無縫地帯

スマホを巡るパワーゲームがいよいよ盛り上がってきたようです

マイクロソフト登場前のパソコン市場みたいな状態になっているスマホ界隈。TizenやFirefoxなど第三のOSも睨んでの陣取り合戦が盛り上がっていますが、日本勢が「その他大勢」になってる悲しさも…。

やまもといちろうです。眠いです。

来年の話をすると鬼が笑うと言いますが、産経新聞が来年の後半を見据えた話として以下のような報道をしています。もはや鬼爆笑の風情です。

NECと富士通来年後半に「タイゼン」搭載スマホ投入へ(産経新聞 2013/3/12)

富士通とNECは平成26年後半にも、基本ソフト(OS)に「TIZEN(タイゼン)」を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)を市場投入することが11日分かった。
サンケイビズでも同じタイミングで関連記事が掲載されています。

勢力図激変!?スマホOS第3極、2強崩しへ虎視眈々(SankeiBiz 2013/3/12)

こちらは、先日スペインで開催された携帯電話の国際展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」での取材を元に書かれていますが、冒頭でTizenが「スマホ用OS市場の勢力図を塗り替える可能性も出てきた」と煽り、ドコモ執行役員もTizenに対して「世界シェア20%は取らないとだめだ」と檄を飛ばすなど、かなりセンセーショナルです。その中で、NECと富士通のTizenに対するスタンスは以下のように表現されています。

MWCでは投入時期を表明しなかったNECと富士通も、来年後半には製品化する計画だ。NECは主力ブランドの「メディアス」に加える。富士通は「(タイゼンに使われる)HTML5の普及次第」としながらも、主力機種での展開の可能性を示唆する。
両社共にTizen製品を、スマホ事業の中でそれなりに大きな比重を占めるものとして考えているというニュアンスに読めます。もちろん、あくまでもサンケイビズ記者視点での観測でしかないので、そこは十分に割り引いておく必要もありますが……。

既にAndroidに関しては、グローバル市場における端末メーカー間の争いでかなり不利な状況にあるNECや富士通。両社はまた、これまでPC市場で大きく稼いできましたが、そのPC市場も縮小傾向です。当然、ビジネスチャンスを他の市場に求めることになり、その一つがTizenということになるのでしょう。

見逃せないHuaweiの隆盛、崖っぷちに追い詰められる日本の携帯電話メーカーに生存戦略はあるのか(BUZZAP! 2012/9/30)
パソコンの国内出荷額、過去最低に(スラッシュドット・ジャパン 2013/3/7)

しかし、Androidですでに先行されているのと同じように、Tizenでも韓国や中国のメーカーは先行しています。その中で、「いま先頭集団に入る余裕はなくても、2位グループで準備を進めている」(NEC坂口佳史共通基盤開発本部長、サンケイビズ記事から)というような姿勢で大丈夫なのか、やや不安を覚えなくもありません。っていうか、のんびり携帯端末事業やってる余裕あるんですかね、NECに。

別のMWC取材記事において、興味深い言及がありました。

第3のモバイルOS狙うFirefox OSとTizen、何が違う?(ITpro 2013/3/6)

Tizen Mobileはサムスン電子が中心となって開発を進めていることから、アップルやグーグルによる独占体制と同じ事態が再び繰り返されることを懸念
これは、Tizenと対抗するFirefox OSを採用したKDDI側の意見ですが、やはりこういう可能性も完全に否定することはできないでしょう。もっとも、じゃぁ、Firefox OSはどうなんだというのもありますが、それはまた別の話ということで。

いずれにしても、ドコモ、NEC、富士通といった、いわば日本の通信事業における巨人達がそれぞれの思惑で、スマホを巡るさらなる熱いパワーゲームへ臨み、ネクストバッターズサークルで素振りを開始したという情景が目に浮かびます。いやぁ、盛り上がりますね。

加熱するプラットフォーム争い、と言えば聴こえはいいんですが、そのソフトウェア分野で日本発のOSとかねえのかよと思うと一抹の悲しさは感じるんですけどね。仕方ないね。