無縫地帯

微妙アプリ「鬼からの電話」開発会社が、酷評したユーザーのブログを削除させようとする鬼のような話

言うことを聞かない子供のいる親向けアプリ「鬼からの電話」を運営するメディアアクティブ社が、そのアプリの性質について「児童虐待」と表現したブログに対して弁護士を通し削除依頼をするという騒ぎがありました。

やまもと一郎です。苗字をひらがなにすると途端に政治家らしく見える不思議に気づきました。それが何だと言われても何もありませんが。

ところで、とあるスマホアプリの感想文を巡ってなにやら弁護士までが登場して揉めているという話が一部ネット民の間で話題になっておりましたので、早速確認してみました。

「鬼から電話」という児童虐待アプリについて(ぼくのしこうろぐ13/10/28)
「鬼から電話」ってアプリを批判してたら、「弁護士からメール」がきたでござる(ぼくのしこうろぐ14/6/18)
「鬼から電話」を批判してたら「弁護士からメール」がきたでござるパート2(ぼくのしこうろぐ14/6/29)
「鬼から電話」のメディアアクティブ社からSLAPP(威圧訴訟)をちらつかされてる事件のまとめ(ぼくのしこうろぐ14/6/30)

いやー、羨ましいですね。私のところには最近そのような内容証明がとんとやってこなくなりましたので、楽しそうでいいなあという気持ちでいっぱいです。

事の経緯としては、個人的にこういうアプリは好きじゃないという感想文をブログに書いたら、その記事を書いてから半年以上も経った頃にアプリ開発者の雇った弁護士から苦情が来たので、苦情に該当する部分を削除したら、今度はプロバイダを通じて記事そのものの削除を申し出てきたという話となっています。

たかが個人ブログの感想文に対して弁護士を使って記事削除を申し出るというのも大人げない行為だとは思うのですが、なにがしかの具体的な法的侵害があるのであれば問題ではあります。記事削除を申請してきた先方の弁護士による理由は以下のとおりです。

当該記事は、タイトルに「「鬼から電話」という児童虐待アプリについて」とされている。
「児童虐待アプリ」という記述は、「児童虐待」という刑法上の犯罪行為を助長しているアプリケーションサービスであるとの事実を適示するものである。
このようなブログ記事が広まれば、「鬼から電話」という当社サービスのイメージが毀損されることは当然として、そのようなサービスを提供している当社自身の社会的評価も低下させるものであり、当社の名誉を著しく毀損するものである。
よって、本件記事は、当社の法人としての人格権・営業権を侵害するものであることは明らかである。ぼくのしこうろぐ
どうやら名誉毀損に該当するという形で訴えたようですね。なんと言いますか、当該ブログ記事も「こんなアプリを使ってしつけをするのは児童虐待も当然の行為だ」というニュアンスの言い回しであれば、相手も付け入ることができずさらりとかわせたのでしょうが、アプリそのものを「児童虐待アプリ」と称してしまっているので、ガッツリとアプリ開発者に喧嘩を売ってしまっている状態であります。ただ、子育てのあり方を考えた上でそのような意見もあるのだ、という表明をすること自体が「当社の法人としての人格権・営業権を侵害する」とまではとても言えないでしょう。

放っておけばよいのに、これこそ寝た子を起こす騒ぎなんじゃないのと思うわけであります。

普通であればこんな個人ブログの与太に対してわざわざ弁護士を起用してまでして強権発動する必要も無いように思えるのですが、こちらのアプリメーカーはその辺りについてマメにネット検索されているようですね。なんと、あのイケダハ師までがアプリの感想文を書いたら苦情メールをもらったそうですから、そういう活動に相当熱心な企業ということでしょう。

そういえばうちも来たなぁ。開発企業から「記事を拝見させていただき、正直がっかりしております」とメールが。「鬼から電話」を批判してたら「弁護士からメール」がきたでござるパート3 - ぼくのしこうろぐ http://bit.ly/1qiolhS イケダハヤト
まあイケダハ師に苦情入れるぐらいの話はどんどんやればいいんじゃないかと思いますが。東京で消耗したくないと思ったら高知で消滅危機みたいな感じですし。

アプリメーカーについて言えば、仕事に向ける熱心さのベクトルが何か間違っているような気がしなくもありませんが、その辺りは企業ごとのポリシーがあるでしょうから外部の人間がとやかく言う筋合いではありません。

さて、先に挙げたブログ管理人の方は自ら記事を削除することを拒否されたようですから、後はブログサービスを提供するはてなに判断が求められることになります。はたしてどちらの言い分を妥当と判断するのか、今後のはてな社の動向には大いに注目したいところであります。

ところで、「鬼から電話」アプリを使って子供をしつけるような行為が児童虐待に当たるのかどうかについては、社会心理学者の碓井さんが書かれた以下の記事などが参考になりそうです。

「鬼から電話」の効果と使い方:叱り方の心理学(ヤフーニュース個人 碓井真史 13/4/15)

きちんと叱れる親が、ちょっとユーモラスに「怖い物語」を使うのは良いですが、叱れない親が、「鬼から電話」や、恐怖を使ったしつけを試みるのは、危険があると思います。頼りすぎ、使いすぎてしまう恐れがあるからです。(中略)子育てに大切なことは、「あの手この手」です。どうすれば、お片付けをするのか、あの手この手を考えましょう。様々な工夫、ほめることや、叱り方も含めて、あの手この手を使いながら、我が子とのつきあい方を学びましょう。そうして、子どもと親と、一緒に成長してして行けたらと思います。ヤフーニュース個人 碓井真史
ちなみに、我が山本家の長男次男はこの「鬼から電話」にお世話になった時期があります。最初のうちは効果あったんですけどね。泣いて言うことを聞く時期がありました。ところが、そのうち呼び出し音がなるだけで「切って!切って!」と騒ぐだけで、逆にちっとも言うことを聞かなくなります。さらには「こんにちは、あかおにでーすまた言うこと聞かないんですか」などと鬼の台詞を真似して揶揄して煽る言動が目立ち始め、最後には「鬼さんは他のことをなぜ言わないの?」というなぜなにモードに入ってしまって面倒臭くなりました。いまでは「そろそろ赤鬼さんの時間だね」と兄弟で審議するようにまでなってしまいまして、まことに残念なことであります。

子供の成長段階に応じていろんなアクションもあり得るので、この手のアプリも慣れ過ぎない程度に使うぐらいなら何の問題もないんじゃないかと思うんですけどね。

最近では、効果抜群という噂でもちきりだった「ねないこだれだ」の神通力も数週間で消え失せ、この手の言うこと聞かせる系の「あの手この手」がどんどん封じられてしまっている現状に恐怖しています。

まあ、このアプリを提供するメディアアクティブ社のホームページにも「メディア(Media)の上でアクティブ(Active)に行動するという意味を込め名付けさせていただきました」と前のめりの発言が書いてあり、業務内容がいまどきSEO対策とかが主力のようなので、まあ頑張れよとしか思わないわけですが。

どうせなら訴訟合戦とか発生してアプリ界隈を巻き込んだ大戦争に発展し、多くのヒーローが参戦して力尽き斃れ屍を晒す中で光の軍勢と闇の軍勢が一大決戦をやる戦場の真ん中にたまたま通りかかったはてな社が巻き込まれて両軍の白兵戦で揉みくちゃになって、ついでにmixiごと壊滅に追い込まれるとかそういう鬼のような展開を希望したいところであります。

メディアアクティブ社からのSLAPP訴訟を、心よりお待ち申し上げております。