無縫地帯

猫も杓子もニュースキュレーションアプリへ参入の時代到来

ニュースアプリバブルがやってきておりまして、比較記事を掘り返しながら現状とターゲティング広告の現状について議論してみたいと思います。

山本一郎です。炭鉱のカナリア的な才覚には定評があります。

このところスマホ界隈ではニュースキュレーションアプリがまさに旬といった感じで、続々と各社がこの分野に参入しております。まあ、ちょっとした時間つぶしにサクサクと世間の話題をなぞるのには便利なツールですよね。そんな状況で、主要なニュースキュレーションアプリをとりあげてそれぞれの運営者にインタビューを行ったITproの特集「主役たちが語るスマホニュースまとめアプリ激闘最前線」は、今の状況を俯瞰するのになかなか役立つ好企画だと思います。

主役たちが語るスマホニュースまとめアプリ激闘最前線(ITpro 14/8/11)

利用者が急激に増えるスマホのニュースキュレーションアプリ、ニュースまとめアプリは、次世代のポータルになる可能性すらある注目のサービスだ。
複数のニュースメディアが配信しているニュースを一個所から読めるようにしたネットサービスの走りは、ポータルサイトの「Yahoo!」だった。ユーザーに最も近いネット接続デバイスとしての地位がPCからスマホに移りつつある今、次のYahoo!の地位を狙うのは、このニュースキュレーションアプリ群だ。
主要サービスを展開する企業のキーパーソンに、将来に向けた戦略を聞いた。ITpro
Gunosy、データがあれば「読みたい記事」は見えてくる(ITpro 14/7/7)
Antenna、「今年はキュレーションメディア元年」(ITpro 14/7/8)
NewsPicks、「目指すは経済情報のプラットフォーム」(ITpro 14/7/9)
Vingow、「自社開発の記事解析エンジンが売り物」(ITpro 14/7/10)
ヤフー、「国民的情報アプリ」を目指す(ITpro 14/7/11)
LINE NEWS、「アプリさえ使わない人を意識した」(ITpro 14/7/14)

なるほど、各社もそれぞれの特色を出して他との差別化を図ろうと頑張っておられるようですね。好きにすればいいんじゃないでしょうか。で、この特集が別の意味で興味深いのは、なぜかSmartNewsがこの中に入ってない点でして、似たような趣旨のインタビュー記事がすでに過去行われてしまったため今回の特集ではあえて外したのか、それとも他に何らかの事情があって特集に含めることが出来なかったのか、そうしたことも考えながら読むとまた違った意味で趣深いものがあります。

それはともかく、各社とも今後の課題はマネタイズをどうするかということのようですが、いずれもその核心についてはぼんやりとした回答しかしてなくて、さすがに手の内は明かせないということかもしれませんが、逆に言えばどこもまだ決定的な解を見つけられておらず試行錯誤の段階なんだろうなとも推測されます。

で、まさにニュースキュレーションアプリ戦国時代的な状況の中、今度はDeNAが参戦を表明しました。しかし、今さら後発の立場でこの厳しいシェア争いの中互角に戦えるのかといえばそれはむつかしい、ということでかなり突飛な戦略に打って出たようです。

「君にシンクロするアプリ」DeNAの萌えキャラプロジェクト「ハッカドール」はニュースアプリだった(ITmedia 14/8/15)
DeNA、美少女キャラが好みを学習してニュースをお届け! - 「ハッカドール」(マイナビニュース)
美少女Mobageチーム、オタクコンテンツの情報収集がはかどるニュースアプリ「ハッカドール」(CNET Japan 14/8/15)

ハッカドールは、アニメやマンガ、ゲーム、ライトノベル、声優、特撮などの特定のジャンルのみを対象に、ニュースサイトやまとめサイト、個人サイトなどから横断的に検索した結果を、1日3回(朝、昼、夜)25件のニュースとして届けるアプリ。公式キャラクター「ハッカドール1号(仮)」「ハッカドール2号(仮)」「ハッカドール3号(仮)」の3人が各所に登場する華やかなアプリだ。ITmedia
まさに「クールジャパン」な我が国に相応しいニュースキュレーションアプリということでありましょうか。このハッカドールなるもの、正式発表のしばらく前からティーザーサイトなどで想定ユーザー層に向けて綿密なPRを展開しつつ、最後はコミケ開催に合わせてアプリ公開という、まさにマーケティングのお手本のような感じでもありました。

DeNAが謎の萌えキャラプロジェクト「ハッカドール」公開情報少なすぎて妄想が捗る(ねとらぼ 14/8/6)

ディー・エヌ・エーが謎のティーザーサイト「ハッカドール」をこのほど公開しました。サイト上には、萌え萌えな3人のキャラクター(大中小のおっぱい)がフワフワと浮かんでいるものの、作品に関する説明は何もありません。ちなみに、情報解禁は8月15日を予定……ってそれコミケの開幕日やないかい!で、DeNAはコミケに出展予定と。何かあるなこれ。ねとらぼ
今のところネット民の間での評判もそこそこ悪くないようですし、こういうニッチな切り口の方が乱戦模様のニュースキュレーションアプリ市場では善戦するのかもしれません。当然ながらこの後に類似アプリがまた雨後のタケノコのようにわらわらと現れるのでしょうが。

可能性としては、英語版が出て、そのままこうしたオタクな情報を自動翻訳してそれなりに意味が通じるようなことになると、まさにクールジャパン的なビジネスとして何か一山当たるかもしれないですね。

ただ、Gunosyが出掛かり当初はアルゴリズムを使ったウェブサイトのサーチをするテクニカルな試みだったのが、商業路線が進むほどにUIをパクってsmartNewsからもってきたり、なりふり構わぬ資金調達とその金を広告宣伝費にどんどん投入、「お前それどう見てもバイアウトしか考えてないだろ」と感じるような地べたまでアクセル踏み込むようなスタイルが印象に残ります。

また、DeNAの競合GREEがSmartNewsに大規模出資をした話も流れるなど、完全なるホットゾーンにきておるわけですよ。この行き着く先というのは見込み客商売であり、ニュースを見る人=特定の記事に関心のある人をリスト化して、スマホでのターゲティング広告の具としてより高値で販売するだけの仕組みになるわけじゃないですか。

プライバシーフリークとしては、やはりターゲティング広告はいまでこそ無法地帯で何をしてもお咎めなしな状態だとは思うわけですけれども、はっきりいって二年前のソーシャルゲームにおけるコンプガチャ騒動と同じようにガイドラインが一文変われば「ニュースアプリの体裁をとった名簿屋商売」は足元から崩れ落ちることになりかねません。

まあ、上記ニュースアプリを提供している経営者はおおよそ状況を理解してやっているようなのでそれほど大きな問題にはならないかと思いますが、そろそろアプリと広告とプライバシーの関連についてはしっかりとした議論が必要になるんじゃないでしょうか。

mixiニュースの健闘を祈願いたします。