マンガ「ハイスコアガール」を巡ってスクエニ×SNKプレイモア著作権戦争勃発
スクウェアエニックスのコミック誌連載のマンガ「ハイスコアガール」に対しSNKプレイモアが権利を有するキャラクターを無断使用したとして、スクエニを刑事告訴からの警察家宅捜索のコンボが炸裂しました。
山本一郎です。残念な事態は原則として大好物です。
このところ、個人ユーザーがネット上で発表した作品がパクられた云々という著作権絡みの騒動はよく話題になりますが、まさかにプロ同士の仕事においても同じような揉め事が、それもかなり生々しい形で公になる事態となり大変驚いています。
人気漫画に他社のゲームキャラが…ドラクエの「スクエニ」を著作権侵害容疑で捜索大阪府警(MSN産経west 14/8/6)
コミック誌で連載されている漫画の作中で、別会社の人気ゲームのキャラクターを無断で使用していたとして、大阪府警生活経済課は5日、著作権法違反容疑で、ドラゴンクエストやファイナルファンタジー(FF)シリーズなど人気ゲームソフトの製作で知られる発行元の「スクウェア・エニックス」(東京都新宿区)の本社など関係先を家宅捜索した。MSN産経west素敵な話ですね。とろけるようです、脳みそが。
著作権法違反は親告罪でありますから当然ながら当事者による訴えが必要でありまして、今回の場合は実際にSNKプレイモアが刑事告訴に踏み切っています。
株式会社スクウェア・エニックス等に対する刑事告訴について(SNKプレイモア ニュースリリース PDF書類)
株式会社SNKプレイモア(以下、当社)は、株式会社スクウェア・エニックス及び同社出版部門の関係者を刑事告訴いたしましたので、皆様にお知らせいたします。気になるポイントは「販売の即時停止を再三申入れましたが、なんら誠意ある対応がなされませんでした」というところでしょうか。
株式会社スクウェア・エニックスは、当社の許諾を受けることなく、当社が著作権を有する多数のゲームプログラムのキャラクターを複製使用した漫画「ハイスコアガール(著者:押切蓮介氏)」を出版し、当社の著作権を侵害しました。当社は、重大な違法行為を厳重抗議すべく、株式会社スクウェア・エニックスに対し、「ハイスコアガール」の電子書籍、単行本、月刊誌その他の販売の即時停止を再三申入れましたが、なんら誠意ある対応がなされませんでした。SNKプレイモア
先に挙げた産経の記事によると、今回の著作権侵害発覚から告訴までの経緯は以下のとおりとなっています。
ハイスコアガールのアニメ化にあたって、関東地方の映像製作会社が昨年夏ごろ、SNK社にキャラクターや音楽の使用許諾について問い合わせたことがきっかけで、漫画に無断使用されていたことが発覚。SNK社が今年5月、大阪府警に告訴していた。MSN産経westつまりアニメ化の話が立ち上がらなければ今も無断でキャラクターが利用され続けていた可能性がある上に、一旦事態が発覚した後も1年近くにわたってスクエニ側はSNK側からの申立を無視してきたと解釈できる内容です。通常ではあまり考えられない事態です。一体何があったのでしょうか。常識的に考えれば、先方からの申立があった時点からまるまる1年何の手立てもしないままに放ったらかしの挙げ句に刑事告訴されるという流れはあまり洒落になりません。
少し気になってネット民の反応などを検索してみましたが、次のような意見がありました。
『ハイスコアガール』の件について、厳しめの対応になった要因のひとつと思われるのが、特定メーカーとのタイアップです。ヨソとは公式タイアップをしてるのに(つまり許諾済み)、うちとは何もないよね。どういうこと?というダブルスタンダード問題。 http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/introduction/highscoregirl/ … 森瀬 繚ハイスコアガールの公式ページには「『鬼武者Soul』×[ハイスコアガール]コラボ企画登場!!」というニュースが掲載されていまして、つまりカプコンとはしっかり権利関係を処理してタイアップしてたということのようでありまして、これはちょっと……。
ちなみに、当該マンガの巻末クレジットというのがやはりTwitter上に流れてまして、それを見るとSPECIAL THANKSとして様々なゲームメーカー名がリストされており、当然のように件のSNKの名前も含まれています。
許可を得ていなかったと報道されたハイスコアガールの巻末クレジット、こんな感じです。 pic.twitter.com/IKMtwu08xJ あれっくすで、そうこうするうちに、スクエニ側も公式見解を発表しましたが、こちらは警察から取り調べを受けたという事実を認めた以外は特にめぼしい情報も開示されておりません。まあ、状況が状況ですから仕方ないでしょう。
本日の一部報道について(スクウェア・エニックス 14/8/6)
当社は捜査に全面的に協力しておりますが、現在、警察による捜査が行われているため、本件に関する詳細の公表は控えさせていただきます。スクウェア・エニックスこの後、ITmediaの取材報道により一部のゲーム会社は当該マンガに関してキャラクター使用を許諾していた事実が明らかにされ、ネット民がTwitter等で指摘していた点がほぼそのままであったこともわかります。
「ハイスコアガール」問題、カプコン・ナムコ・セガはキャラクター使用を許諾済み(ITmedia 14/8/6)
カプコン、セガ、バンダイナムコゲームスの3社に取材したところ、各社とも同作品に対しキャラクターの使用を正式に許諾していたことを明らかにした。ITmediaさらに、スクエニは現在市場に出回っている当該マンガの単行本を自主回収し、電子書籍版についても販売停止の措置を講じます。
「ハイスコアガール」単行本を自主回収スク・エニ「著作権侵害の認識はない」連載は継続(ITmedia 14/8/6)
スクウェア・エニックス・ホールディングスの広報担当者は、「今回の事態は、SNKプレイモアと話をしていた中で起きた。著作権侵害という指摘について、事実という認識はないが、お騒がせしている状況なので自主回収を決めた」としている。このスクエニ側の発言から乱暴に類推すると、作品上で問題となっているキャラクター等が登場するシーンのみを修正して、改めて製品を出し直す形で対応するということなのでしょうか。今の状況からするとそれだけで済む話とも思えませんが、正直どう転ぶのかは良く分かりません。
(中略)
「月刊ビッグガンガン」での連載は継続する。アニメ化の予定にも「変更はない」としている。ITmedia
この騒動の裏には何やら大人の事情的なものがあるのではと感じなくもありませんが、いまのところ真相は藪の中。しかしながら既に刑事告訴で警察が動き出してしまっているので、このまま両社が意地の突っ張り合いを続ければ色々と事の次第が漏れ伝わってくるのでしょう。それにしても、この一件は権利商売の思惑が複雑に絡んだ結果生まれた軋轢でありましょうから、その騒ぎに巻き込まれてしまったマンガ作家さんと読者には非常に残念な事態でありますね。
このままでは落としどころがないので、着地しないまま最後まで殴り合うストロングスタイルで戦い続けて任天堂エンターブレイン戦争みたいな状態になってくれることを期待したいと思います。