ」を使ってニュースを見るという行為そのものが広まってきているということなのでしょう。ちなみに2012年度末までは全体の約9割がニュースアプリではなく汎用的なブラウザ上のポータルサイトからニュースを読んでいたという数字も出ています。動態上は、ブラウザでのニュース閲覧から一気にアプリへ市場がシフトしたようであることまでは分かります。
で、ニュースアプリは一体どれが人気あるのかということなんですが、やはりブランドというのは強いなという結果に。
ニュースアプリのうち、最も利用率が高いのはYahoo! Japan/Yahoo!ニュースで31.7%となった。利用率2位はグノシーの7.3%、3位 スマートニュース6.8%、4位がLINEニュースで6.3%となっている。ICT総研ネット界隈で一部の声の大きな人達が発する情報とはやや印象が異なる結果となっていますが、まあ、今回の調査ではこういう結果になったという話もあるでしょうし、一方で「ネットで評判」というのがまたバイアスのかかったものであることも考えれば、色々と興味深い展開であります。
別のデータではトップがLINEニュースだったり、スマートニュースが2位だったりと、調べ方でもずいぶん差が出るのは、あまりはっきりとした基準が調査する側で決められないのかもしれません。
さらに、アプリの利用者満足度を見ると、こちらも利用率とは異なる傾向が見えてきて、なるほどと頷くばかりです。
主なニュースアプリの利用者満足度に関するアンケート結果は、スマートニュースの満足度が最も高く77.7ポイント、次いでFlipboardが77.3ポイントだった。3位はYahoo!ニュース BUSINESSで76.7ポイント、4位はLINEニュースで74.3ポイント、5位はAntennaで74.1ポイントである。Yahoo!ニュースは71.5ポイント、グノシーは68.4ポイントに留まった。ICT総研もちろんこの利用者満足度という調査も結構曲者で、調べ方によってずいぶん結論は異なるわけですけれども、まずは「そうなのか」と受け止める素直な心が必要ですね。
この流れから推測できるのは、広告出稿に大盤振る舞いした結果、Gunosyはアプリのダウンロード数を他よりも稼げた一方で、実際に使ってみると他アプリよりも使い勝手がイマイチという評価が出てしまい、今後のアクティブユーザーの増減が気になる気配というところでしょうか。
こういう状況が問題であることは、当然ながら運営側はさらにひしひしと感じていることでしょう。で、新しい事業展開へ向かって舵を切るようです。
王者ヤフー減益の影で「検索排除」進めるグノシー(ASCII.jp 14/11/12)
「検索のフローを排除し、商品とダイレクトにつながる世界観を実現したい」なんでしょうか、これは。「グノシー5000万人都市構想」なるものが打ち出されておりますが、プラットホーム事業というのはもしかしてモバゲーやGREE、もしくはmixiみたいなアレなんでしょうか。そこで、記事広告、もといネイティブアドを大々的に配信始めますということなのでしょうか。今ひとつよく分かりません。
ニュースアプリ・グノシー取締役の竹谷祐哉氏は10日、同社が目指す姿をそう説明した。
(中略)
従来のニュース事業からプラットホーム事業に舵を切る形だ。ASCII.jp
また、ユーザー動向を示す数字にしても「ユーザーのアクティブ率は、1日の利用者数を月間利用者数で割った値にして46%」という同社独自の不思議な提示の仕方をしていまして、これはなぜ単純にMAUで示さないのかとネット民の間でも大いに訝られております。
Gunosy(グノシー)、 プラットフォーム事業を開始。ニュースから リアルビジネスへ(TechWave 2014/11/11)
コンバージョンは累計100万に到達しています。単価1万の商品と考えると100億円という数字です。TechWaveこの辺りの例えも、もし商品の単価が1円であれば100万円にしかならない訳でして、やや無理のある言い回しと感じなくもありませんがどうなんでしょうか。誰だこんな与太記事を書いたのはと思ったらTechWaveの@maskinさんだったので、そっとブラウザタブを閉じました。
また、これは具体的な調査をしたわけではないのですが、周辺のサイトのPV動向を見ておりますと、このところスマートニュースやGunosyなどのニュースアプリからの動員が伸び悩み、むしろ減っているように感じます。ユーザーベースの拡大が止まって飽和する一方、アプリで掲載される記事が増えたことが理由なのではないかと思いますが、これがバブルのような一時的なものなのか、ビットバレー乙的なスタートアップ界隈特有のバイアスのかかりまくった一時的なものなのか、あるいはスマホ普及の現象面に過ぎない一時的なものなのか良く分かりません。
しばらく乱戦模様だったニュースキュレーションアプリ界隈も、そろそろ淘汰が始まってもおかしくない状況ではありますが、その中でGunosyは「スマートフォンならではの『検索エンジン以降』の市場」を狙っていくとのことで、大いに奮闘していただきたいものと思います。