中国新疆ウイグル自治区で大規模暴動、死傷者100人超
中東との玄関口に位置する中国の新疆ウイグル自治区で、イスラム過激派と見られるウイグル独立運動支持者が大規模テロを立て続けに引き起こしており、混乱に拍車がかかっています。
山本一郎です。中央アジアを旅していると、だいたい日本人に見てもらえずトルコ人やウイグル人に間違われる私ですが、日本人です。
ところで、昨今イスラム国関連の空爆の話題も出ておりましたが、ここにきて俄然、中国の新疆ウイグル自治区での騒ぎが拡大しており、どうも大規模なテロ事件が発生して多数の死傷者が出ている模様です。
中国新疆、同時爆発で50人死亡大規模暴動も(47news 14/9/26)
ヤクルトで言えばバーネットがベンチで暴れているよりヤバイ状態といえばご理解いただけますでしょうか。一説には100名以上の死傷者が出ているとの報道もあります。
これはもう、中国の宿命と言いますか、また新疆ウイグル自治区に住む人たちのプライドにも関わるところなのでしょうが、このところ、中国側の融和策と同時に打つ封じ込めが逆に悪い影響を及ぼした結果、ウイグル人の過剰な反発を生んで中国の治安当局の手に負えない状況に陥りつつあるのではと目されます。
もともとは中国の多数派である漢民族と、自治区に多く住まうウイグル人との穏やかな連携を説いたウイグル人経済学者イリハム・トフティ氏がなぜか拘束され、どちらかといえば穏健な主張をするウイグル人が数多く逮捕されてしまうというよく分からない状況に陥っているのが混乱の発端のように見えます。
ウイグル族学者、無罪訴え=国家分裂罪で初公判-中国新疆(時事通信 14/9/14)
このような状況になって仮に釈放されても北京からシンチヤンに移動したところで暗殺される可能性が高くなりますので、どこか第三国に亡命するしか方法は無くなると思いますが、それでも中南海ではこの逮捕は良くないと思ったのか、シンチヤンでの中心都市ウルムチでの審理はトフティ氏の親族も傍聴できる環境にあるようです。
7月以降は断続して自爆テロや治安当局施設への襲撃が相次ぎ、取締りを強化するほどに抗争が激化するという非常によろしくない状況に陥っているのが現状です。
ウイグル族女性の自爆か2人死亡、新疆の同時爆発(MSN産経ニュース 14/9/22)
そんな中、俄然注目を集めているのが「イスラム国」との関係を指摘する中国内での公式報道が増えてきたことです。
中国新疆の過激派、イスラム国から「テロ訓練」受ける=政府系新聞(ロイター 14/9/22)
共産党機関紙・人民日報傘下の環球時報は、中国の「反テロ職員」の話として、新疆の過激派は「テロリスト技術の訓練を受けようとしているだけでなく、中国でのテロ活動激化への支持を得るために実際の戦闘を通じて国際的なテロ組織とのつながりを広げようとしている」とした。イスラム国へ合流図る?不法入国の男ら逮捕新疆出身か(朝日新聞14/9/17)
同紙は、新疆の過激派が最近、シリアやイラクでのイスラム国の活動や東南アジアでのイスラム国の「分派」に関与していると報じた。
また、新疆の過激派とされる4人が今月、インドネシアで逮捕されたとしている。中国新疆の過激派、イスラム国から「テロ訓練」受ける=政府系新聞
インドネシアと聞くとさまざまな邪推が頭を渦巻くわけですが、言われてみれば先日来のイスラム国空爆に関する国連決議の場で、いつもならアメリカ以下の介入に異を唱えることの多い中国が留保つき賛成に回っているのも気になるところであります。
イスラム国空爆、中国は「反テロの努力を支持。ただし国連憲章の順守求める。庶民への被害出さないことを希望」(サーチナ 14/9/24)
今月のforeign affairsもイスラム国の脅威と躍進についての観測記事が盛りだくさんで、ポストアルカイダどころか次なる大規模テロがどこで発生するのか油断無く見守らざるを得ない状態であることには変わりないわけなんですが…わが国では依然として従軍慰安婦問題を巡る日韓関係が主要な外交トピックスになっていて、もうちょっといろんなものも網羅的に見たほうがいいんじゃないのかなあと思うわけであります。