無縫地帯

「日本人であること」に甘えないほうがいい

記事で日本の出入国管理が厳しすぎて人権的に拙いというようなネタが書いてありましたので、海外へ足を向けることの多い私としては違和感しか持たず、つい脊髄反射してしまいました。すみません。

山本一郎です。日本人です。

さっき興味深いエントリーがY!Jニュース個人に上がっていたんですが。

日本人のあなたが外国人として逮捕される日。(にしゃんた 14/8/18)

どうもこのにしゃんた氏、一連の話に憤慨しておったようですが…よく分かりません。私は去年まで年に半分は極東ロシアや中央アジアを歴訪してきたわけなんですけれども、こんなのパスポート見せたり己の逗留資格をしっかり提示しなければ治安当局に拘束されるのは当たり前の話なんですよね。

これって人権なんてぜんぜん関係ないんですよ。

疑わしかったり指示に従わない人を入国させないのが出入国管理者の仕事なんで。万国共通。

日本の場合、なぜか人情の話になってしまうんですが…。いわゆる出入国管理法違反の事案が人種差別みたいなネタにされやすいんですけれども、ぶっちゃけ私も無精ひげを生やすとトルコ人などイスラミに間違われて日本のパスポートを見せても信用してもらえず別室に連れていかれたりとか、パスポートにロシアやルーマニア(ルーマニアは密入国者が経由することが多いとされる地域だ)のはんこがあっただけでイスラエルのイミグレで6時間とか待たされたりとか、普通にあるわけですよ。いちいち人権だとか言っても始まりません。

入国管理官から「このアメリカ入国はなんだ」とかESTA見て言われるけど、こっちとしては「仕事だってばよ」としか説明のしようがないことを「嘘だ!!」とかやられるわけでね。そういうときは「貴殿らも仕事だからしょうがないね」って言いながら、日本の大使館に連絡でもしてねってことでお札渡したりするところですけど。

「何の罪も犯してない」と本人は思っても、出入国管理というのは相手が疑わしいと思ったらそのような拘束をされたり、明らかに不必要だと思うような尋問をされるのは仕方のない世界なのであって、むしろ日本では当たり前の警戒がどういうわけか出入国管理や税関が悪いという話になったり、警察・警備が過剰って話になるわけでしてね。でも過剰でもなんでもなくて、他の国ではごく普通の光景であります。

慣れますと、もう年に二度三度捕まるのは前提で旅程を組むわけです。これはもう、しょうがないんだよね。不快であっても。国際線のトランジットも、フィンランド経由とか極力何もされなさそうなところを選ぶのがデフォルトであります。

むしろ、にしゃんた氏が書いたことを見て「ああ、日本のイミグレもちゃんと仕事してるんだな」という安堵しか感じなかったのでありました。

なお、にしゃんた氏が「日本の公務員、筆者の個人的な経験からだと、特に「入国管理局員」および「警察」に対して行っている「犯罪者予備軍扱いとしての外国人」という偏った視野の狭い教育を正し、国際感覚を伴った視野の広い教育を行う必要が必ずある」などと書いてますが、この報道のとおり「女性は署でも日本語の質問に対し無言を通した」のであれば、どこの国でも逮捕され拘留されます。これは国際標準で、アメリカだろうがロシアだろうが東欧でも逮捕ですわ。日本が問題じゃありません。

当たり前ですね。疑いがかかったときに尋問されて、黙秘したんだそうですから。逮捕でしょ、こんなの。

どうしても海外旅行をしない人や、日本内で議論されるような「国際的に標準の人権意識」しか知識を持っていない人だと、こういう憤りを感じやすいのでしょうが、出入国管理者や税関については空路だろうが港湾だろうが国境渡しだろうが従順にしておくのが本当に吉だと思いますよ。

なお、山本一郎は本名です。偽造ではありません、念のため。