無縫地帯

「Office 97」という愛に包まれたソフトウェアに感動した話

いまだに「Office97」を使っている金融機関があるかと思えば、JALの二段階認証がホップステップ漏洩みたいな状態になっていて涙を誘います。

山本一郎です。物持ちが良いのが身上です。

ところで、ITmediaの連載コラムに「萩原栄幸の情報セキュリティ相談室」というのがありまして、日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事でもあられる萩原栄幸さんが執筆されております。毎回興味深い話題が取り上げられ、いつも楽しく拝読しているわけですが、8月1日掲載の記事はいつも以上にかなり刺激的な内容でしたので、皆さんにもご紹介しておこうと思った次第です。

「Officeファイルが開けません」 XP以上に残念な金融機関の言い訳(ITmedia 14/8/1)

是非皆さんもリンク先の記事を直接ご覧いただければと思いますが、以下に同記事における白眉とも言える部分を引用しておきます。

ここまで読まれた方は、これを架空の話のように思われるかもしれない。筆者も夢であってほしいが、本当の話である。いまだOffice 95を使っているという金融機関は把握していないが、少なくとも今でもOffice 97を使っているところは存在する。守秘義務があるので個別の金融機関名は明かせない。恐らくこの記事を読まれた一部のシステム担当者が冷や汗をかいているのは間違いない。ITmedia
萩原さんの書かれるコラム記事は毎回架空の話のようなとんでも案件が満載なのですが、今回もかなり豪快な話になっていまして、文中には「Office 95を使っている金融機関もあるらしいから、心配するな」という名台詞まで登場し、読んでいて感動の嵐です。

ちなみにOffice 97は「1996年に発売された。アシスタント機能が加わったり、ユーザーインタフェースがコマンドバーに変更されたりしたもので、2002年2月にサポートが終了している」(ITmedia])ということで、つい先頃サポート終了で大きな話題となったWindows XPがリリースされた翌年には終わっているくらいに古い製品です。金融機関というところは一度手に入れたソフト資産は末永く大事に使って倹約しているということなのでしょう。当然ではありますが、これほど古いOffice製品だとセキュリティ的に穴だらけなわけでして、まさに「企業が倒産しかねないセキュリティの危険性を抱える」([http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1408/01/news038_2.html ITmedia)状態であります。しかし、それよりもソフト資産への投資を節約することの方が大事という経営判断でもあるのでしょう。これこそが、IT立国を目指す我が国には普段からよくある話ということなのかもしれません。

セキュリティの話といえば、Webサービスで不正アクセスが発生して、そのダメさ加減が指摘されたJALがセキュリティ強化施策を施したそうで、まことにおめでとうございます。

JALホームページにおける2段階認証の実施について(日本航空 14/7/31)

JALマイレージバンク(JMB)会員の方に安心してJALホームページのサービスをご利用いただくため、一部機能のご利用時に、生年月日による2段階認証を実施しております。日本航空
いやー。

今回は2段階認証を導入したということで、これでようやくにセキュリティに五月蠅いネット民からも歓迎の声が聞こえるかと思いきや、改めて散々な苦言がネットにあふれ出しておりました。

JALが自称2段階認証()で再びZAL穴と話題に(Togetterまとめ)

いつものように我らが高木浩光先生も大活躍しておりますので、興味のある方はこちらも是非リンク先をご覧いただければと思いますが、画面設計の時点ですでに破綻しており、画面を進めると「生年月日を元に計算された年齢が表示される」など、かなり残念な仕様となっていたようです。で、早速ITmediaが取材攻勢をしかけツッコミを入れた記事を出しておりました。

「JALマイレージバンク」に生年月日を使った2段階認証導入「これが最終形ではない」(ITmedia 14/8/4)

生年月日は他人でも比較的手に入れやすい情報で、パターンも限られていることから、「セキュリティ対策として不十分なのでは」という声も上がっている。JAL広報部は「そういった声は認識している。まずは一番早く取り組める対策として生年月日による2段階認証を導入したが、これが最終形ではない。引き続き、セキュリティ強化を順次、行っていく。まだ具体的に話せるものはないが、固まり次第発表する」と話している。ITmedia
JAL広報部からは「これが最終形ではない」という発言もあったようで、もはやSFロボットアニメか何かのようです。次は一体どんな進化を見せてくれるのか今から期待で胸がどきどきしてしまいそうですね。まあ、さすがにJALはOffice 97なんかは使っていないことでしょうが、より一層の精進をお願いしたいと思います。

どうであれ、ソフトウェアには耐用年数が今後はしっかり意識されるような仕組みや常識を作っていかないととんでもないことになりそうですね。

mixiのサービス開始が2004年であることを考えると、そろそろ年号を打ってもいい年頃ではないでしょうか。mixi2004とか。どうでもいいですかそうですか。