通信事業者以外も格安スマホ市場へ参入する新しい時代の夜明け
異業種からの参入も取りざたされる格安スマホや通信サービス界隈ですが、ユーザーニーズと既存ビジネスとのシナジーを考える上でいろんなバリエーションがあるのかもしれません。
山本一郎です。どんな業界にでも利益が出ると見るやFC2やDMMが参入してしまうという辛い世の中になってきております。
さて、以前にも触れた話題ですが、このところMVNOを利用したいわゆる「格安スマホ」がますます人気となっているようです。その影響は当然のように関連企業株にも如実に表れています。
日本通信、半年で株価十数倍に格安スマホ人気・SIMロック解除義務化で注目集める(ITmedia 14/7/24)
日本通信(JASDAQスタンダード)の株価が今年に入り高騰している。7月7日には1268円の年初来高値を付け、1月の安値から約14倍になった計算だ。格安なSIM・スマホの人気や、総務省によるSIMロック解除義務化で収益拡大が期待されているようだ。ITmediaここまで格安スマホが話題となる理由の一つは、やはり消費税増税からくる一般消費者の節約ムードが反映されてのことかもしれません。生活防衛を各消費者が図る中で、通信費の削減は大きなテーマのひとつになっているようで、それを狙ってサービス設計をする会社が出てきても確かにおかしくはありませんね。
格安スマホの料金体系は、一見すると大手キャリアが提供するプランよりも大幅に安く見えます。ただし、その安さには安いなりの理由がある訳でして、その辺りの事情を知っているのと知らなのでは、実際に使った際に感じる印象はかなり異なりそうです。そうした注意点については以下の記事などが参考になりそうです。
人気の格安スマホ、料金とデータの制限に注意(読売新聞 14/6/13)
話題の「格安SIM」「格安スマートフォン」とは?SIMフリー端末はまだ少数(BCNランキング 14/7/30)
格安スマホにはいくつかの問題点がある。スマートフォンを活用したいと思っている人には、正直に言って向いていない。データ通信はスピードなどの制限があるし、音声電話も料金が高いためだ。筆者はテレビやラジオで説明するときには、「格安スマホは、スマートフォンを使わない人向け」と表現している。読売新聞
MNP(携帯電話番号ポータビリティ)に対応しなかったり、ユーザー認証などに利用するSMSは有料オプションだったりする場合がある、留守番電話などの通話オプションは利用不可または有料オプション、キャリアメールは提供されないといった制約・注意点がある。安さには、それなりの理由があるのだ。また、音声通話の料金体系は従来と同じなので、無料通話アプリ・格安通話アプリなどを利用しないと、音声通話代は安くならない。BCNランキング数々あるデメリットは承知の上でも、上手な使い方をすれば経済的に負担を軽減することができるというのが格安スマホの存在意義なのだろうと思います。そういう意味ではリテラシーを問われる製品とも言えそうですが、実際には表に出ている料金だけを見て判断して使っている人も少なくはないのでしょう。
で、そうした話題の格安スマホ市場に熱い視線を向けるのは何もエンドユーザーだけに限ったことではないようでして、これまでスマホ販売には直接縁の無かった事業者までもが参入を試みる状況となってきました。
不動産のエイブル、格安スマホに参入直営店で販売(朝日新聞 14/8/20)
エイブルが格安スマホを400店舗で販売、フリービットと協業(ITpro 14/8/20)
不動産賃貸仲介のエイブル(東京)は20日、格安スマートフォンのフリービット(東京)と提携し、スマホ販売に乗り出すと発表した。
(中略)
通信回線は1世代前の「3G」を使い、料金は基本料と端末代を合わせて月額2千円(税抜き、通話料別、端末は24回払い)に抑える。大手携帯会社の3分の1ほどの料金になるという。朝日新聞
エイブルの会員特典や物件に関する相談サポートなどを無料で利用できるアプリを搭載する。同社の梁瀬泰孝社長は「通信コストを削減するだけでなく、暮らしに関するサービスをスマホに連携する」と話し、異業種提携によるサービスの拡充を目指すITproエイブル…?
なぜ、不動産賃貸仲介業者のエイブルがスマホ販売事業に参入するのか、上記記事からはその具体的な理由が今ひとつ見えてきませんが、一方で、実際の通信サービスを提供する側のフリービットが今回の提携に至った理由は次の記事で明らかにされています。
賃貸仲介のエイブル、独自の格安スマホ販売に参入、月額2000円から(INTERNET Watch 14/8/20)
パートナープログラム第1弾にエイブルと提携した背景として、数多くの店舗を持ち、エイブル代表取締役社長の梁瀬泰孝氏の決断スピードの早さが決め手だったという。パートナー提携は他の企業・業界含め検討しており、特に「店舗」が重要な検討要素の1つだという。INTERNET Watchそうですか。
要は、既に競争の激しい家電量販店などで今から勝負するのは厳しいので別の流通チャンネルを探していたところ、販売拠点を多数持つエイブルがすぐに提案に乗ってくれたからということのようです。分かりやすいですね。
では、エイブルがこうしたフリービットの提案に直ぐに乗っかった理由は何だったのでしょうか。外部からは、その決断にいたったバックグラウンドは良く見えません。ここから先はあくまでも一つの可能性としての憶測でしかありませんが、例えば「エイブルの会員特典や物件に関する相談サポートなどを無料で利用できるアプリ」にメリットがあると考えたからではないでしょうか。スマホはユーザーの詳細な行動情報を収集するのが簡単です。例えば、ユーザーの日常行動パターンを把握できれいれば、次の賃貸契約更新時にユーザーの嗜好や生活パターンにより則した物件を提案することも可能となります。これによってユーザーをいつまでも自分の商売の顧客として囲い込んでしまえるということです。穿った見方をすれば、そういうことが出来ますよとフリービット側からエイブルへアプリ施策の提案があった可能性もあるでしょう。まあ、これはあくまでも妄想の類なんですけどね。
プライバシーフリークとしては、通信事業者以外までが格安スマホ市場へ参入という形で、これまでよりもさらに一歩踏み込んだ行動ターゲティングの時代が来つつあるのかと思うと、胸が熱くなるものがあります。
mixiも掴んだ泡銭を突っ込むチャンスはここだよ!