ITリテラシーの大切さを改めて考えるのに相応しい良記事をご紹介
交通安全もそうですが、ルールを知るだけでなく社会を動かすメカニズムを理解することでリテラシーを引き上げ問題の発生を未然に防げる確率が増えます。ITリテラシーを高めるにはどんな方法があるのでしょうか。
山本一郎です。うっかり初期のaiko作品を耳にしてしまい、しばらくノスタルジーに悶絶してしまいました。
ところで、語弊があることを承知で書きますが、いわゆるウイルス対策ソフト・サービス等を販売することを生業とするITセキュリティ対策企業というものは、セキュリティに破綻があればこそ儲かる商売であります。したがって、もしこの世の中にセキュリティ問題が無ければ、当たり前のことですが必要とされない事業でもあります。しかし残念ながら実際にはセキュリティ上の脅威はますます増加しつつある現状を鑑みれば、ITセキュリティ対策企業が必要とされなくなることは当分なさそうです。
しかし、そんな事情もあることから、ITセキュリティ対策企業が発信する情報というものは時として必要以上にセキュリティの脅威を煽ることで自社製品やサービスを売りつけようとするマッチポンプ的なものである場合もあり、そのまま鵜呑みにするのはどうなのかと感じることも時としてなくはありません。この辺りはまさに情報を受け取る側のITリテラシーの問題なのかもしれませんが、なかなかにむつかしいですね。
なぜ、このような話を書いたかというと、そういう事情があることから必ずしもITセキュリティ対策企業の発信する情報をそのまま良しとして取り上げるのはどうかなとも感ずるわけですが、以下にご紹介するコラム記事は誠に正論だなということであります。
コンテンツにお金を払うということ(エフセキュアブログ 14/9/18)
それほど長い記事ではないので是非ともリンク先の記事を各自で読んでいただければと思いますが、記事の要点としては、Webが成長するためにはニュースや娯楽のようなコンテンツが必要とされたが、そのマネタイズは幸か不幸か広告モデルでしか成立しなかったがために、ユーザーは自ら個人情報を提供することが当たり前となり、Googleのような事業者はどんどんそうした個人情報を積み重ねて大きなビジネスにしているのが現状だという話になっています。
もちろんGoogleは営利企業だ。不法なことは何もせずに我々をプロファイルしている。我々が自身のデータをGoogleに自発的に提供しているのだ。そしてGoogleのサービスは素晴らしい。しかし時折、物事が違った形になり、コンテンツやサービスに対して支払いを行う単純な少額決済システムがあったらと願うことがある。今や暗号通貨が立ち上がったことで、これはいずれは現実になるかもしれない。エフセキュアブログはたして、個人情報とのトレードオフ以外でビジネスが成立するようなシステムが今後Webに登場するのかどうか。もはやフリーミアムでなければ誰も使ってくれないような状況となりつつあるアプリ界隈の様子などを顧みるとややもすると悲観的にならざるを得ない感もありますが。
で、こうした現状に対して一つの提言をするコラム記事があり、こちらも一読に値する内容だと思います。
子供が学ぶべきはプログラミングよりもデジタルリテラシーだ(ReadWrite Japan 14/9/24)
教育についてシリコンバレーからワシントンに渡って言われていることは「全員プログラミングを学ぶべきだ」という事である。しかし技術者から学生の親に伝わるまでの間、何かが欠落している。この話を読んで思い出したのはこちらの話題です。
こう否定しよう。全員がプログラミングを学ぶ必要はない。プログラミングは常に進歩し続ける技術における1つの側面でしかない。
プログラミングを学ぶことと、テクノロジーの根本を理解するということには大きな隔たりがあり、多くの人にとっては後者のほうがはるかに重要だ。
学生や、将来のキャリアにおいて活躍したいと思う人たちが身に付けるべき事は、ITリテラシーだ。ReadWrite Japan
佐賀県武雄市、小学校1年生向けにプログラミング教育(INTERNET Watch 14/6/25)
先に挙げたReadWrite Japanの記事を読んだ後ですと、ITリテラシー教育もまだ満足に行えていないような小学校1年生向けにプログラミングを教えることの不毛さみたいなものを感じなくはありません。もちろん、論理的思考力を養うことはITリテラシーを身につける上で役に立つことではありましょうが、何か順番が間違っているのではないかと思うわけです。
Pythonやスクリプティングを学びたい学生にプログラミングを選択科目として提供することは、根底にあるデジタルリテラシーについての問題を解決する助けにはならない。もし学生全員にプログラミングを教えることが目的であったとしても、まず最初に行うべきは、コンピュータの構成要素自体についての教育だ。もっとも、すでにこうした義務教育レベルでのプログラミング教育については既に国策としても打ち出されているので、後戻りは出来ないという事情もあります。
彼らが次のDropboxを作れるようになる必要はないが、クラウドサービスがどの様に動いているのか、理解はしておくべきだ。ReadWrite Japan
「世界最高水準のIT社会へ」政府の成長戦略素案義務教育からのプログラミング、3Dプリンタ投資支援など盛り込む(ITmedia 13/6/6)
ハイレベルなIT人材の育成・確保のため、デジタル教材の開発や、双方向型の教育、グローバルな遠隔教育などの授業革新を推進。産学官連携でIT人材育成の仕組みを来年度中に構築し、義務教育段階からのプログラミング教育など、IT教育を推進するとしている。ITmediaハイレベルなIT人材を育成するのは大いに結構ですが、モラルのない人材ばかりが跋扈するIT業界は願い下げですし、そうした輩の存在を許さないためにもITリテラシー教育は喫緊の要事であるなと感じる次第です。
蛇足ではありますが、冒頭に述べましたウイルス対策ソフト会社についていえば、確信犯なのか分かりませんが微妙に間違ったセキュリティ関連の知識を広めて騒ぎになっているところもあります。良かれと思ってやっていることが、実はとんでもないことだったと気づいたころにはもう遅い、みたいなことにならないよう願っております。