次期iPhoneの噂で持ちきりのAppleに降ってわいたiOSバックドア疑惑は何なのか?
iPhone6の年内発売の噂で膨大な出荷台数が取り沙汰されるなかで、iPhone自体にバックドアがあったのだという検証結果が出回り、これはこれで物議を醸しております。
山本一郎です。さっき私のバックドアから老廃物が出ました。
ところで、いよいよAppleが新型iPhoneを年内に発表・発売する可能性を示唆する具体的な情報が巷に流れて来るようになりました。
アップル「iPhone 6」の年内発注台数は過去最高の7000万~8000万台(WSJ報道)(WirelessWire News 14/7/22)
Wall Steet Journal(WSJ)が米国時間21日付の記事で伝えたところによると、今年秋に発表が見込まれる新型iPhone(「iPhone 6」)の初期発注台数が過去最高の7000万~8000万台にのぼりそうだという。WirelessWire News「過去最高」と評される強気な発注台数については、今年からiPhoneの取り扱いをはじめたチャイナ・モバイルの存在がやはり大きいようですが、それに加えて随分前からリークされていた画面サイズ大型化の噂から現行モデルを買い控えた客層も見込んでの勝負に出るということではないでしょうか。
すでにライバルのSamsungもこうした状況に対して情報戦を開始したようで、しばらくはスマホ市場界隈がまた賑やかになりそうです。
Samsung、iPhone 6のネガキャンCMを早くも公開─「我々は2年前から」【VIDEO】(リンゲルブルーメン 14/7/22)
Samsung電子は7月21日、今秋発売される「iPhone 6」を貶す内容のCMを早くも公開しました。(中略)iPhoneユーザーが「iPhoneのディスプレイが大きくなるらしいよ」と、隣に座るGALAXY S5ユーザーの友人に話しかけると、友人は「まだ大きくなかったのか」と皮肉を込めて応対するという内容です。リンゲルブルーメンそうですか。
新型モデルの話題も盛り上がり幸先良さそうなAppleでありますが、実はここに来て暗雲が立ちこめそうな気配が出てきました。
iOSにユーザー監視の「隠し機能」?科学捜査の専門家が発表(ITmedia 14/7/22)
米AppleのiOSに、捜査当局などがユーザー監視に使うための「バックドア」が隠されているのが見つかったとして、科学捜査の専門家がハッカーカンファレンスや学術誌に論文を発表した。(中略)同氏はさらに、「iOSにはあってはならないサービスがあり、これはアップルがファームウェアの一部として意図的に付け加えたものだ。AppleにはiOS端末を使っている6億人あまりのユーザーに対して説明し、公表する義務がある」と強調している。ITmediaいやー、来ましたね。まあ、無いわけ無いよなとは思っていたんですが、疑いのレベルを超える内容になりかねず、さすがに騒ぎとなりました。
この話が事実だとすれば、iPhoneをはじめiPad等、iOSで動作する機器はセキュリティ的に大きな爆弾を抱えた製品ということになり、Appleとしても大きな打撃となることは必定。さすがにAppleはこの発表に対して直ぐに反論を出しております。
すべてのiPhoneにデータが抜き出される恐れ、米Apple反論も有識者が矛盾を指摘(マイナビニュース 14/7/22)
Apple側の反論は素早く、同ニュースが世界各地で広く報じられた21日にはすぐに声明を発表し、政府組織からの関与を否定している。(中略)声明では、このiOSの隠し機能がデバイス診断に用いるためのもので、決してプライバシーやセキュリティ侵害のためのものではないとしている。特に企業のIT部門や開発者、Appleが技術的問題などトラブルシューティング時に必要な情報を集めるための仕組みとして利用されることがあると説明する。マイナビニュースしかし、このAppleの反論では「隠し機能」そのものの存在は認められており、いささかスッキリしない点が含まれています。某MSじゃあるまいし、さすがに嘘は言えませんからな。当然ながら先の論文を発表した人物はすかさずその点を突いてきました。
iOSで指摘の「政府機関のためバックドア」、Appleが存在否定(ITmedia 14/7/23)
「iOSに本当にバックドアが存在することをAppleが認めたと解釈できる」との見方を示す。同社が診断目的と説明していることについては、「『診断データをAppleに送信する』が有効でも無効でも、端末が会社によって管理されてもいなくても、情報は送信され、バックアップ暗号化は迂回される。この仕組みを無効にできる方法はない」としたうえで、「Appleが本当のことを言っているとは信じがたい」と記した。ITmedia最初に論文を発表したJonathan Zdziarski氏という人物は「iOSのJailbreakにも関わってきた人物」(マイナビニュース)とのことですから、技術的な知見もあった上での発言であり単なる与太話で済ますというわけにはいかなそうです。
ところで、iOSと言えば、Appleはつい先頃IBMと大型の提携を発表したばかりです。
速報:AppleとIBMがハード、ソフトで全面提携―エンタープライズ分野に激震(TechCrunch 14/7/16)
AppleとIBMが企業分野で広範な提携、iOSアプリの共同開発など(ITpro 14/7/16)
アップルとIBMの“強者連合”は企業向けIT市場の大再編を引き起こすか(ダイヤモンド・オンライン 14/7/23)
米アップルと米IBMが、企業向けモバイルサービスで提携した。モバイル端末で確固たる強みを持つアップルと企業向けシステムを得意とするIBMが相互補完する形で、両社ならではの企業向けモバイル活用を促進するのが狙いだ。いわば“強者同士”の提携によって、今後、企業向けIT市場に大再編が巻き起こる可能性も出てきた。ダイヤモンド・オンラインやー、夢のある話ですね。千年戦争を終えた両社が38度線でがっちり握手、みたいなネタを思い浮かべてしまいそうです。
で、この両社の提携が業界に及ぼすであろう影響の大きさは計り知れないものがあるわけですが、一方で先に挙げたiOSのセキュリティ問題が事実であれば、AppleとIBMの提携そのものへのネガティブな影響力も破壊的なものとなり得ます。
新型iPhoneの発売、そしてIBMとの大型提携といった盤石の姿勢で今年後半へ向けて歩を進めようとしたAppleでしたが、今回のiOSバックドア問題はとてつもない蹉跌となるのでしょうか。気になるのは、先のSamsungのネガティブキャンペーンではないですが、Zdziarski氏の発言も何らかの思惑から導き出されたポジショントーク的なものがあるのではないかという可能性も完全否定はできません。
いずれにしても、ここしばらくはこの問題の成り行きを大いに注視したいと思います。