Siri的なものが増えつつある時代のようです
最近は、AIとロボティクスの組み合わせが未来技術の方向性のひとつになっているようで、各社次々とR&Dからのサービス投入フェーズに入って、にわかなバブル状態になっています。
山本一郎です。尻は健全です。
ところで、Appleが自然言語処理と人工知能技術を応用した秘書アプリ「Siri」をiPhoneに搭載したのが2011年。その後、同様な機能を提供する製品は各社から色々と出てきていますが、今度はAmazonが一般家庭向けにちょっと変わった切り口で新製品を発表しました。
米アマゾン、会話する円筒形スピーカーEchoを発売。クラウド接続の音声エージェント機能搭載(Engadget日本版 2014/11/7)
特徴は7つのマイクを使った音声認識を備え、部屋のどこにいても音声で操作できること。楽曲の選択や再生操作だけでなく、クラウド接続で天気やニュース、言葉の定義やWikipedia引用など簡単な質問に答えたり、買い物リストやToDoリストへの追加と読み上げ、タイマーやアラームなども音声で設定できます。Engadget日本版YouTubeにはAmazonの公式動画が公開されており、ベタなアメリカンホームドラマみたいな趣向でややかったるいのですが、これを見るとどういう使われ方を想定しているかがだいたい分かります。
Introducing Amazon Echo(YouTube)
なぜAmazonがこんなものを売り出したのかという点については、辛口な論考が出ておりまして、まあそうなんだろうなと同意せざるを得ない感じではあります。
Amazon Echoはベゾスの巻返し―そのうち音声認識のゼロクリック買い物端末に化ける?(TechCrunch 2014/11/7)
AmazonがなぜEchoを作ったか、その理由は覚えておくべきだ。Amazonは顧客がわざわざ訪問しなければならない「デスティーネション・サイト」であることにもはや満足していない。Amazonは世界に遍在することを狙っている。Amazonストアが現実空間のあらゆる隅々にまで行き渡り、じっと聞き耳をたてて人が口を開くのを待ち構えているという状態が目標なのだ。簡単な会話を楽しむという機能も搭載しているので、会話から得た情報を分析してユーザーの嗜好に合わせた商品のおすすめみたいなこともそのうち始めるのでしょう。
(中略)
ジェフ・ベゾスはFire Phoneの失敗(今だに8300万ドル相当の在庫を抱え込んでいる)から一つ学んだようだ。人々はもっと買い物をさせるために作られた製品だと知ってしまうとそれに金を出したがらなくなる。だが、Echoの本質はFire Phoneと変わらないのだろうと思う。TechCrunch
それにしても、こういう人工知能的な会話を楽しむという需要が今後どれだけ広がるのか気になるところです。ソフトバンクが家庭向けロボット「Pepper」を売り出しますがあれも狙いは同じですし、さらには掃除ロボットに演出過多とも思えるような会話機能を備えた試作品が大きな反響を集めて製品化に至るといった話も出てきております。
「おはようダーリン、起きてー!」シャープ、萌える掃除機“ツンデレ妹”「COCOROBO」発売決定(ITmedia 2014/11/7)
春に非売品としてトライアル版を発表していたが、大きな反響を受け受注生産形式での製品化に踏み切った。ニッチにも程があんだろ。
(中略)
「ニッチかもしれないが、確実にニーズはあるし、『心通う家電』の1つの方向として可能性は大きいと思う。ユーザーのみなさんに喜んでもらえる、寄り添える形を考え、“妹”キャラ以外の可能性も検討していきたい」ITmedia
こうした疑似コミュニケーションによってユーザーの心理を安らげることを目的としたロボットということではソニーのAIBOが先駆的な存在でしたが、そのAIBOについては奇しくも以下のような話題がつい先日報じられておりました。
“寿命”近づくペット型ロボットは今(NHKニュース 2014/11/6)
かつて、ペット型ロボットとして流行した「AIBO」を覚えていますか?犬の形で、呼びかけに反応する愛らしいしぐさが人気となった家庭向けのモデルが発売されたのは、もう15年前。今、そのロボットの「寿命」が近づき、「飼い主」は心を痛めています。まさかのAIBOがペットロスの対象に。
老いていくロボットに寄り添う人たちの思いに迫りました。NHKニュース
ここまでユーザーが思い入れたっぷりにAIBOを愛しているということは、まさに「ニッチかもしれないが、確実にニーズはある」製品として大成功した事例であった証でもありますが、それを継続して今の時代につなげることができなかったソニー、特に同製品の関係者は苦い思いをしているのかもしれません。もちろんAIBOはあまりにも早すぎたプロジェクトだったのかもしれませんが、新しい事業に挑戦することのむつかしさを改めて感じたりもします。
それにしても、いわゆるSiri的なものがさらに増えつつあるのが今ということなのでしょうね。もはや、独居老人のお相手をするロボット+ソフトウェアの時代が近づいてきているのかもしれません。