無縫地帯

キッズケータイ市場の謎

ドコモとALSOKが提供していたキッズケータイが、ひっそりとサービスの新規受付を終了する一方、日本市場独自の見守り携帯その他が例の抱き合わせ商法の具となり成長しているのは気のせいでしょうか。

山本一郎です。暑くて溶けそうなんですが、なぜ脂肪が溶けるよりも先に精神が蕩けるのでしょうか。

ところで、ドコモが独自サービス終了の発表を地味に行っておりました。

「ALSOK子ども向けかけつけサービス」新規受付終了のお知らせ(ドコモからのお知らせ 14/7/8)

綜合警備保障株式会社(以下、ALSOK)と株式会社NTTドコモでキッズケータイ「HW-01D」「HW-02C」向けに提供しております、「ALSOK子ども向けかけつけサービス」の新規受付を、2014年7月31日(木曜)に終了いたします。NTTドコモ
同様の告知は実際の警備業務を担当する綜合警備保障(ALSOK)のサイトにもありましたが内容は基本的に同じです。

「ALSOK 子ども向け かけつけサービス」の新規受付終了のお知らせ

気になったのは、いずれの告知においてもなぜ同サービスが終了するのかその理由が記されていない点です。どこかにそういう情報がないかと軽く検索してみたのですが、今のところめぼしい情報は見当たりません。というか、このサービスを使ってみたというような話も広報記事以外はほとんどなく、明らかに純粋な個人ユーザーによる発信情報と言えばサービスを申し込もうとしたらまだ受付ていなかったという苦情のクチコミ情報くらいでした。

受付まだ:ALSOC かけつけサービス(価格.com クチコミ掲示板 12/9/25)

「ALSOC子ども向けかけつけサービス」
ドコモショップで申込が必要とのことで
今日、わざわざ出向いたのに、まだ受付できませんとのこと。価格.com
10月4日からサービス提供ということで、8月末にはメディアを通じてそれなりのPRも行っていたのに、いざユーザーが申し込もうと9月25日に訪れたらまだ受付開始日も未定の状態だったということのようで、このサービスに対するドコモの微妙な力の入り具合がなんとなく窺えるような気がしなくもありません。

で、じゃあキッズケータイそのものの売上はどうなのかと調べてみたところ、非常にタイムリーなPR記事がありました。

『キッズケータイ HW-01D』が累計販売台数100万台を突破(時事ドットコム)

世界有数のICTソリューション・プロバイダーである華為技術日本株式会社(以下、ファーウェイ・ジャパン)が開発し、2012年9月より株式会社NTTドコモから販売されている『キッズケータイ HW-01D』が、2014年5月下旬に累計販売台数100万台を突破しました。時事ドットコム
そうですか。

なるほど、それなりには売れているようですね。ただし、この記事はPR TIMESによるPR記事(最近はこういうのもネイティブ記事と呼んだりするのでしょうか?)ですので、そのまま鵜呑みにするのはナイーブ過ぎるというものでしょう。こちらの記事で興味深いのは以下の部分でしょうか。

日本特有のセグメントである未就学児~小学校低学年を対象にした『キッズケータイ HW-01D』は、日本市場だけのために開発されました製品時事ドットコム
この発言の裏を読むと、日本以外でこういう子供専用のケータイみたいな製品はあまり商売にならないということのようでして、まあ、ガチで子供の誘拐を心配しなければならないような状況であれば、この程度の中途半端なものではほとんど役に立たないという話でもあります。逆に言えば、これを持てば安心かもしれないと思える日本という国は誠に平和であるという証明にもなり、これはこれで決して悪い話ではありません。

一方で、キッズケータイの出荷数が伸びる裏にはこういう事情もあるようです。

2015年、「クーリングオフ」の制定でケータイビジネスが一変するかもしれない(Business Media 誠 14/5/27)

フィーチャーフォンやAndroidと比較して、代理店の利益が少ないというiPhoneが人気の昨今、オプション盛りのほか、フォトフレームやキッズケータイの抱き合わせ販売で利益を稼ぐ手口が横行しているという。筆者もつい先日、店舗スタッフの「通話が多いお客様のために“裏技”があるんですよ」という、言葉巧みなキッズケータイの勧誘を体験したばかりだ。Business Media 誠
なんと、キッズケータイはケータイ業界で好ましくない商法の典型とされて問題となっている抱き合わせ販売のネタだったりするのですね。こうなってくると、先に挙げたキッズケータイの累計販売台数100万台突破という数字も違った印象を覚えてしまいます。

いくら出荷数が大きくても、本気でキッズケータイを使っているユーザー数が少なければ、さらにオプションでALSOK子ども向けかけつけサービスを利用しようと考える人は相当限定的になるという推測もでき、ほとんど加入者がいずに商売として回っていなかったのがサービス終了へと繋がった可能性はあるかもしれません。

今後、ドコモはALSOK子ども向けかけつけサービスに代わる新しいサービスを改めて他の警備会社等と組んで立ち上げることもあるのでしょうか。富裕層向けサービス業が注目される昨今においては、こういうビジネスもマーケティング次第でかなり需要はありそうですが、ドコモというブランドを前面にだして取り組むにはやや不向きな気がしなくもありませんし、富裕層向けでセキュリティを謳うのであればさすがにHuawei製端末は避けたいところではあります。

そうなりますと、必然的にALSOK体操のマーケティング的位置づけも変わってくるのかなと感じる次第でありますが、私も安心戦隊ALSOK入りをしてこの夏こそ体脂肪を減らしてまいりたいと願っております。