無縫地帯

どうやら総務省が本気でケータイ事業への介入を行うようです

先日、総務省が問題続発中の携帯電話販売において店頭販売でもクーリングオフ導入という画期的な方針を検討しているとのことで、ぜひ頑張っていただきたいと思い記事にしてみました。

山本一郎です。私の肛門も介入されそうです。

ところで、総務省が主宰するワーキンググループにおいて携帯電話等の通信サービス事業にまつわる中間取りまとめ案が発表され、改めて話題となっております。

SIMロック解除を提言、クーリングオフ導入も=総務省WG案(ロイター 14/6/30)

総務省のICTサービス安心・安全研究会は30日、消費者保護ルールの見直し・充実に関するワーキンググループ(WG)を開き、当初契約した携帯電話会社以外で端末を使えないように制限をかける「SIMロック」の解除などを盛り込んだ中間とりまとめ案を公表した。今後、情報通信審議会でも議論、年内をめどに報告書を取りまとめる。ロイター
確かにいままで野放図すぎましたからね。

今回のとりまとめ案全てがそのまま実際の法令等に反映されるのかどうかについては今後の審議会の成り行きを見なければなんとも言えませんが、総務省ではこれまでにもSIMロック解除などについて携帯電話会社へ自主的な取り組みを求めてきたという経緯があることを考えると、これまでよりも強い規制などが敷かれる可能性は低くないと思われます。

まあ、SIMロック問題に関して見れば、ドコモは総務省の意向にほぼ沿った施策を実施しており、問題なのはKDDIとソフトバンクだけなんですけどね。

SIMロック解除、来年度にも一部端末で義務化(SankeiBiz 14/6/30)

NTTドコモは米アップルのiPhone(アイフォーン)を除く機種で解除に応じているが、ソフトバンクは一部にとどまり、KDDI(au)は応じていない。SankeiBiz
iPhoneに関しては、ご存じの方も多いでしょうがAppleからSIMロックフリーモデルが国内で普通に販売されている状況なので、キャリア独自の付加サービスをはじめとした価格面等でのメリットを敢えて諦めるというのであれば普通に入手できます。

で、今後もしSIMロック解除が法的に義務付けられた場合、エンドユーザー的にはどういう影響があり得るのかという話もポツポツとネット上では話題になっているわけですが、ネガティブな面としては以下などが考えられます。

2015年春にもSIMロック解除!?ユーザーのメリットは?(iPhone Mania 14/6/28)

現在、各社が24回の割賦払いを「月々割」などの値引きで相殺し、ユーザーを囲い込むことで実質的販売価格を下げていますが、「SIMロック」解除が本格化し、ユーザーがいつでも他社に乗り換えが可能となれば、携帯キャリアは端末の販売価格を上げて利益を確保する方向に動く可能性もあります。また、多額のキャッシュバックを積んでのMNP合戦も、コストに見合うメリットがなくなるでしょう。iPhone Mania
ユーザーの流動性が高まれば、キャリアとしても利益確保のために今と同じビジネスモデルを継続するのは無理があるだろうということですね。極論としては、SIMロックが法律で事実上禁止されてしまえばキャリアがわざわざ端末を販売するメリットそのものが無くなり、また、至れり尽くせりなキャリアによる端末のアフターケアサービス提供も不可能になるでしょう。その結果、端末はユーザーが量販店なりメーカー直販なりで勝手に購入し、SIMだけをキャリアから購入するという形に変わっていくのかもしれませんし、その場合には端末とキャリアサービスの相性の良し悪しなども、ユーザーが自己責任で対応するしかなくなる可能性はあります。SIMロック解除については、この辺りのバランスを総務省がどう見越しているかで随分と流れが変わるような気がします。

一方で、クーリングオフ制度については、ユーザー保護の面からも事業者の運営に無理がない妥当な条件の下で実施されるのが望ましいと思います。

スマホ契約にクーリングオフ導入へ総務省、来年度にも(朝日新聞 14/6/30)

総務省は30日、スマートフォンや光ファイバー回線などを契約する際、一定期間内なら無条件で解約できる「クーリングオフ」を来年度にもとり入れる方針を明らかにした。料金の仕組みが複雑だったり通信速度が広告とちがったりして苦情が増えており、消費者保護が必要と判断した。朝日新聞
仰るとおりです。言うべきことは当然この辺になってきますよね。

クーリングオフにまつわる報道では、今回の中間取りまとめ案が発表される以前から日経がお得意のリーク気味な形で興味深い記事を掲載しておりました。

スマホにクーリングオフ悪弊排除に本気の総務省(日本経済新聞 14/6/19)

携帯電話回線をめぐるトラブルの多さに業を煮やした総務省が、クーリングオフ規定の新設を打ち出した。早ければ2015年の通常国会で法改正される可能性がある。日本経済新聞
特に注目したいのは、特商法におけるクーリングオフ規定が通常は訪問販売や電話勧誘、通信販売などの販売形態のみを対象としているのに対して、今回の携帯電話などにまつわる事案では一般店舗における販売についてもクーリングオフ適用を検討するという流れになっている点であります。

踏み込んだ内容にしたのは、前述の消費生活センターへの苦情・相談のうち、8割強が携帯ショップや家電量販店など店舗での購入だったためだ。スマホなどの現物を見たり店員の説明を聞いたりできる環境でもトラブルが相次ぐことから、店舗購入も含めなければ骨抜きになると判断したようだ。日本経済新聞
ユーザーの無知に付け込んで、クソのようなオプションを巻き付けて月額料金を割高に販売する業者は早々に一掃されて欲しいわけですよ。

そうすると、使われもしない某ビデオや某eeTVや某マートパスに貴重な可処分所得を奪われ、そういうところにコンテンツを提供していた暴力団紛いの不思議会社に利益がいって株価が飛ぶようなこともなくなるわけです。

そのような濡れ手に粟系の上積みの利益がなくなりかねないこともあり、キャリアをはじめとした事業者側はこの動きに強い反対を表明しているようですが、総務省側も相当な覚悟で動いているように見えます。日経の記事は最後を以下のように締めくくっていますが、携帯電話が老若男女問わず日常生活に欠かせないものとして普及した現代においては当然の成り行きではないかと思われます。

契約者が専門知識を持たない子供や高齢者まで広がった今、通信会社が「トラブルの原因は契約内容を理解しない消費者にある」と責任を押しつけるのはもはや無理がある。消費者保護に対する及び腰の姿勢を見透かされ、総務省にクーリングオフを突きつけられてから声を上げても消費者が味方するはずもない。端末や回線速度、料金で差異化が難しくなった今だからこそ、先を争って実効性のある消費者保護策を打ち出し信頼される業界へと転身すべきだろう。本気の総務省と通信会社のつばぜり合いは大いに結構だが、骨抜きになった消費者保護策でお茶を濁すことにならないよう願いたい。日本経済新聞
このあたりは、読者が専門知識を持たない個人投資家や財務部門まで広がった今、日経新聞が「問題の原因投資は記事の信憑性を吟味しない読者にある」と飛ばし記事を押しつけることのないように祈りたいところですが、今回は日経は良く頑張っております。そのまま是非精励していただければ幸いです。